くる病(読み)くるびょう(英語表記)rickets

  • (子どもの病気)
  • (運動器系の病気
  • )
  • 外傷を含む

翻訳|rickets

知恵蔵miniの解説

骨格異常、筋緊張低下、蛙腹などの症状を引き起こす乳幼児疾病。原因は、ビタミンD欠乏、ビタミンDの合成障害、リンの不足、腎尿細管障害などさまざまであり、骨格変形が起きた場合には成人になっても格異常が残る。骨変形を治すには手術しか方法がないが完全な整形は難しいことも多く、また治療にかかる時間や負担も大きいため、乳幼児期の疾病ではあるが生涯にわたる問題となることが多い。ビタミンD、カルシウム、リンの摂取や、ビタミンDを合成させるため日光(紫外線)に当たることが、早期治療と予防の主方策となる。先進国では栄養状態の改善により患者数が非常に少なくなったが、近年、完全母乳栄養の推奨や日光浴減少により増加が見られている。

(2012-11-2)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

食の医学館の解説

《どんな病気か?》


〈カルシウムやリンが骨に沈着しない〉
 成長期の子どもに起こる骨の石灰化障害を、くる病と呼んでいます。
 くる病は、なんらかの原因によってカルシウムやリンが骨に沈着せず、類骨(るいこつ)と呼ばれるやわらかい組織が、骨の中に過剰にできてしまう病気です。
 このため骨がやわらかくなり、O脚(おーきゃく)や、背骨が曲がる、手足の関節のまわりが腫(は)れるなどの体の変形が起こります。
 また、血液中のリンやカルシウムの濃度が低くなるために、不機嫌、情緒不安定になるなどの精神症状が現れることもあります。
 原因はさまざまで、腎臓病(じんぞうびょう)が原因で起こったり、消化不良や薬の副作用によっても起こります。
 ちなみに19世紀のロンドンでは、栄養不良と霧による日照不足のため、くる病にかかる子どもが多かったといいます。
 皮膚は紫外線にあたると、骨をつくる働きのあるビタミンDを活発に合成しますが、このビタミンDの不足が、くる病にかかる子どもをふやしたのです。

《関連する食品》


〈骨を丈夫にするビタミンDとカルシウム〉
○栄養成分としての働きから
 ビタミンDは、骨の材料であるカルシウムやリンの吸収をよくして、骨への沈着を助ける働きがあります。ビタミンDはサケ、カレイ、イワシなど、魚類に多く含まれており、骨まで食べられる小魚であれば、カルシウムもいっしょにとることができるので一石二鳥です。
 さらに牛乳は、カルシウムもビタミンDも豊富に含んだ理想的な食品です。牛乳のカルシウムは、たんぱく質と結合しているために、小魚の約2倍も吸収率がよいので積極的に利用したいものです。
 ビタミンKも、カルシウムの骨への沈着を助けるほか、骨から血液中にカルシウムが溶けだすのを抑制する働きがあります。ビタミンKは、納豆やアシタバ、コマツナなどに多く含まれています。
○注意すべきこと
 なお、治療ですでにビタミンD製剤やカルシウム製剤を服用している場合、ビタミンDやカルシウムのとりすぎは、ビタミンD過剰症や高カルシウム血症をまねくので注意が必要です。

出典 小学館食の医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ビタミンDの欠乏によっておこる病気で、小児期におこった場合をくる病とよび、成人になっておこった場合を骨軟化症という。ビタミンDの代謝は、食物中のビタミンD3(コレカルシフェロール)またはD2(エルゴカルシフェロール)と、プロビタミンD(7-デヒドロコレステロール)が皮膚で紫外線の照射を受けて生じたビタミンD3が肝臓で、ついで腎臓(じんぞう)でそれぞれヒドロキシ化されて活性型ビタミンDとなる。このとき、腎臓におけるヒドロキシ化は上皮小体(副甲状腺(せん))ホルモンによって促進される。この活性型ビタミンDが骨、小腸、腎臓に働きかけてカルシウムやリンを調節している。したがって、この過程のいずれの障害でもビタミンD欠乏症の症状(くる病)がみられる。
 くる病の症状は骨の変化が主体で、乳児では頭蓋(とうがい)骨が侵され大泉門開大、頭蓋癆(ろう)など頭部の変形がみられ、幼児では長管骨骨端部が侵されてO脚やX脚になりやすい。また、胸郭が変形して鳩胸(はとむね)や漏斗(ろうと)胸になったり、肋骨(ろっこつ)と肋軟骨の境界部が球形に膨れあがって数珠(じゅず)玉を連ねたようになるほか、脊柱(せきちゅう)の後彎(こうわん)を認める。重症例ではテタニー(筋肉のけいれんで手足が曲がったまま動かなくなる)をおこすことがある。臨床検査では、テタニー発作時を除いて、血清カルシウム値は正常ないし低値、血清リンは低下し、アルカリフォスファターゼ活性値は上昇する。X線像では、骨端線の不鮮明、骨幹端の不規則な板状拡大がみられる。治療にはビタミンDを投与するとともに、食事を改善する。[橋詰直孝]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 くる病とは、成長期(骨の発育期)の小児でカルシウムが骨に沈着せず、軟らかい骨様組織が増加している状態をいいます。多くの場合、骨の成長障害および骨格や軟骨部の変形を伴います。

