絶縁体(読み)ゼツエンタイ

デジタル大辞泉 「絶縁体」の意味・読み・例文・類語

ぜつえん‐たい【絶縁体】

電気や熱をきわめて通しにくい物質。電気を通さないエボナイトガラス雲母ゴム、熱を伝えにくいコルク粘土など。不良導体。不導体
[類語]導体不導体良導体

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精選版 日本国語大辞典 「絶縁体」の意味・読み・例文・類語

ぜつえん‐たい【絶縁体】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 電気伝導率が小さく、電気のきわめて流れにくい物体。エボナイト・ガラス・雲母・ベークライト・ゴム・パラフィンなど。不良導体。不導体。誘電体。〔現代大辞典(1922)〕
  3. 熱伝導率が小さく、熱をきわめて伝えにくい物体。コルク・粘土・煉瓦ファイバー発泡スチロールなど。不良導体。不導体。〔工学字彙(1886)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絶縁体」の意味・わかりやすい解説

絶縁体
ぜつえんたい

電気を通さない物質をいう。金属のように電気をよく通す物質を導体というのに対比させて、不導体、不良導体ともいう。また、誘電体ともいう。ガラス、ゴム、木、プラスチック、エボナイト、油などは絶縁体の例である。絶縁体は第一に、電気を絶縁するために用いる。このとき注目すべき性質は、何ボルトの電圧まで耐えられるかという性質である。これを絶縁耐圧という。この電圧以上の電界が絶縁体に作用するとき、それは急速に電気を通すようになり、絶縁体内に放電がおこって破壊してしまう。これを絶縁破壊という。絶縁耐圧の大きな物質ほど薄い層で大きな電圧に耐えることができる。

 絶縁体を電界(電場)の中に置いたときの分極現象に注目するとき、これを誘電体とよぶことが多い。誘電体の電気的な性質は誘電率によって表される。誘電率とは、コンデンサーにおいて、電極の間が真空の場合の電気容量をC0、電極の間を誘電体で満たした場合の電気容量をCとするとき、比C/C0をいう。絶縁体を電気材料としてみるとき、これらの電気的性質のほかに、機械的性質、温度特性も重要な性質となる。なお、絶縁体といえども多少は電気を通す性質がある。水晶、プラスチックなどはこの性質が少なく非常によい絶縁体であるが、水は、とくにすこしでも塩類を溶解していると、わずかではあるが電気を通す。静電気では、水を導体として扱ってよい場合もある。

[山口重雄]

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百科事典マイペディア 「絶縁体」の意味・わかりやすい解説

絶縁体【ぜつえんたい】

(1)電気をきわめて伝えにくい物質。これに電気力が働いても,誘電分極が起こるだけで,内部や表面で電荷の移動は起こらない。したがって絶縁体はまた誘電体と同義に考えられることが多い。その性能はおもに電気抵抗(ふつう109〜1016オーム・m)と破壊電圧(絶縁破壊を起こすに要する最小電圧,ふつう数〜数十キロボルト/mm)で表される。紙,布,ガラス,陶磁器,雲母,石綿,ゴム,油,ワニス等多種あり,特にポリエチレン,ポリスチレンポリ塩化ビニル合成樹脂や,それらを組み合わせたものが多用される。(2)熱を伝えにくい物質。ふつうの温度や低温には,空気およびこれを多量に含むコルク,ガラス繊維,石綿等,高温には破損・変形しない煉瓦,粘土等を使う。なお,電気の絶縁物は熱的に絶縁物であることが多く,特に真空は熱絶縁物としてすぐれている。→絶縁塗料絶縁油
→関連項目特殊陶磁器熱伝導率不導体

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絶縁体」の意味・わかりやすい解説

絶縁体
ぜつえんたい
insulator

物質の諸性質のなかで電気伝導率と熱伝導率が十分小さいものをそれぞれ電気的絶縁体 (誘電体) および熱絶縁体という。両者とも伝導率の値に明確な境界はないが,電気の絶縁体のほうが導体と絶縁体との伝導率の差が大きく,その区別が明確にできる。電気伝導は物質中で自由に移動しうる電荷のキャリアの運動に左右され,絶縁体ではキャリアの数がきわめて少く,かつほとんど移動しえない。熱伝導は物質内で原子,分子,電子の熱エネルギーが移動する機構で決る。一般的傾向として固体では電気の絶縁体は同時に熱の絶縁体となる場合が多い。

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化学辞典 第2版 「絶縁体」の解説

絶縁体
ゼツエンタイ
insulator

電気を伝えない物質.[別用語参照]半導体

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の絶縁体の言及

【固体】より

…水が結晶して氷になるとき体積が膨張するのは,水分子が密な状態で正しく配列するのではなく,水素結合により隙間の多い結晶構造をとるためである。化学結合
[電気的性質による固体の分類]
 固体はまたその電気的性質によって,金属,半導体,絶縁体に分類される。電気伝導のよい銀,銅の金属物質では,電気抵抗率が10-8Ωm程度ときわめて低いのに対し,塩化ナトリウムのような絶縁体では106Ωmときわめて抵抗が高く,その値は金属と絶縁体では非常に大きな開きがある。…

【電気】より

…われわれがいえるのは,ミクロの粒子は電荷という量をもち,粒子が作る電場や磁場の強さは電荷に比例し,また粒子が電場や磁場の中で受ける力も電荷に比例するということまでである。電荷
[導体と絶縁体]
 電気的性質に着目するとき,物質は導体と絶縁体(誘電体ともいう)に大別され,さらにその中間の性質をもつものとして半導体がある。固体の導体すなわち金属では,結晶を構成する原子の原子価電子は,原子を離れて結晶中を動きまわれるので,伝導電子と呼ばれる。…

【電気伝導】より

…室温での電気伝導度の大きさは,銅やアルミニウムなどの金属では105~106Ω-1・cm-1にも達するのに,ガラス,岩塩などでは10-15~10-17Ω-1・cm-1程度できわめて小さい。一般に電気伝導度の大きい物質を導体conductorといい,反対にきわめて小さいものを絶縁体insulatorと呼んでいる(導体,絶縁体の概念は熱伝導度についても用いられる)。ゲルマニウム,シリコンなどの半導体の電気伝導度は,不純物濃度によって一定しないが,おおよそ導体と半導体の中間の103~10-3Ω-1・cm-1程度の値をとる。…

【半導体】より

…金属のような導体(電気伝導度104~106Ω-1cm-1)とガラスや磁器などのような絶縁体(10-20~10-12Ω-1cm-1程度)に対し,弱いが若干の電気伝導性(例えば10-10~102Ω-1cm-1程度)を示す一群の物質を半導体と総称する。しかし半導体の特徴は,その電気伝導度の大きさよりも,むしろその電気的性質が温度や微量の不純物の存在などによって大きく変化することであり,これがさまざまな応用にもつながっている。…

【誘電体】より

…電気の絶縁体を電場の中におくと,正電荷は電場の方向に,負電荷は電場と反対方向に微小変位し,物質の構成要素は電気双極子モーメントをもつようになる。この現象を電気分極といい,電気分極の起こる物質を誘電体という。…

※「絶縁体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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