(読み)モ

デジタル大辞泉の解説

も[五十音]

五十音図マ行の第5音。両唇鼻音の有声子音[m]と母音[o]とから成る音節。[mo]
平仮名「も」は「毛」の草体から。片仮名「モ」は「毛」の末3画から。

も[副]

[副]
もう3」に同じ。さらに。いま。「少し待とう」「一ついかがですか」
もう1」に同じ。もはや。
「東京へは、―二十年も出ん」〈漱石草枕

も[助動]

[助動][○|○|も|も|○|○]《上代東国方言》活用語の未然形に付く。推量の助動詞「」に同じ。
「上野(かみつけの)佐野田の苗の群苗に事は定めつ今はいかにせ」〈・三四一八〉

も[係助・接助・終助]

[係助]種々の語に付く。
ある事柄を挙げ、同様の事柄が他にある意を表す。…もまた。「国語好きだ」「ぼく知らない」
「み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜(こよひ)―我(あ)がひとり寝む」〈・七四〉
同類の事柄を並列・列挙する意を表す。「木枯れる」「右わからない」
「銀(しろかね)―金(くがね)―玉―何せむに優(まさ)れる宝子にしかめやも」〈・八〇三〉
全面的であることを表す。
㋐不定称の指示語に付き、全面的否定、または全面的肯定を表す。「疑わしいことは何ない」「どこいっぱいだ」「だれが知っている」
「何―何―、小さきものは皆うつくし」〈・一五一〉
㋑動詞の連用形や動作性名詞に付き、打消しの語と呼応して、強い否定の意を表す。「思いよらぬ話」「返事しない」
おおよその程度を表す。…ぐらい。…ほど。「一週間あればできる」「今なら一万円しようかね」
驚き・感動の意を表す。「この本、三千円するんだって」
「限りなく遠く―来にけるかなとわびあへるに」〈伊勢・九〉
ある事柄を示し、その中のある一部分に限定する意を表す。…といっても。…のうちの。「中世鎌倉のころ」「東京西のはずれ」→もこそもぞもや
[接助]形容詞・形容詞型活用語の連用形、動詞・動詞型活用語の連体形に付く。逆接の意を表す。…とも。…ても。…けれども。「見たく見られない」「努力する報われなかった」
「いつしかと涼しき程待ち出(い)でたる―、なほ、はればれしからぬは、見苦しきわざかな」〈・宿木〉
「身一つ、からうじて逃るる―、資財を取り出(い)づるに及ばず」〈方丈記
[終助]文末で、活用語の終止形、助詞、接尾語「く」に付く。感動・詠嘆を表す。…ことよ。…なあ。→かもぞもはもやも
「春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影にうぐひす鳴く―」〈・四二九〇〉
[補説]主に上代の用法で、その後は「かな」に代わった。係助詞の終助詞的用法ともいう。

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大辞林 第三版の解説

五十音図マ行第五段の仮名。両唇鼻音の有声子音と後舌の半狭母音とから成る音節。
平仮名「も」は「毛」の草体。片仮名「モ」は「毛」の末三画。 〔奈良時代、古事記では、上代特殊仮名遣いで甲乙二類の別があり、古くは発音上区別があったとされる〕

( 副 )
「もう」のくだけた言い方。さらに。もっと。 「 -ひとつどうぞ」
もはや。もう。 「いや、-往にまらする/狂言・痩松」

( 助動 ) ( ○ ・ ○ ・も ・も ・ ○ ・ ○ )
〔上代東国方言〕
活用語の未然形に付く。推量の助動詞「」に同じ。 「人妻とあぜかそを言はむ然しからばか隣の衣きぬを借りて着なは/万葉集 3472」 「我が門かどの片山椿まこと汝なれ我が手触れなな地つちに落ちかも/万葉集 4418

