改訂新版 世界大百科事典 「キョウチクトウ」の意味・わかりやすい解説
キョウチクトウ (夾竹桃)
oleander
Nerium indicum Mill.
キョウチクトウ科の常緑低木で,ときに亜高木状となる。インド原産で,熱帯域や日本で庭木として観賞に用いる。葉は厚い革質で,3枚が輪生し,長楕円形ないし長紡錘形である。花は日本では夏に咲き,枝の先端に群がってつき,桃色ないし白色で,芳香がある。萼は,5深裂し,花冠は5裂してよじれ,糸状の付属物をもっている。属名のNeriumは,ギリシア語のnēros(湿った)の意からきたもので,川辺に野生するところからきたものと思われる。種名のindicumは,インド原産であることによる。別種にセイヨウキョウチクトウN.oleander L.がある。これは,地中海方面に産し,花冠の付属物が糸状にならず,鋸歯状となり,芳香がないので区別されるが,種子から多数の個体を育てると,区別し難い中間型を多く出現するから,キョウチクトウとは別種とするよりも変種と考えた方が合理的である。
両種ともに多数の園芸品種があり,花色は白,桃色,黄色などさまざまで,また花弁数の多い八重咲きもある。日本の気候に順応し,全国的に栽培が可能で,悪い都市環境によく育つから,防音,防じん用としてもよく用いられる。樹皮や根にはネリアンチンneriantin等の強心作用を有する配糖体を含み,薬用にされるが,また毒物でもある。繁殖は挿木で,20℃以上の時期を選べばよく,また,水中にさしておいても発根する。乾燥に耐えることから,栽培が増加している。移植の適期も20℃以上の高温期である。
執筆者:立花 吉茂
キョウチクトウ科Apocynaceae
双子葉植物で,130属約1500種を有する。木本または草本でつる性のものや多肉のものもあり,熱帯を中心に一部は温帯に分布する。代表的植物はキョウチクトウ。ほとんどのものが乳液を分泌する。葉は単葉,対生で,3枚輪生または互生,鋸歯はなく,通常密な横の平行側脈がある。花序は散房状,円錐状または単生。花は両生,通常4~5数性。花冠は通常漏斗状,高坏(たかつき)状で,内部はしばしば有毛,花冠裂片は片巻きまたはまれにすり合せ状。萼片は5枚で深裂し,しばしば基部に腺を有する。果実は多くは2個の袋果,液果,蒴果(さくか)。この科は200種類以上が知られているが,アルカロイド類を含有していることが多く,そのため有毒植物や薬用植物として著名な植物が多い(インドジャボク,ストロファンツス,キョウチクトウ)。また花がきれいなものも多く,暖温地域の重要な花木がある(キョウチクトウ,アラマンダ,プルメリア,ニチニチソウ,アデニウム)。また,Alstonia属の軽軟材として有名なプライ,果樹として重要なカリッサもこの科の植物である。近縁の科はガガイモ科。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報