ツノメドリ(その他表記)Fratercula corniculata; horned puffin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツノメドリ」の意味・わかりやすい解説

ツノメドリ
Fratercula corniculata; horned puffin

チドリ目ウミスズメ科。全長 32~37cm。夏羽(→羽衣)では,喉と頭上から背面にかけて黒い。基部から眼のまわり,耳羽など顔全体が白く,胸から腹も白い。眼の上には角のような肉質の黒い突起があり,眼の後方から後頭まで黒い線が走る。嘴は縦に扁平で先端が赤く,基部側が黄色で,口角という上下の嘴の接合部が橙黄色。冬羽では顔は黒ずんだ灰色になる。嘴も黄色の外層がとれて黒青色になり,先端部も口角も色があせる。眼上の突起物はなくなる。オホーツク海周辺,カムチャツカ半島東部,ベーリング海からアラスカ半島を経てカナダのブリティシュコロンビア州沿岸にかけて繁殖分布する。島の急傾斜の岩場や崖地で営巣し,岩の割れ目や間のくぼみなどに巣をつくる。冬季沖合いや南に生息範囲を広げる。日本では冬季に北海道海上に渡来するほか,東部の海上では夏にもまれに観察される。

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改訂新版 世界大百科事典 「ツノメドリ」の意味・わかりやすい解説

ツノメドリ (角目鳥)
horned puffin
Fratercula corniculata

チドリ目ウミスズメ科の鳥。全長約36cm。北千島,カムチャツカ半島,アレウト列島アラスカ西部などのベーリング海および北太平洋沿岸で繁殖し,冬は少し南へ移動する。日本には冬鳥として渡来するが,数は多くない。縦に平たい変わったくちばしをもち,同時に何匹も魚をくわえることができる。夏羽ではくちばしの基部は黄色く,先が赤い。頭上,後頸(こうけい),頸側,のど,体の上面は黒く,顔と胸から腹は白い。眼の上に角のような突起があるのでこの名がつけられた。冬羽では眼の突起はなくなり,顔は淡黒色,くちばしも黒っぽくなる。島や海岸の断崖の上部の草地の地面に水平に掘った穴や岩の隙間の中に少量の枯草を敷いて巣とし,1腹1個の卵を産む。日本では繁殖の記録はないが,北海道の大黒島,霧多布,落合岬などでは繁殖期に数回記録されている。秋冬には海上で生活し,潜って魚をとる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツノメドリ」の意味・わかりやすい解説

ツノメドリ
つのめどり / 角目鳥
horned puffin
[学] Fratercula corniculata

鳥綱チドリ目ウミスズメ科の鳥。ベーリング海のアラスカからアリューシャン列島千島列島など北太平洋北部の寒流域に分布、繁殖している。日本では夏季の記録もあるが、普通は冬鳥として少数が北日本の海岸に渡来するのみである。全長35.5センチメートル。頭上と体の背面は黒色で、顔と腹は白色。顔の目の部分に角(つの)のような形をした皮膚がある。嘴(くちばし)は縦に平たくて体に比べて大きく、先のほうが赤色で基のほうが黄色をしている。足は赤っぽい。

 近似種のニシツノメドリF. arcticaは、大西洋北部の寒流域に分布する種で、生態はエトピリカ、ツノメドリに酷似する。全長30センチメートル。嘴の基部は灰色をしている。

[柳澤紀夫]


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