( 係助 )
種々の語句に接続する。
類似した事物を幾つか取り出し並べて提示する。「…も…も」の形をとることが多い。 「血-涙-ない男」 「野に-山に-春がきた」 「世界の男、あてなる-いやしき-、いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがなと、音に聞きめでて惑ふ/竹取」
他にも類似の事物が存在することを言外にほのめかす形で、ある事物を提示する。 「英語-ろくにできないくせに」 「君のこと-頼んでおいた」 「心なき身に-あはれは知られけり鴫しぎ立つ沢の秋の夕暮れ/山家
不定を表す言葉に付いて、全面肯定・全面否定を表す。 「何-知らない」 「だれ-が知っていること」 「なに-あらむもの給へ/落窪 1
極端な事物を提示し、強調する。…さえも。 「聞いたこと-ない話」 「太っ腹の社長-、今度はまいったようだ」
動詞の連用形や動作性名詞に付いて、下に否定の語を伴い、打ち消しの意を強めて表す。 「ふりむき-しない」 「いちべつ-くれない」
詠嘆・感動の意を表す。 「書き-書いたり、一日五千枚」 「こう-暑くてはやりきれない」 「限りなく遠く-来にけるかな/伊勢 9
係助詞「こそ」「ぞ」「や」「か」などを伴って用いられる。 → もこそ(連語)もぞ(連語)もや(連語)もか(連語)
( 接助 )
形容詞連用形に接続する。ある動作・作用や状態を述べる時、その量や程度について極端な場合あるいは限界となる場合を想定するのに用いられる。…とも。…ても。 「おそく-本年中には完成するだろう」
活用語の連体形に接続して、逆接の確定条件を表す。…けれども。…ても。 「心ひとつにいとど物思はしさ添ひて内裏へ参らむと思しつる-、出で立たれず/源氏 橋姫
( 終助 )
文末に付いて、詠嘆の意を表す。体言を受ける場合、他の係助詞が上接して「かも」「やも」「ぞも」「はも」などの形をとる。 → かも(連語)やも(連語)ぞも(連語)はも(連語) 「春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影にうぐひす鳴く-/万葉集 4290」 「恋せじとみたらし河にせしみそぎ神はうけずぞなりにけらし-/古今 恋一

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


五十音図第7行第5段の仮名で、平仮名の「も」は「毛」の草体から、片仮名の「モ」は「毛」の第2画以後からできたものである。万葉仮名では「毛、母、物、方、茂、文、目、望(以上音仮名)、藻、哭、喪、裳(以上訓仮名)」などが使われたが、『古事記』には甲(=毛)、乙(=母)の区別がみられる。ほかに草仮名としては「(毛)」「(裳)」「(母)」「(茂)」などがある。
 音韻的には/mo/で、両唇を閉じた唇内鼻音の[m]を子音にもつが「ともしい―とぼしい(乏)」「ひも―ひぼ(紐)」などのように語によっては[b]と子音交替する場合もある。上代(古事記)では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。[上野和昭]

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精選版 日本国語大辞典の解説

※勝山記‐大永三年(1523)「此年少童もをやむ。亦はいなすりをやみ候。大概はつるる也」

〘副〙 (「ま(今)」の変化したものか)
① =もう
※虎明本狂言・鼻取相撲(室町末‐近世初)「『よひものがあらばおいてこひ』〈略〉『もおいてきたか』」
② =もう
狂言記文相撲(1730)「やいやいも一番とらふといへ」

