奄美諸島の北東部、大島の東に位置する島。一島すべて喜界町の町域となっている。喜界のほか鬼界・奇界などとも記された。「海東諸国紀」の琉球国之図に「鬼界島 属琉球 去上松二百九十八里去大島三十里」と記されている。「上松」は肥前国
大島の東約二五キロ、北緯二八度二三分付近から同一六分付近にかけて位置する。島の長軸は北東―南西に延び、約一三キロ、最大幅は南部で約六・五キロ、面積は五六・八七平方キロ。最高点は
新第三紀更新世―鮮新世にかけて堆積したと考えられる島尻層群(泥岩や砂岩・泥岩の互層)を基盤岩とし、その上を第四紀の琉球層群(石灰岩)が覆い、周囲は完新世の砂・石灰岩などからなる。年平均気温は摂氏二二・八度、同降水量は二〇四五ミリで、奄美諸島の中ではやや少な目であるが、亜熱帯海洋性の気候といえよう。植生も亜熱帯性植物が優先し、ツルザンショウなどは自生北限地に近い。珊瑚礁植物のモクビャッコウ、ミズガンピなども同様である。
喜界島は大宰府の管轄下にあり、天長元年(八二四)大隅国に編入されたというが、明らかではない。一一世紀半ばの成立とされる「新猿楽記」に「八郎ノ真人ハ、商人ノ主領ナリ(中略)東ハ浮囚ノ地に臻リ、西ハ貴賀ガ嶋ニ渡ル」とみえ、俘囚の居住する奥六郡(陸奥の北部)が東の周縁であるとしているのに対して、西の日本の果てが「貴賀ガ嶋」であるという観念がうかがえ、異国との境の内と外に通じる両属性をもった地域であったと想定できる。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
鹿児島県奄美(あまみ)大島の東約25キロメートルにある奄美諸島の一つ。面積56.82平方キロメートル、最高点は七島鼻(しちとうばな)の211.96メートルで、扁平な島である。大島郡喜界町に属し1島1町。島軸は北東―南西に延び約13キロメートルある。島には数段の隆起サンゴ礁が段丘地形をなし、海岸部は四周を裾礁(きょしょう)で縁どられ特異な景観を呈す。島の中央部に広がる百之台(ひゃくのだい)(隆起サンゴ礁の高台地)、西部の荒木海岸、北東部の海岸(トンビ崎海岸、志戸桶(しどおけ)海岸)などが奄美群島国立公園に指定されている。亜熱帯性の気候で、年中暖かく、ガジュマル、アダンなど多種の熱帯植物が茂る。地形が低平なため、奄美大島と比べて降水量が少なく、水は乏しい。農業はサトウキビの栽培が中心である。そのほか、島内の広い砂地を利用したスイカの栽培も行われるようになった。大島紬(つむぎ)や自然景観を利用した観光などが主要な産業である。住民登録人口6976(2019)、2015年の国勢調査では7212人。
[塚田公彦 2019年5月21日]
奄美諸島の民俗は一面沖縄に類似し、他面本土と一致するが、喜界島もその傾向が著しい。民間信仰の面で、シマ(集落)の祭りをノロ(祝女)が主宰し、卜占(ぼくせん)や霊媒にユタ(巫女(ふじょ))が活躍したことなど沖縄と等しい。しかし旧6月氏神の夏祭を六月灯(ろくがつどう)というのは各戸から子供の献灯があったからで、これは南九州との一致を示している。8月にはシチウンミ(節折目)からシバサシ、ドンガに至る三度の大祭が催され、盛んな八月踊りがみられることは奄美大島と同じである。しかし9月のトンニャーとよばれる行事は豊作占いの意味といわれるが、喜界島独自のものである。また源為朝(ためとも)や平家落人(おちゅうど)の伝説が島内各地にとどめられ、この島もかつて南島交通の要路にあったことを物語っている。
[竹田 旦]
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鹿児島県奄美大島の東方海上約25kmにある島。周囲48.6km,面積55.7km2,人口8169(2010)。1島で大島郡喜界町をなす。隆起サンゴ礁からなる低平な台地状の島で,最高所も224mに過ぎない。台地上は水に乏しいので集落は海岸近い急崖下に集まっている。気候は亜熱帯的で,全島にガジュマル,ソテツ,アダンなどが自生し,海岸にはサンゴ礁が発達する。古くから大和朝廷と交流があり,源為朝や僧俊寛が来島したと伝えられ,俊寛のものという墓もある。また戦いに敗れた平家の一門が逃れてきたといわれ,これらにまつわる伝説,故地が多い。13世紀後半から17世紀初めまでは琉球王朝に朝貢し,以後鹿児島藩直轄地となった。水稲はなくなり,農業生産の8割が畑作のサトウキビである。サトウキビは西部の工場で一手に製糖されるほか,一部は伝統の旧法による黒糖生産が行われる。第2次大戦前は馬の飼育が盛んであったが,戦後は肉牛の飼育に切りかわり,その他温暖な気候を利用しての切花,メロン,ソラマメなどの出荷が盛んになった。畑地灌漑の国営地下ダムが2003年に完成。大型フェリー,飛行機で鹿児島市や奄美大島奄美市の旧名瀬市と結ばれる。
執筆者:服部 信彦
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…海上はこの世とは別の世界であるという意識から,言葉も日常とは異なったものを用いるのであろう。鹿児島県の喜界島には,サワラ・カツオの魚をはじめ,やす・包丁・網等の漁具,風・雲・塩・水・きせるといった気象や身近なものまで特別な言葉でいい表す風習が伝えられていた。忌言葉【大嶋 善孝】。…
※「喜界島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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