 原因はビタミンD欠乏、ビタミンDの合成障害、ビタミンD受容体の異常、リンの不足、腎尿細管障害などさまざまです。

症状および検査

 O脚、肋骨のこぶ(肋骨念珠(ろっこつねんじゅ))、肋骨の前方突出(鳩胸(はとむね))、低身長などを示します。骨X線検査では、主に成長が盛んな(ひざ)、手関節のX線像が診断に役立ちます。

くる病のいろいろ

①ビタミンD欠乏性くる病

 ビタミンDは皮膚が紫外線の照射を受けて、コレステロールから生合成されます。しかし、乳児ではそれだけでは不十分なため、食物からの摂取が必要で、とくに極小未熟児ではビタミンD欠乏になりやすいことが知られています。また、アトピー性皮膚炎があるために著しい制限食を続けた場合にも、くる病になることがあります。

 ビタミンDは、肝臓や腎臓で代謝されて活性体となるため、肝障害や抗けいれん薬摂取時、あるいは腎臓の病気では食事性の欠乏がなくてもくる病を発症することがあります。

 治療には、腎結石に注意しながら活性型ビタミンDを用います。

②ビタミンD依存性くる病

 ビタミンD依存性くる病には、Ⅰ型とⅡ型の2つの病型が知られています。Ⅰ型の原因はビタミンDを活性化する酵素の異常であり、活性型ビタミンDが産生されないために起こります。一方、Ⅱ型の原因はビタミンD受容体の異常です。

 いずれも発症年齢、臨床症状とも類似しており、2歳未満で低カルシウム血症と骨のくる病性変化を起こします。見分け方としては、Ⅱ型において禿頭(とくとう)を高頻度に認めることなどがあります。

 治療は、活性型ビタミンD製剤の投与ですが、Ⅱ型の場合、治療困難な場合が少なくありません。

③低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病

 腎臓でのリンの再吸収および腸管でのリンの吸収障害の結果、著しい低リン血症と過リン酸尿、くる病を起こす病気です。一般に伴性(はんせい)優性遺伝形式をとりますが、散発例も少なくなく、未熟児くる病、腎性くる病を除けば、日本で最も発生頻度の高いくる病です。

 低リン血症などは生後早期には認めないことがあり、多くは生後1年ころに四肢の変形、歩行異常、歩行遅延、低身長などにより発見されます。

 治療は、経口リン製剤および活性型ビタミンDの投与です。

山中 良孝

どんな病気か

 骨や軟骨が石灰化障害により、類骨(るいこつ)(石灰化していない骨器質)が増加する病気で、骨成長前の小児に発症するものをくる病といいます。これに対して、骨成長後に発症するものを骨軟化症(こつなんかしょう)(前項)といいます。

原因は何か

 以前は、ビタミンDの欠乏によるものが多くみられましたが、現在では食生活の改善に伴い減少しています。

 主にビタミンDの作用不足によるものとして、ビタミンDの吸収不良などによるビタミンD欠乏、ビタミンDの活性化に必要な酵素が欠損しているビタミンD依存性Ⅰ型くる病、ビタミンD受容体の異常が原因であるビタミンD依存性くる病や腎臓の尿細管におけるリンの再吸収障害によるものがあります。

 その他、骨や軟骨の腫瘍によるもの、遺伝子異常によるもの、薬剤が原因である場合もあります。

症状の現れ方

 頭蓋の軟化、低身長、下肢の変形(O脚X脚)、肋骨念珠(ろっこつねんじゅ)(肋骨の突出)、胸郭(きょうかく)変形、脊柱(せきちゅう)変形(後側弯(こうそくわん))などがみられます。また、低カルシウム血症を伴う場合には、筋緊張の低下、歩行障害(あひる様歩行)などの症状が現れます。

検査と診断

 単純X線写真では、骨端核(こつたんかく)の出現遅延、骨幹端(こつかんたん)の不整や拡大がみられます。また、血液検査では、血清カルシウム、リン、アルカリホスファターゼ、副腎皮質ホルモン、ビタミンDに異常がないか測定します。これらによりくる病の病型を診断します。

治療の方法

 薬物療法としてビタミンD製剤を投与します。低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病では、ビタミンDとともにリン製剤も投与します。

 下肢の骨折に対しては装具療法を、下肢の変形に対しては骨矯正術や骨延長術などの手術療法が必要な場合があります。

病気に気づいたらどうする

 小児科専門医あるいは小児整形外科を専門とする整形外科医を受診する必要があります。

朝妻 孝仁

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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