土佐湾(読み)トサワン

デジタル大辞泉 「土佐湾」の意味・読み・例文・類語

とさ‐わん【土佐湾】

高知県南岸、室戸むろとから足摺あしずりに至る湾。湾内は大陸棚が広く、湾岸には漁業基地が点在。

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精選版 日本国語大辞典 「土佐湾」の意味・読み・例文・類語

とさ‐わん【土佐湾】

  1. 高知県南部、室戸岬足摺岬とを結ぶ線以北の太平洋の海域。四万十川仁淀川などが流入。大陸棚が発達した好漁場。

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日本歴史地名大系 「土佐湾」の解説

土佐湾
とさわん

高知県の南、東の室戸岬と西の足摺あしずり岬間の海域。両岬の湾口距離は一三〇キロ、湾岸の延長距離は二四〇キロあり、九十九洋つくもなだ白湾はくわんの別名がある。享保一九年(一七三四)の「土佐幽考」は「一国海之惣名也」と記す。東から奈半利なはり川・物部ものべ川・仁淀によど川・四万十しまんと川などの主要河川が注ぐが、仁淀川以東と以西で海岸の景観がある程度異なる。東部には高知平野・安芸平野があり、手結てい岬から室戸岬までは海岸段丘が発達しているが、西部には平野は少なく沈降海岸が多く、須崎市のうらうち湾・須崎湾、高岡郡中土佐なかとさ町の久礼くれ湾などのほか、同郡窪川くぼかわ町の興津おきつ海岸から幡多はた佐賀さが町佐賀付近に至るまでリアス海岸が発達している。佐賀町以南足摺岬に至る海岸は東部と同じく海岸段丘がみられる。砂浜は延長八三キロあるが、うち七七パーセントは仁淀川以東にある。湾の奥行は五〇キロで、沖合を黒潮が北東に向かって流れているが、室戸岬と興津岬付近へ黒潮の分派が突入して湾内を西流し、古来沿岸漁業に影響を及ぼしている。

天候と黒潮の関係で土佐湾は波が荒く、交通の難所であった。「日本書紀」天武天皇一三年一一月三日条に「土左国司言さく、大潮高く騰りて、海水飄蕩ふ。是に由りて調運ぶ船、多に放れ失せぬ」とあり、地震のためとはいえ海難にあっている。紀貫之も承平四年(九三四)一二月帰京にあたり、大湊おおみなと(現南国市前浜)で滞在を余儀なくされ、「土佐日記」同五年一月四日に「かぜふけば、えいでたゝず」、同五日に「かぜなみやまねば、なほおなじところにあり」と記しているが、一〇日間も滞留している。船出しても土佐湾を乗切ることは容易でなかった。

<資料は省略されています>

と歌にもある。とはいっても古代・中世には土佐湾は人人の往来や物資流通の重要な航路であった。上方との海上交通は甲浦かんのうら(現安芸郡東洋町)から南下して室戸岬を回り、土佐湾に入って東より室津むろつ(現室戸市)浦戸うらど(現高知市)しり(現土佐市)、須崎、久礼、佐賀、下田しもだ(現中村市)などの港に寄港した。室津は紀州に近く、熊野信仰と関連をもち、南北朝時代には南朝方の海上連絡の接点となっていた。浦戸の重要性は、中世の海事商法規として著名な廻船式目に浦戸の篠原孫左衛門の名がみえることからもうかがわれるが、中世後期の中国との貿易船の寄港地として有名であった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土佐湾」の意味・わかりやすい解説

土佐湾
とさわん

高知県の南岸、室戸(むろと)岬と足摺(あしずり)岬を結ぶ線以北の海域。湾口約130キロメートル、奥行約50キロメートル、湾岸延長約240キロメートルに及ぶ。水深200メートル以浅の大陸棚が約70%を占め、南東に向かって深度を増し土佐海段に至り、四万十(しまんと)川や奈半利(なはり)川沖合いの陸棚斜面には海谷の形成が明瞭(めいりょう)である。安芸(あき)市と黒潮町を結ぶ線以北は沈降傾向にあり、浦戸湾浦ノ内湾、須崎(すさき)湾などの支湾が形成される。南側は隆起傾向にあり、室戸岬、行当(ぎょうとう)岬、足摺岬には海岸段丘が発達する。また、仁淀(によど)川河口から奈半利川河口にかけて砂浜海岸が形成されている。室戸岬と興津崎に向かって突入し湾内を西流する黒潮の分流は、古来沿岸漁業の盛衰にかかわった。泥質底の湾奥では機船底引網、湾東部や足摺岬付近では大敷(おおしき)網などの定置網、砂浜海岸では地引網が行われていたが、現在は低迷している。土佐湾を代表するカツオ一本釣りは、大正期ごろから湾外へ漁場を拡大し、現在は足摺岬沖で小型のソウダガツオを漁獲する。代表的カツオ漁港として清水(しみず)(土佐清水市)、佐賀、久礼(くれ)(中土佐町)、宇佐(土佐市)などがあり、室戸岬港、室津港(室戸市)は遠洋マグロ基地へと伸展した。また、浦ノ内湾、野見湾を中心にハマチ、タイなどの養殖も行われる。近年では湾にいるクジラやイルカを対象としたホエールウォッチングも行われている。

[正木久仁]

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改訂新版 世界大百科事典 「土佐湾」の意味・わかりやすい解説

土佐湾 (とさわん)

高知県の南,東の室戸岬と西の足摺岬を結ぶ線以北の海域。両岬間の湾口距離約130km,奥行き約60km,湾岸は弧状を呈し,延長約240km。陥没湾で,湾の東西は隆起性を示し,室戸岬,行当(ぎようど)岬,足摺岬などに海岸段丘が発達し,沈降性の中央部には浦戸湾浦ノ内湾,須崎湾などの内湾がある。東部では仁淀川,物部川,奈半利(なはり)川からの土砂の供給により砂浜海岸が発達しているのに対し,西部は四万十(しまんと)川を除いて小河川が多くリアス海岸をなすところが多い。黒潮の分流が室戸岬と興津崎付近へ突入して湾内を西流するので,古くから沿岸でのカツオ・マグロ漁や捕鯨が盛んであったが,捕鯨は消滅し,カツオ・マグロ漁も漁船の動力化・大型化により湾外に漁場を求めるようになった。湾内では機船底引網や近海カツオ漁が行われ,浦ノ内湾,野見湾では養殖漁業が盛んである。人工魚礁の設置もすすめられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土佐湾」の意味・わかりやすい解説

土佐湾
とさわん

高知県南部,東の室戸岬から西の足摺岬にいたる弧状の湾。四万十川仁淀川物部川奈半利川など多くの河川が流入する。湾岸は高知平野を中心に,東部では手結から室戸岬にかけて,西部では黒潮町海岸付近から足摺岬付近まで海岸段丘が発達している。沖合いを北東に流れる黒潮が室戸岬沖で分流,支流が湾内を西流するため,その動向が沿岸漁業に大きく影響する (→黒潮大蛇行 ) 。

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百科事典マイペディア 「土佐湾」の意味・わかりやすい解説

土佐湾【とさわん】

高知県室戸岬足摺岬から北側の湾入。東西約130km,南北約50km。大陸棚が広く,黒潮の2支流が流れる。湾岸は海岸段丘が発達,浦ノ内湾,須崎湾などの沈降海岸がある。
→関連項目四万十川

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