大都市圏の一種。「首都圏整備法」の適用される範囲をいい、東京を中心に半径約150キロメートルの区域、すなわち東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬、山梨の1都7県全域にあたる。整備計画によれば、この圏内に、既成市街地、近郊整備地帯、都市開発区域、近郊緑地保全区域が定められている。「第三次全国総合開発計画」(1978)で使われている「東京圏」は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県をさし、その合計人口は約3340万人(2000)、面積1万3514平方キロメートル、人口密度1平方キロメートル当り約2470人。一部が丘陵のほか大部分は台地および低地で、わが国ではもっとも広い平野を占め、市街化が進み、人口集中地区人口は全人口の約90%に近い。
東京は日本の首都であり、政治・経済・文化の中心として、人口、産業、公私の事業所、大学などが集中し、それに伴って土地利用が高密に行われている。地価の高騰、住宅不足、交通混雑、環境悪化、災害などの問題が深刻である。その解決には、東京都のみでなく、国の援助、近接の県市および鉄道、都市再生機構などの協力なしには解決できない。第二次世界大戦により焼失した東京の復興を図るために、「首都建設法」(1950)が公布されたが、その後も人口集中が激しく、市街の過密化が進んだので「首都圏整備法」(1956)を公布して、大ロンドン計画に学んだ総合計画を樹立した。地域区分としては、東京区部、川崎、横浜などの既成市街地を幅5~10キロメートルの緑地帯で囲み、市街の膨張を抑え、緑地帯の外に住宅、工場などの開発地区を計画した。多摩、港北、千葉などのニュータウン、筑波(つくば)研究学園都市、京葉工業地域、鹿島(かしま)臨海工業地域、内陸では日野、小山(おやま)、高崎などの工業団地が建設された。成田の成田国際空港、高速道路網、利根(とね)川上流のダム建設と上水工事が行われ、下水道も普及した。地下鉄網の整備、新宿副都心建設、高層住宅化など都心地区の集中を促す力が強くなり、郊外の開発圧力が強くなって緑地帯の維持が困難になった。このため、線引きを改めて、市街化区域と市街化調整区域とに分け直した。首都圏整備計画を受ける範囲は、初めは、都心から半径約100キロメートル以内の市町村であり、関東平野のほぼ全域を覆ったが、その後前述4都県のほか、茨城、栃木、群馬3県の全域と山梨県が追加されることになった。
首都圏整備計画とほぼ同様な地域整備が大阪を中心とする「近畿圏整備」として計画され、第三次全国総合開発計画では「大阪圏」(大阪府・京都府・兵庫県)が取り上げられ、また「名古屋圏」は愛知・三重両県を範囲として計画されている。
海外の首都圏は各国の国情と地域の自然的・社会的性格によってさまざまである。オーストラリアのキャンベラやブラジルのブラジリアのようにまったく未開の土地を開いて市街を計画する新首都建設型と、パリ、ロンドンのように歴史の古い中核市街(パリではシテ、ロンドンではシティ)の外に大パリ、大ロンドンが計画される拡張整備型がある。パリ旧市は人口約215万人、周囲のセーヌ、セーヌ・エ・オアーズ、セーヌ・エ・マルヌ各県にわたる143市町村を含むパリ首都圏が人口約932万人である。大ロンドンは周辺32区およびシティを含み、人口は約734万人である。
[木内信藏]
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…日本の〈政治,経済,文化等の中心としてふさわしい首都圏の建設とその秩序ある発展を図る〉ため1956年に公布された首都圏整備の基本法。本法により東京,埼玉,千葉,神奈川,茨城,栃木,群馬,山梨の1都7県の区域を首都圏とし,この区域において既成市街地,近郊整備地帯および都市開発区域を定めるとともに,内閣総理大臣が関係都県等の意見をきいて基本計画,整備計画および毎年度の事業計画からなる首都圏整備計画を決定する。…
…東京は,江戸時代300年の幕政の中心であった江戸を基盤として発達した。現在も日本の首都であると同時に政治,経済,文化,交通の中心であり,周辺の各県域におよぶ首都圏を形成している。有楽町にあった東京都庁は1991年新宿に超高層の新庁舎が完成し,移転した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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