雛祭(読み)ひなまつり

精選版 日本国語大辞典 「雛祭」の意味・読み・例文・類語

ひな‐まつり【雛祭】

  1. 〘 名詞 〙 三月三日上巳(じょうし)節供に、女の子のいる家で、雛人形やその調度類をかざり、白酒・菱餠・桃の花などを供えてまつる行事。男の子の、五月五日の端午の節供に対して、女の子の幸福を祈るために行なわれるもの。ひいなまつり。ひなあそび。ひなえ。《 季語・春 》
    1. 雛祭〈大和耕作絵抄〉
      雛祭〈大和耕作絵抄〉
    2. [初出の実例]「惣じて彌生の三日は娘の節供、ひなまつり」(出典:浄瑠璃・曾我虎が磨(1711頃)中)

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改訂新版 世界大百科事典 「雛祭」の意味・わかりやすい解説

雛祭 (ひなまつり)

3月3日の(三月節供)の行事。この日の行事は雛人形飾り祭るものと,山遊び磯遊びとに大別できる。雛人形を飾り祭るのは,中国伝来の3月上巳(じようし)の行事と日本に古くからある人形(ひとがた)によって身をはらおうとする考え,および貴族の幼女の人形遊びとが結合して,室町時代ごろに一応の形を整えたといわれる。そして江戸時代五節供の一つに加えられるに及んで,上流社会において現在みるような雛壇での飾りつけが完成するなどいっそうの整備がなされ,しだいに華やかになり,かつ地方や民間へも普及していったのである。雛人形は現在ではもっぱら観賞用の玩具として扱われているが,古くはそれで身をなでて穢(けがれ)を移しはらい去ろうとした呪具としての性格を強く持つものであった。しかししだいに精巧な物がくふうされると,保存されて玩具として扱われるようになり,内裏雛を中心に三人官女や五人囃子などの雛および各種調度類が加えられていった。それでも現在,鳥取県をはじめ各地には流し雛風習があるし,関東地方などで古い雛は単に捨てるのではなく道の辻や祠などに納めて小正月の火祭のときに燃やしているのなどは,雛人形に対する古い心意を伝えるものであろう。静岡県や愛知県などには子どもたちが好みの雛人形を持って山や磯に出て遊ばせる所がある。またこの日だけとは限らず,七夕八朔(はつさく)にも簡素な雛人形を飾る所がある。雛には赤,青,白のひし餅や白酒,桃の花を供えるほかに貝類を供える所も多く,ヒナアラシなどと称して,子どもたちがこれら供え物をもらい歩いたり盗み歩く風も各地にある。雛飾とは別に,この日重箱に馳走を詰めて近くの山や海辺に出かけて食べたり,そこで炊事をし共同飲食して終日暮らす山遊び・磯遊びも全国的に行われている。花見潮干狩りもこの一種と認められるが,これらは本格的な農事に先がけて戸外で物忌の生活を送り,田の神祭の資格を身につけようとした古い信仰に基づくものとされている。
曲水の宴(きょくすいのえん
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百科事典マイペディア 「雛祭」の意味・わかりやすい解説

雛祭【ひなまつり】

3月3日の節供行事。雛人形を飾り,菱餅(ひしもち)や桃の花を供え,白酒で祝う。男子端午の節供に対して,女子の節供とされる。雛祭の形式が現在のように整ったのは江戸時代に入ってからで,源流は(はらえ)のため人形(ひとがた)に供物をささげて水に流した古代の風習にあり,鳥取県の流し雛などにその風が残っている。
→関連項目有平糖草餅上巳雛人形

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日本文化いろは事典 「雛祭」の解説

雛祭り

3月3日は「上巳」「桃の節句」などと言われ、厄を人形に移して祓った「流し雛」の風習がありました。それらが発展し、雛人形を飾り女の子の健やかな成長と幸せを願う現在の「雛祭り」となりました。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「雛祭」の解説

雛祭
ひなまつり

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治32.2(東京・浅草座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の雛祭の言及

【白酒】より

…雛祭の祝酒とされる混成酒。清酒,焼酎,みりんなどに蒸したもち米とこうじを加えて発酵させ,甘いもろみになったところで,もろみをすりつぶして粘稠(ねんちゆう)な酒にしたもので,白く濁って甘みが強い。…

【雛人形】より

…雛祭に飾る人形。節供人形ともいう。…

【山遊び】より

…愛知県新城市大海では,3月3日に女児たちが好みの雛人形を1体ずつ抱き,重箱に煮しめを詰めて山へ行き,〈雛様,雛様,よくよく花御覧うじろ〉などと呼ばわり合ったりして終日遊び暮らし,夕方山を下りるときには〈また来年もおいでましょう〉といって春の山になごりを惜しんだという。このように3月3日の場合には雛祭と結合し,すでに女性や子どもの行事となっている所が多い。4月8日(卯月八日)の場合には,単に霊山に登るとだけしている所もあるが,山からウツギ,ツツジ,シャクナゲなどを摘んできて庭先に立てる風が近畿地方には多くあり,高花,天道花などといわれている。…

※「雛祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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