三弦(読み)サンゲン

デジタル大辞泉 「三弦」の意味・読み・例文・類語

さん‐げん【三弦/三×絃】

三味線の別名。地歌箏曲そうきょくでは正称とされる。
中国の弦楽器外形は日本の三味線に似るが胴の両面には蛇の皮を張り、人差し指の指頭または義甲で弾く。琉球に伝来して三線さんしんとなり、さらに日本本土に渡って三味線となった。弦子。三弦子
雅楽で使う3種の弦楽器。琵琶そう和琴わごん

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精選版 日本国語大辞典 「三弦」の意味・読み・例文・類語

さん‐げん【三弦・三絃】

  1. 〘 名詞 〙
  2. さんげんす(三弦子)元史‐礼楽志五〕
  3. さみせん(三味線)
    1. [初出の実例]「又肌寒き折から、月にうかれて三弦(サンケン)をしらべ」(出典評判記色道大鏡(1678)三)
  4. 雅楽に用いる和琴(わごん)・琵琶(びわ)・箏(そう)の三種の弦楽器の総称
    1. [初出の実例]「三絃は和琴、琵琶、箏をいふ」(出典:小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉二)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「三弦」の意味・わかりやすい解説

三弦
さんげん

中国、日本のリュート型撥弦(はつげん)楽器。三絃とも書く。中国の三弦は弦子ともいい、全長約90~120センチメートルで、丸みを帯びた胴と長い棹(さお)をもつ。3本の弦は絹製。外形は日本の三味線(しゃみせん)に近いが、胴の両面には蛇の皮を張り、人差し指の指頭、あるいは指先につけた義甲で演奏する。調弦法にはいろいろあるが、下から5度、4度(三味線の二上り)、または4度、5度(三味線の本調子)にとることが多い。音色は三味線より太く、重い。この三弦が日本に伝来し、沖縄の三線(さんしん)や日本本土の三味線の祖となった。日本では、通常三味線の別称として用いられるが、ときには雅楽で用いる3種の弦鳴楽器(和琴(わごん)、楽箏(がくそう)、楽琵琶(がくびわ))の総称として使用されることもある。なお、同様な命名として興味深いのは、イランの古典音楽で用いられるセタールというリュート型撥弦楽器である。これは、ペルシア語で「三弦」を意味する。現在はドローン弦が付加されて4弦になっているが、主要弦は3本であり、機能上、今日もなお三弦の性格を保っている。

[卜田隆嗣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三弦」の意味・わかりやすい解説

三弦
さんげん
san-xian

中国,日本の弦楽器名。古くは三絃とも書く。日本では一般に三味線というが,地歌,箏曲では (演奏会プログラムなど) 三弦という場合が多い。中国では元末 (14世紀中頃) に俗楽器として現れた。イスラム系の楽器 (トルコ系のクーブーズ,中国名火不思かイランのセタール) と中国固有の奚琴 (けいきん) ,阮咸 (げんかん) の類の融合したもの。戯劇,俗曲などに広く用いられ,胡琴 (胡弓) ,琵琶,箏とともに中国の代表的俗楽器となって今日に及んだ。北方のは大きく長く (110cm) ,南方のは小さく短い (90cm) 。絃子,南絃子などともいう。胴に蛇皮 (じやび) を張るので,日本人は蛇皮線と呼ぶ。沖縄の蛇皮線は明代に中国から渡った。人差指か,爪 (義甲) で弾く。平調 (ファ-ソ- ) ,月調 (ソ- ,日本の二上り ) ,反調 (レ-ソ- ,日本の本調子 ) などに調弦する。

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改訂新版 世界大百科事典 「三弦」の意味・わかりやすい解説

三弦 (さんげん)
sān xián

中国のリュート属撥弦楽器。弦子ともいう。起源に関しては諸説があるが,確定した説はない。名称が明代の文献に見られ,16世紀以後に誕生した。構造は,裏表両面に蛇皮を張った木の胴に長い棹をさし込み3本の弦を張る。棹にフレットはない。音高は固定してはおらず,一般に最低音は〈れ〉から〈そ〉の間で,最高音は〈そ〉から〈ソ〉である。調弦は,4度,5度の音程に基づいて一般に次の3種が行われている。すなわち(1)硬中弦 ドソド(オクターブ上のド),ソレソ,レラレなど日本の三味線でいう二上がり。(2)軟中弦 ソドソ,ラレラ等,日本の三味線の本調子。(3)正調定弦 ソラミである,形の大きな三弦を大三弦または書弦といい,北方各地の大鼓という語り物音楽や,民間器楽合奏で用いられている。これに対し小三弦,別名曲弦は形も小さく,南方の語り物音楽である弾詞や,京劇崑曲などの戯曲音楽,そして江南糸竹などの民間器楽合奏に使われる。類似の楽器は東アジア各地にあり,また三弦は日本に伝わって三味線の祖となった。三味線を三弦(絃)ともいう。
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百科事典マイペディア 「三弦」の意味・わかりやすい解説

三弦【さんげん】

中国の長い棹をもつリュート属撥弦楽器。中国語ではサンシエン。3本の弦。大小二つのタイプがある。小三弦(シヤオサンシエン)の方が古く,19世紀半ばに改造されて大三弦(ダーサンシエン)が生まれたとされる。大三弦は右手親指と人差指にはめた義爪で弾き,北方の語り物に,小三弦は生爪で弾くのが基本で,南方の語り物や劇音楽の伴奏,合奏に用いる。沖縄の三線(さんしん)や日本本土の三味線と同系。三弦と三線は共鳴胴に蛇皮(じゃび)を張るので蛇皮線とも呼ぶ。
→関連項目江南糸竹セタール弾詞

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世界大百科事典(旧版)内の三弦の言及

【三味線】より

…日本の弦楽器(イラスト)。〈さみせん〉とも発音し,三絃,三弦と書かれることが多い。江戸時代に発達した楽器で,今日でも各方面で使われている。…

【朝鮮音楽】より

…感恩寺址から出土した資料の多くは,三国時代の様相とは明らかに異なっていることを物語っている。新羅の楽器として三竹(大笒(たいきん),中笒,小笒)と三弦(伽倻琴,コムンゴ,琵琶),拍板,大鼓がある。郷歌や踊りも栄え,今日なお伝えられている宮廷仮面舞踊の〈処容舞〉もこの時代におこった。…

※「三弦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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