デジタル大辞泉
「も」の意味・読み・例文・類語
も[副]
[副]
1 「もう3」に同じ。さらに。いま。「も少し待とう」「も一ついかがですか」
2 「もう1」に同じ。もはや。
「東京へは、―二十年も出ん」〈漱石・草枕〉
も[助動]
[助動][○|○|も|も|○|○]《上代東国方言》活用語の未然形に付く。推量の助動詞「む」に同じ。
「上野佐野田の苗の群苗に事は定めつ今はいかにせも」〈万・三四一八〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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も
- [ 1 ] 〘 係助詞 〙
- [ 一 ] 文中用法。
- ① 文中の種々の連用語を受ける。
- (イ) 同類のものが他にあることを前提として包括的に主題を提示する。従って多くの場合、類例が暗示されたり、同類暗示のもとに一例が提示されたりする。類例が明示されれば並列となる。単文の場合は活用語を終止形で結ぶ。
- [初出の実例]「太刀が緒母(モ) いまだ解かずて 襲(おすひ)を母(モ) いまだ解かねば」(出典:古事記(712)上・歌謡)
- (ロ) 主題を詠嘆的に提示する。
- [初出の実例]「沖つ鳥 胸見る時 羽叩ぎ母(モ) これはふさはず」(出典:古事記(712)上・歌謡)
- (ハ) 願望の対象を感動的に提示する。
- [初出の実例]「我が命謀(モ) 長くもがと 言ひし工匠はや」(出典:日本書紀(720)雄略一二年一〇月・歌謡)
- ② 同じ語の間にはさみ、強調の意を表わす。
- (イ) 「AもA(だ)」の形で同じ語(名詞または形容動詞の語幹)を受けて、一般的なAではなく特別な、程度の甚だしいAである、ということを表わす。→折りも折り。
- [初出の実例]「下へ来て居さっしゃる客は、田舎も田舎、箸の持様も知らぬ、野暮助のたわいなしでござりまする」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)三)
- (ロ) 「AもAだが(なら)BもBだ」の形で人を表わす名詞を受けて、AもBも共に常軌を逸していてあきれるほどである、の意を表わす。→何方(どっち)もどっち。
- [初出の実例]「是を二十五円で売りつけられる阿爺(おとっさん)も阿爺だが、それを又二階迄、えっちらおっちら担ぎ上げる御前も御前だね」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一〇)
- (ハ) 「…も…たり」(「たり」は完了の助動詞)などの形で、同じ動詞の連用形を受けて、その動作が激しく、あるいは長時間にわたって行なわれた、ということを、驚きの気持を込めて言う。→揃いも揃う。
- [初出の実例]「をほへもをほへたり、云も云たりそ」(出典:史記抄(1477)三)
- ③ 対照的な二つの語に添えて強調の意を表わす。
- (イ) 「…も…ないもない」の形で同じ語(動詞・形容詞)を受け、…するか(…であるか)どうかを論ずるまでもない、ということを表わす。
- [初出の実例]「容すも容さんも有るものか」(出典:金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉続)
- (ロ) 「AもBもない」の形で対照的な意味の二つの語を並べて、AとBの区別をする場面・状況ではない、という意を表わす。「ここでは先輩も後輩もない。みんな平等なんだ」
- [初出の実例]「いや、何もお前、医学的な話ぢゃないか。上品も下品も無い」(出典:桜桃(1948)〈太宰治〉)
- (ハ) 「Aもへったくれ(くそ)もない」「Aも何もない」などの形で、この状況ではAなぞ本来の意味・価値をもたない、また、Aが存在しない、必要ない、ということを強めて言う。
- [初出の実例]「イヤ置け置け、断(ことはり)もへったくれも入らぬ」(出典:浄瑠璃・小野道風青柳硯(1754)四)
- ④ 詠嘆を表わし、間投助詞的に用いられる。
- (イ) 間投助詞に上接して軽い詠嘆を表わす。
- [初出の実例]「置目母(モ)や淡海の置目明日よりはみ山隠りて見えずかもあらむ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- (ロ) 形容詞の連用形・副詞・数詞・接続助詞「て」などを受け、また複合動詞の中間に介入して詠嘆的強調を表わす。
- [初出の実例]「うれたく母(モ) 鳴くなる鳥か」(出典:古事記(712)上・歌謡)
- ⑤ 係助詞に上接して副助詞的に用いられる。→もこそ・もぞ・もや・もか。
- [ 二 ] 文末用法。文末の終止形(文中に係助詞がある時はそれに応ずる活用形)およびク語法を受けて詠嘆を表わす。体言を受ける場合は同じく詠嘆を表わす他の係助詞が上接して「かも」「はも」「そも」などの形となる。終助詞とする説もある。
- [初出の実例]「はしけやし 我家(わぎへ)の方よ 雲居立ち来母(モ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- [ 2 ] 〘 接続助詞 〙 活用語の連体形を受け、また「ても」の形で確定の逆態接続を表現する。
- [初出の実例]「心ひとつにいとど物思はしさ添ひて内裏へ参らむと思しつるも出で立たれず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
- [ 3 ] 〘 終助詞 〙 ⇒[ 一 ][ 二 ]
も
- 〘 副詞 〙 ( 「ま(今)」の変化したものか )
- ① =もう①
- [初出の実例]「『よひものがあらばおいてこひ』〈略〉『もおいてきたか』」(出典:虎明本狂言・鼻取相撲(室町末‐近世初))
- ② =もう②
- [初出の実例]「やいやいも一番とらふといへ」(出典:狂言記・文相撲(1730))
も【も・モ】
- 〘 名詞 〙 五十音図の第七行第五段(マ行オ段)に置かれ、五十音順で第三十五位のかな。いろは順では第四十五位で、「ひ」のあと、「せ」の前に位置する。現代標準語の発音では、両唇を閉じて発する有声通鼻音 m と母音 o との結合した音節 mo にあたる。「も」の字形は、「毛」の草体から出た。「モ」の字形は同じく「毛」の第一画を省略した形から出た。ローマ字では、mo をあてる。
も
- 〘 助動詞 〙 推量の助動詞「む」にあたる上代東国方言。
- [初出の実例]「人妻とあぜかそを言はむ然らばか隣の衣を借りて着なは毛(モ)」(出典:万葉集(8C後)一四・三四七二)
も
- 〘 名詞 〙 =もがさ(痘瘡)
- [初出の実例]「此年少童もをやむ。亦はいなすりをやみ候。大概はつるる也」(出典:勝山記‐大永三年(1523))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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も
五十音図第7行第5段の仮名で、平仮名の「も」は「毛」の草体から、片仮名の「モ」は「毛」の第2画以後からできたものである。万葉仮名では「毛、母、物、方、茂、文、目、望(以上音仮名)、藻、哭、喪、裳(以上訓仮名)」などが使われたが、『古事記』には甲(=毛)、乙(=母)の区別がみられる。ほかに草仮名としては「
(毛)」「
(裳)」「
(母)」「
(茂)」などがある。
音韻的には/mo/で、両唇を閉じた唇内鼻音の[m]を子音にもつが「ともしい―とぼしい(乏)」「ひも―ひぼ(紐)」などのように語によっては[b]と子音交替する場合もある。上代(古事記)では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。
[上野和昭]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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