翻訳|riot
群集の未組織的、自然発生的な集合的爆発行動のこと。具体的には、古代における奴隷の反乱、中世以降の農民一揆(いっき)、打毀(うちこわし)、フランス革命の発端になったバスチーユ牢獄(ろうごく)の襲撃、機械打ち壊し(ラッダイト)運動、米騒動などがそれにあたる。長期間にわたって、民衆が身分的・階級的支配にさらされたり、経済的、政治的、社会的、文化的に抑圧されたりすると、民衆の間には大量の不満が蓄積されるが、その不満がなんらかのきっかけを得ることによって急進的、破壊的な敵意表出行動として爆発することがある。それが暴動である。計画的、組織的なものではないがゆえに、かえって衝撃力、破壊力に富む。
多くの場合、暴動は政治的変革には結び付かないが、それが適切な理論と指導者を得るならば、革命とか内乱といった事態に進展していく。こうした事例を日本の歴史にみいだすことはむずかしいが、フランス革命やロシア革命にはそうした側面をみることができる。暴動は、その暴力性、急進性、破壊力のゆえに、ややもするとその盲目性や衝動性が一方的に強調されがちであるが、変革の契機としての側面がもっと重視されてよい。
歴史的には暴動は時代の曲り角に多く出現してきたが、管理化、組織化が著しく進行している現代においては、暴動の対象・契機・主体によって人種暴動、囚人暴動、労務者暴動、反カトリック暴動などを区別する、ほとんど歴史性を欠いた概念として用いられている。21世紀におけるこれまでもっとも注目される、多くの意味をくみ取られるべき暴動は、エスニシティ(人種・民族)や宗教のかかわる都市暴動であろう。
[矢澤修次郎]
『G・リューデ著、前川貞次郎他訳『フランス革命と群衆』(1963・ミネルヴァ書房)』▽『S・タロー著、大畑裕嗣監訳『社会運動の力――集合行為の比較社会学』(2006・彩流社)』▽『喜安朗著『パリの聖月曜日――19世紀都市騒乱の舞台裏』(岩波現代文庫)』
非計画的な,組織をもたない自然発生的な集団的暴力行使で,初期的段階の内乱の一形態ともなる。暴動は,支配される側の大衆が,さまざまな不満を正規の政治システムを通じて解消できないとき,事前の計画も明確なリーダーシップもほとんどないまま,暴発的に行う暴力の行使である。歴史上,暴動の例は枚挙にいとまがないが,古代ギリシア・ローマの奴隷の反乱,中世ヨーロッパの農民一揆や日本の百姓一揆の多くや米騒動などがその例である。現代の大衆民主主義社会でも,アメリカの黒人暴動にみられるようにうっ積した不満のはけ口として自然発生的な群集の集団的暴力行使が行われることがある。このような群集は社会集団論の見地からモッブmob(乱衆)と呼ばれることもある。
暴動の原因が単に日常的不満の蓄積にとどまらず,合法的な政権交代の展望の欠如にまでいたると,それは容易に組織的,計画的な内乱へと転化していく。また暴動に対する既存政権の対応が適切さに欠けると,暴動によってうまれる混乱は政治的真空状態をも現出させ,政権の転覆すら起こりうる。体制側は,暴動の鎮圧に成功すると,再発防止のため暴動参加者を厳罰に処する。イギリスにおける暴動法Riot Act(1715。12人以上の者が暴動を目的として集会を催した場合,この法令を読み上げて解散を命じ,応じない者は厳罰に処された)の規定や,日本の旧刑法における兇徒聚衆罪(きようとしゆうしゆうざい),およびこれをひきつぐ現行刑法の騒乱罪などはその一例である。しかし,その見せしめ的効果が永続する保証はない。したがって,結局は暴動の原因になった不満を解消し,大衆の政治的要求が権力に伝えられるためのチャンネルの形成が必要になってくる。これに失敗すると暴動が再発,頻発することになり,それはしだいに自然発生的状況から計画化,組織化への方向をたどり,全面的な内乱へと発展していく危険性が高まる。現代の大衆民主政治においては,さまざまな形での大衆の政治的示威行動(デモなど)が合法的に認められている。また大衆が利用可能なマス・メディアの発達が著しいため,何ら直接的な政治性をもたない,たとえば暑い夏を背景として群集心理に動かされた暴動もしばしば起こっている。
→内乱
執筆者:舛添 要一
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