( 1 )室町中頃まで施主、檀家の意では、まず「檀越(だにおち・だんおち・だんおつ)」続いて「檀那」が一般的であった。
( 2 )これらの語は、元来仏教の支援者一般を意味したが、時代が下るにつれて寺院と信徒の関係が固定化し、特定寺院(檀那寺)の支援者(檀那)のみをいうようになった。特に、江戸時代以降は特定の寺に帰属することが義務付けられ、これが家単位で行なわれた。しかし当時「檀那」は施しをする者の意味から、賃金を払う人間(主人)を指す一般的なことばになっており、仏教語としての本来の意味が空白化していた。それを埋めるべく登場したのが「檀家(だんか)」「檀方(だんかた)」である。
特定の寺院と永続的に葬祭の関係を結び,布施を行ってその寺院の護持にあたる家。寺僧を供養するという意味のサンスクリットのダーナパティdānapatiの音写である檀那,檀越(だんおつ)に語源をもつ。これらが個人的な師檀の関係であるのに対して,家として関係を結ぶものを檀家と呼んで区別する。公家や武家が家の菩提寺をもったことに始まり,近世初頭に小家族形態の近世的な〈家〉が広範に成立すると,それらの集合菩提寺が生まれ,両者の関係が永続的に固定化して,檀家が一般的に成立した。こうした歴史的状況を背景に,江戸幕府がキリシタン禁制実施の手段として,寺僧をして民衆が檀家であることを証明させる寺請制度を始めたため,すべての民衆がいずれかの寺の檀家とされるにいたった。明治維新後,制度としての檀家は寺請制度の廃止によって失われたが,寺と家との関係としての檀家は,仏教教団の基礎構造であったことと,明治民法による家制度の法制化によって存続し,家制度の廃止された現代でも,寺院の信徒把握の基本形態として続いている。そのような檀家の永続的性格は,家の本質である系譜連続性を維持するための祖先崇拝と深い関係にある。そのため,家族全員が同一寺院に所属することが必要とされる。しかし,家族内に檀那寺を異にするものが含まれ,かつ継承されていく半檀家とか複檀家と呼ばれるものがみられる(半檀家制)。それを遺制的なものとみるかどうかについて論議があり,問題を残している。
→寺檀制度
執筆者:大桑 斉
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特定寺院に永続的に葬祭を依頼し、布施(ふせ)を行ってその寺院を護持する家。古代インド語ダーナパティーdānapati(寺僧を供養(くよう)する施主(せしゅ)という意味)の音写の檀那(だんな)・檀越(だんおつ)に語源をもつ。これらが個人的な師檀の関係であるのに対して、特定の家と寺の関係となったものを檀家とよび、檀家の人々を檀徒という。
公家(くげ)・武家が特定の菩提(ぼだい)寺(檀那寺)をもったのに始まり、近世初頭に小家族形態の民衆の家が広範に成立すると、その集合菩提寺として檀那寺が生まれ、両者の関係が永続化・固定化して檀家が一般的に成立した。こうした状況を前提に、江戸幕府がキリシタン禁制の実施のため、寺僧をして民衆が檀家であることを証明させる寺請制(てらうけせい)を始めると、すべての人々がいずれかの寺の檀家とされることになった。このような寺請制を伴った制度としての檀家は、明治維新とともに廃止されたが、寺と家の関係としての檀家は、仏教教団の基礎構造であったから、現代に至るまで存続している。
その本質は、家の連続性を維持する祖先崇拝にある。そのためには、家族全員が同一寺院に所属することが必要であるが、このような丸檀家に対し、家族のうちに檀那寺を異にするものが含まれ、それが家族内で継承されていく半檀家・複檀家とよばれるものがある。それを丸檀家以前の遺制とみるかどうかについては、異論があり問題を残している。現代においては、父母双方の系譜を重視する双系的家観念がしだいに形成され、新しい半檀家形態が出現しつつある。
[大桑 斉]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この点において日本の家族はその構造類型に対応するさまざまな家筋のあり方を示している。 家筋の多様性を複檀家制(半檀家制),位牌祭祀,祖名継承法を例として示してみよう。複檀家制とは一つの家族が複数の檀那寺をもつ制度であり,現在では主として千葉県,神奈川県,茨城県など東日本の村落に多くみられる。…
…これは人口調査と合体して宗門人別改の制度となる。これによってすべての人々はいずれかの寺の檀家となることになる。戦国期までは地侍衆までが寺をもち,あるいは持仏堂をもつにすぎなかったものが,全国民が寺の檀家である状態が出現する。…
…檀家制度ともいう。永続的な葬祭の関係を結んだ檀那寺(手次寺)と檀家の結合をもとに,江戸幕府が民衆統制,宗教統制に利用した戸籍制度。…
…江戸時代に行われた宗門改めにおいて,禁制された宗派であるキリシタンや日蓮宗不受不施派などの信徒でないことを,檀那寺が証明する制度。江戸初期からみられるが,それらは特定の必要に応じて臨時に寺僧が檀家たることを証明する寺手形様式のものが多かった。たとえば若狭小浜藩の,1635年(寛永12)の五人組の連判手形に〈頼候寺かた〉(檀那寺)に請印をさせるような,宗門人別改帳の先駆様式があらわれてくる。…
…幕府は毎年,キリシタン宗門改を人別に実施し,このとき各人から寺請(てらうけ)証文を提出させた。寺請証文は檀那寺の僧が檀家各人について,当人が自分の寺の檀家であってキリシタンでないことを書いた証文である。人別の寺請による宗門改が全国に実施されたとき,近世の民衆はいや応なく檀那寺をもたねばならなかった。…
※「檀家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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