日本の婚姻には,媒介者としての仲人が強く関与しているが,その社会的意味は一様ではない。各地の民俗によると,同一村内での婿入婚のように,配偶者を自主的に決める場合は,当事者の合意が成立した以後の儀礼に関与することが多い。嫁入婚,とくに遠方から嫁をもらう場合は,当事者同士を媒介する段階から仲人を必要とし,仲人は非常に重要なものとなっていた。媒介にあたって仲人は,個人の資質よりは家と家との問題として考えることが多かった。このような配偶者の決定の段階にはじまる仲人が,その後の婚姻儀礼の全過程に関与する場合もあったが,ハシワタシなどと呼ばれる下ごしらえの段階を行うものと,以後の諸儀礼に関与するものとの二段構えになることもあった。一般に,下ごしらえの役には社会的地位が問題にされないのに対し,婚姻諸儀礼に参加する仲人には種々考慮が払われた。一般に新夫婦があやかるようにと,円満な夫婦がのぞまれるが,地域によっては別に本家の者,親分,宿親(やどおや),村の有力者,最近では職場の上司などが依頼される。仲人は単なる媒介者でなく,正当な婚姻として地域や親族,その他当事者の属する諸集団において承認を得るための,家の代表者として,また証人として,さらに新夫婦の指導,後見としての役割が期待されているのであり,そのため仲人には,当該社会の規範によってふさわしいとされる社会的地位や経済力などが要求されたと考えられる。新夫婦と仲人の関係は,一生続く場合もあり,仲人親(なこうどおや)として親子の関係(親子成り)を結び,親の葬式への参加,出産への祝儀など種々の義務づけがあり,さらに仲人は生まれた子の名付親や取上親として次の世代にまで関与することもあった。かつての村で仲人が必要とされたのは,比較的上層部の家が配偶者にふさわしい同格の家を広く他村に求めたことによると考えられる。その点,仲人は婚姻のネットワークを広げる機能をもっている。
執筆者:植松 明石
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結婚の仲立ちをする人。媒酌人(ばいしゃくにん)ともよばれる。本来は橋渡しをする人の意で、「なかびと」の変化した語といわれる。すべての人の結婚に際して、仲人が必要な存在となったのは、さほど古いことではない。婚姻が、当事者である男女の間で決定された古い村落生活のなかでは、仲人親とよばれる者の役割は、男女を結び付けることではなく、彼らの将来の村における生活を庇護(ひご)し援助することがおもなものであった。ところが、婚姻に際し、当事者たちの意思よりも、家どうしの結び付きが問題とされるようになり、遠方婚姻が多くなると、男女とも自ら相手を選ぶ機会が少なくなり、困難にもなって、いきおい仲人という役目が重要となり、複雑にもなってきたのである。しかし、最近ではしだいに昔のように当事者の意思が重視されるようになって、「頼まれ仲人」と称して、男女の了解が済み、お膳(ぜん)立てのそろったところで、社会的地位などを考慮して仲人を頼むというようなことも多くなった。昔の仲人には、仲人親といって、実の親と同様な礼を尽くし、仲人の葬儀の際はかならず棺を担ぐという習俗は広く、ほとんど一生の間の関係となっていたが、いまではこういう関係は希薄になる傾向にある。
[丸山久子]
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…中世・近世において紛争解決のために行われた仲裁・調停。
[中世]
日本の中世社会の紛争解決手段として,一般的に行われたのは,紛争当事者が,中人(仲人)(ちゆうにん),扱衆,異見衆,立入衆,批判衆などと呼ばれた第三者(単数または複数)に解決をゆだね,その調停によって和解する噯(中人制)であった。この噯は,庶民,領主,大名など階層をとわず行われ,またその調停対象も,貸借・売買・土地あらそいなどの民事紛争,刃傷・殺人などの刑事事件,さらには合戦にまで適用されるものとして存在した。…
※「仲人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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