カルケミシュ(英語表記)Carchemish

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルケミシュ」の意味・わかりやすい解説

カルケミシュ
Carchemish

北シリアの要衝を占めた古代都市。ローマ時代にはエウロポスと呼ばれた。ユーフラテス川に面した軍事的・経済的要衝にあり,常に周囲の大国の係争点となった。現在は遺跡。 1911~20年発掘調査されたが,厚い2重の城壁と城門,王宮などから成り,北シリア独特の折衷的様式を示す浮彫のついた石板が出土した。歴史は新石器時代に始り,ウルク期,ジェムデット・ナスル期を経て,青銅器時代,鉄器時代,ローマ時代にいたる。その間,ほかの都市出土の楔形文字の資料により,独立した都市国家時代と周囲の国の属領時代を繰返したことがわかる。前 18世紀のマリ文書によれば,ユーフラテス川下流地域にアナトリア木材を輸出していたことが記されている。次にヒッタイト王シュッピルリウマシュ1世アッシリアミタンニエジプトに対する緩衝地帯としてこの地を息子に支配させた。しかし前 1200年頃「海の民」に侵入され一時衰退した。その後アラム人の支配する小王国ができ,再び通商貿易の中心として栄え,アッシリアのサルゴン2世占領 (前 717) ,バビロニア王ネブカドネザル2世とエジプト軍の戦い (前 605) の舞台ともなった。

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