撫子・瞿麦(読み)なでしこ

精選版 日本国語大辞典 「撫子・瞿麦」の意味・読み・例文・類語

なでしこ【撫子・瞿麦】

〘名〙
ナデシコ科の多年草。北海道を除く各地の山野や河原に生える。茎は基部で伏臥し、分枝して後直立し、高さ約五〇センチメートルになる。葉は先のとがった広線形で緑白色を帯び、基部は連なって茎を抱き対生する。八、九月頃、枝先に淡紅色まれに白色で縁が細裂した径三~四センチメートルの五弁花を開く。果実は円筒形で中に黒い扁平な種子を生じる。北海道、東北にはエゾノカワラナデシコ、高山帯にはタカネナデシコなどの近縁種がある。秋の七草の一つ。漢名に瞿麦を用いる。かわらなでしことこなつ。ひぐらしぐさ。なつかしぐさ。《季・秋‐夏》
万葉(8C後)一九・四二三一「奈泥之故(ナデシコ)は秋咲くものを君が家の雪の巖(いはほ)に咲けりけるかも」
装束の襲(かさね)の色目の名。若年の色とされ、青系統と赤系統がある。青系は多く男子の襲とし、表を紫の薄色、裏を青または紅梅。赤系は女子に多く表を紅梅、裏を赤または青とする。なでしこがさね。
※宇津保(970‐999頃)楼上上「唐綾のなでしこのうちき」
※古今著聞集(1254)一一「表紙さまざまにかざりたり。打敷、瞿麦のふせんれうに卯花を縫たりけり」
④ なでるようにして大切にあつかう子ども。愛する子。愛児和歌などで、①にかけて用いた。「源氏物語」の「山がつの垣ほ荒るとも折々にあはれはかけよ撫子の露」の歌で、玉鬘がなでしこにたとえられてからは、親に先立たれたみなしごの意にも用いられた。
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「二葉に生ひし なでしこを くる朝ごとに かき撫でて」
謡曲生田敦盛(1520頃)「無慚やな忘れ形見の撫子の」
⑤ 愛している女性。
※俳諧・本朝文選(1706)六・誄類・去来誄〈許六〉「此ほど四五日のとだへに、珍しと見るなでしこの、もとゆひものびやかに」
⑥ 香木の名。蘭子(らんず)異名ともいわれる。
⑦ 紋所の名。撫子の花、または花や葉を取り合わせて図案化したもの。撫子、山口家撫子、三つ盛り撫子、三つ割撫子など。
太平記(14C後)四〇「二筋違の中に、銀薄にて(ナデシコ)を押たる黄腰に」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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