アラゴン(Louis-Marie-Antoine-Alfred Aragon)(読み)あらごん(英語表記)Louis-Marie-Antoine-Alfred Aragon

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アラゴン(Louis-Marie-Antoine-Alfred Aragon)
あらごん
Louis-Marie-Antoine-Alfred Aragon
(1897―1982)

フランスの詩人小説家。10月3日、パリで非嫡出子として出生。早熟な文学少年として出発し、9歳までに60編もの小説らしきものを書く。医学部在学中の1917年、第一次世界大戦に動員される。同年軍医学校でA・ブルトンを知り、またP・スーポーとも友人になり、1919年に3人で雑誌『文学』を創刊。この雑誌はパリにおけるダダ運動の主要舞台となる。1920年、第一詩集『祝火』を、また最初の小説『アニセまたはパノラマ』を出版。やがて1924年に始まるシュルレアリスムのなかで、運動の主唱者ブルトンとともに中心メンバーとして活躍、小説『パリの田舎(いなか)者』(1926)、評論『文体論』(1928)などの傑作を書く。だが、若年のころから抱き続けたリアリズム小説への願望と、小説を否定するシュルレアリスムの教義との矛盾に悩み、シュルレアリストの友人に隠れて書いてきた長編小説の原稿を焼却失恋も手伝って1928年9月、自殺を企てる。同年秋、ソ連の詩人マヤコフスキーに会い、またその愛人の妹エルザ・トリオレを知るに及んで苦境を脱し、エルザとの愛の生活に入る。1930年秋、ソ連のハリコフ(現、ウクライナハルキウ)で催された第2回国際革命作家会議にサドゥールと出席。アラゴンはすでに1927年にフランス共産党に入党していたが、この最初のソ連訪問で社会主義建設の実態を見聞し魅了された。

 帰国後シュルレアリスムを離れ、コミュニスト作家として再出発。かねての願望であるリアリズム小説を次々に発表、全5部からなる連作『現実世界』――『バーゼルの鐘』(1934)、『お屋敷町』(1936)、『屋上席の旅行者たち』(1942)、『オーレリアン』(1944)、『レ・コミュニスト』(1949~1951)を完成。またこの連作執筆中の第二次世界大戦下では、『断腸詩集』(1941)、『エルザの瞳(ひとみ)』(1942)、『フランスの起床ラッパ』(1945)などの優れた詩集を発表し、レジスタンス運動に挺身(ていしん)した。戦後も歴史小説『聖週間』(1958)、長詩『エルザ狂い』(1963)などの傑作を発表。また晩年に至って、自己の総決算ともいうべき内容の小説群『死刑執行』(1965)、『ブランシュまたは忘却』(1967)、『劇場/小説』(1974)などの長編を発表し、1982年12月24日の死の直前まで、その旺盛(おうせい)な文筆活動をやめなかった。

[稲田三吉]

『関義訳『現実世界』全5巻(1956・新潮社)』『橋本一明訳『断腸詩集』(1957・新潮社)』『大島博光訳『アラゴン詩集』(1973・立風書房)』

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