[1] 〘係助〙
[一] 文中用法。
① 文中の種々の連用語を受ける。
(イ) 同類のものが他にあることを前提として包括的に主題を提示する。従って多くの場合、類例が暗示されたり、同類暗示のもとに一例が提示されたりする。類例が明示されれば並列となる。単文の場合は活用語を終止形で結ぶ。
※古事記(712)上・歌謡「太刀が緒(モ) いまだ解かずて 襲(おすひ)(モ) いまだ解かねば」
(ロ) 主題を詠嘆的に提示する。
※古事記(712)上・歌謡「沖つ鳥 胸見る時 羽叩ぎ(モ) これはふさはず」
(ハ) 願望の対象を感動的に提示する。
※書紀(720)雄略一二年一〇月・歌謡「我が命(モ) 長くもがと 言ひし工匠はや」
② 同じ語の間にはさみ、強調の意を表わす。
(イ) 「AもA(だ)」の形で同じ語(名詞または形容動詞の語幹)を受けて、一般的なAではなく特別な、程度の甚だしいAである、ということを表わす。→折りも折り
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)三「下へ来て居さっしゃる客は、田舎田舎、箸の持様も知らぬ、野暮助のたわいなしでござりまする」
(ロ) 「AもAだが(なら)BもBだ」の形で人を表わす名詞を受けて、AもBも共に常軌を逸していてあきれるほどである、の意を表わす。→何方(どっち)もどっち
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一〇「是を二十五円で売りつけられる阿爺(おとっさん)阿爺だが、それを又二階迄、えっちらおっちら担ぎ上げる御前御前だね」
(ハ) 「…も…たり」(「たり」は完了の助動詞)などの形で、同じ動詞の連用形を受けて、その動作が激しく、あるいは長時間にわたって行なわれた、ということを、驚きの気持を込めて言う。→揃いも揃う
※史記抄(1477)三「をほへをほへたり、云云たりそ」
③ 対照的な二つの語に添えて強調の意を表わす。
(イ) 「…も…ないもない」の形で同じ語(動詞・形容詞)を受け、…するか(…であるか)どうかを論ずるまでもない、ということを表わす。
※金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉続「容す容さん有るものか」
(ロ) 「AもBもない」の形で対照的な意味の二つの語を並べて、AとBの区別をする場面・状況ではない、という意を表わす。「ここでは先輩後輩ない。みんな平等なんだ」
※桜桃(1948)〈太宰治〉「いや、何もお前、医学的な話ぢゃないか。上品下品無い」
(ハ) 「Aもへったくれ(くそ)もない」「Aも何もない」などの形で、この状況ではAなぞ本来の意味・価値をもたない、また、Aが存在しない、必要ない、ということを強めて言う。
※浄瑠璃・小野道風青柳硯(1754)四「イヤ置け置け、断(ことはり)へったくれ入らぬ」
④ 詠嘆を表わし、間投助詞的に用いられる。
(イ) 間投助詞に上接して軽い詠嘆を表わす。
※古事記(712)下・歌謡「置目(モ)や淡海の置目明日よりはみ山隠りて見えずかもあらむ」
(ロ) 形容詞の連用形・副詞・数詞・接続助詞「て」などを受け、また複合動詞の中間に介入して詠嘆的強調を表わす。
※古事記(712)上・歌謡「うれたく(モ) 鳴くなる鳥か」
⑤ 係助詞に上接して副助詞的に用いられる。→もこそもぞもやもか
[二] 文末用法。文末の終止形(文中に係助詞がある時はそれに応ずる活用形)およびク語法を受けて詠嘆を表わす。体言を受ける場合は同じく詠嘆を表わす他の係助詞が上接して「かも」「はも」「そも」などの形となる。終助詞とする説もある。
※古事記(712)中・歌謡「はしけやし 我家(わぎへ)の方よ 雲居立ち来(モ)
[2] 〘接助〙 活用語の連体形を受け、また「ても」の形で確定の逆態接続を表現する。
※源氏(1001‐14頃)橋姫「心ひとつにいとど物思はしさ添ひて内裏へ参らむと思しつる出で立たれず」
[3] 〘終助〙 ⇒(一)(二)

〘助動〙 推量の助動詞「む」にあたる上代東国方言。
※万葉(8C後)一四・三四七二「人妻とあぜかそを言はむ然らばか隣の衣を借りて着なは毛(モ)

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