デジタル大辞泉
「違う」の意味・読み・例文・類語
ちが・う〔ちがふ〕【違う】
[動ワ五(ハ四)]
1
㋐比べてみて同じでない状態を呈する。相違する。異なる。「見方が―・う」「習慣が―・う」「―・った角度から見る」
㋑両者の間に隔たりがある。差がある。また、他と異なってまさっている。「親子ほども年が―・う」「格が―・う」「おつむの出来が―・う」
2 前に考えていたことや取り決めたことが現実のそれと同じでない。「話が―・う」「約束と―・う」
3 基準となるもの、正しいものと一致しない状態である。まちがっている。「計算が―・う」「答えが―・っている」「『もしもし市役所ですか』『いいえ、―・います』」
4 本来の位置からずれたり、正常でない状態になったりする。「足の筋が―・った」「気が―・う」
5 (動詞の連用形に付いて)すれちがう、交差する、の意を表す。「出迎えと行き―・う」「すれ―・う」
6 顔を合わせないようにする。
「木曽に―・はんと、丹波路にさしかかって播磨の国へ下る」〈平家・八〉
[動ハ下二]「ちがえる」の文語形。
[用法]ちがう・ことなる――「考え方がそれぞれ違う(異なる)人の集まり」「事実と違う(異なる)報道」など、同じではないの意では相通じて用いられる。◇「異なる」は比べてみて同じでないことを表すにとどまるが、「違う」は「約束が違う」「答えが違う」「気が違う」など、あるべきこと・状態から外れることをも言う。「格が違う」「性能が違う」など、一定の水準から隔たりがある場合にも使われる。◇「異なる」は、「異なる二点を通る直線は一本のみである」など、数学用語で用いるほか、「記載の金額と現金内容の異なる場合」など文章語的である。◇類似の語に「相違する」がある。「事実と相違する」などでは相通じて用いられるが、「案に相違する」は「相違する」だけの用法。
[下接句]勝手が違う・気が違う・口と腹とは違う・桁が違う・筋が違う
[類語]異なる・違う・違える・違える・食い違う・掛け違う・畑違い・勝手が違う・異にする
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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ちが・うちがふ【違・交】
- [ 1 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙
- [ 一 ] 複数のものの一部または全部が動いて、互いに一致しない動作をいう。たがう。
- ① 反対方向から来たものどうしが、互いにぶつからないで行き過ぎる。また、二つのものが動いてその場所をかえる。行きちがいになる。
- [初出の実例]「やりつる人は、ちがひぬらんとおもふに、いとめやすし」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
- 「このまぎれにちがひていでばやとおもへども」(出典:あさぢが露(13C後))
- ② 多くのものが、あちこちに行きかう。交錯する。
- [初出の実例]「おりたれば、あしのしたに、鵜飼ひちがふ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
- ③ 物に当たらないでそれる。はずれる。
- [初出の実例]「此衆は、目をかけて、背をたはめて、ちかひければ、蹴はづして」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)二)
- ④ うまく合っていたものがはずれる。骨などが本来の位置からはずれる。
- [初出の実例]「こしのほねがちがふたやら」(出典:虎明本狂言・飛越(室町末‐近世初))
- [ 二 ] 音や調子がくいちがう。また、調和しないでちぐはぐになる。
- [初出の実例]「きゃうがったうづらで、なきやうがちがふた」(出典:虎明本狂言・鶉舞(室町末‐近世初))
- [ 三 ] 抽象的な物事が一致しなくなる。
- ① 人の考えや思い、あるいは規則や道理に反する。そむく。また、理解や判断が誤っている。
- [初出の実例]「母や師匠の御心にちがはん事、いかがすべきなれ共」(出典:曾我物語(南北朝頃)四)
- ② 予期したことや平常のことなどと相違する。くいちがう。
- [初出の実例]「法皇御夢想に御らんぜられつるに少しもちがはねば、真実の御たくせんよと思召し」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)上)
- ③ 他と比較して差がある。異なる。
- [初出の実例]「ここらにも人々心のかわりて別々なは、かをのちかうたと同ぞ」(出典:玉塵抄(1563)一)
- 「余所の子共と違(チガ)って、気が付ねへでこまり切ます」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後)
- ④ ( ③から転じて ) 他と異なってすぐれる。並はずれる。
- [初出の実例]「長さきの伊左衛門様とはちがふた物」(出典:浄瑠璃・博多小女郎波枕(1718)上)
- 「さすがに御祐筆の流れは違うね」(出典:湯葉(1960)〈芝木好子〉)
- ⑤ 血のつながりが異なる。
- [初出の実例]「継(チガ)った母様」(出典:小夜千鳥(1901)〈永井荷風〉三)
- ⑥ 関西地方で、体言や体言相当語句に「…とちがう」の形で付いて、上を否定し、「…ではない」の意を表わす。ぞんざいな言い方では「…ちゃう」になったり、「と」が省略されたりすることがある。「あれ、山田はんとちがうか」「お前のさがしてんの、これちゃうか」「そんなん、ちゃう、ちゃう」など。
- [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙 ⇒ちがえる(違)
違うの補助注記
( 1 )「たがう」より新しい語で、「たがう」の変化した語ともいう。
( 2 )[ 一 ][ 三 ]⑥は近代になってからの用法という。
たが・うたがふ【違】
- [ 1 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙
- ① 二つ以上の物がかみ合わなくなる。いっしょにならなくなる。
- [初出の実例]「後(しり)つ戸よ い行き多賀比(タガヒ) 前つ戸よ い行き多賀比(タガヒ) うかがはく 知らにと」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- 「うちより少将、中将、これかれ、さぶらへとてたてまつれたまひけれど、たがひつつありきたまふ」(出典:大和物語(947‐957頃)二)
- ② 事柄の内容がくいちがう。ぴったりと合わなくなる。異なる。
- [初出の実例]「諸家の
る帝紀及び本辞、既に正実に違ひ、多く虚偽を加ふ」(出典:古事記(712)序) - 「かぐや姫のたまふやうにたがはず作り出つ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ③ 物事にそむく。裏切る。さからう。反対する。
- [初出の実例]「駿河の海磯辺(おしへ)に生ふる浜つづら汝(いまし)をたのみ母に多我比(タガヒ)ぬ」(出典:万葉集(8C後)一四・三三五九)
- 「仏の道にこそは入らせ給はめと故大臣殿のたまはせければ、それにたがはず、若くおはするに、御ぐし下ろし給ひたる」(出典:今鏡(1170)六)
- ④ ( 「仲をたがう」の形で ) 人間関係がしっくりいかなくなる。仲たがいをする。→仲をたがう。
- ⑤ いつもと変わる。正常でなくなる。おかしくなる。
- [初出の実例]「かいにもあらずと見給ひけるに、御心ちもたかひて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- 「こほりふたがりたる水を多くかけさせたまけるに、いといみじくふるひわななかせたまて、御いろもたかひおはしましたりけるなむ」(出典:大鏡(12C前)一)
- [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙 ⇒たがえる(違)
違うの語誌
( 1 )上代から例があり、中古以降もごく一般に用いられた。同様な意味を表わすものに「たがふ」から変化したものともいわれる「ちがふ」があり中古から用いられるが、「たがふ」より例は少ない。
( 2 )「たがふ」は、文章語としては、近世に入っても例が多いが、近世初期の口語資料である「きのふはけふの物語」(一六一四‐二四頃)では、「ちがふ」は見られるが「たがふ」はなく、今日では、口頭語としては、ほとんど用いられなくなった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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