オレンジ川(読み)オレンジがわ(その他表記)Orange River

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オレンジ川」の意味・わかりやすい解説

オレンジ川
オレンジがわ
Orange River

アフリカ南部を流れる大河川。アフリカーンス語では Oranjerivier。レソト北東部のドラケンスベルク山脈中に源を発し,レソト,南アフリカ共和国内をほぼ西流,下流部はナミビア南アフリカの境界を形成して,アレクサンダー湾北部で大西洋に流入する。全長約 2090km。支流バール川を合わせた流域面積は少なくとも約 85万5000km2に上る。中流部は南アフリカの自由州東ケープ州北ケープ州の両州との自然境界に利用され,カレドン川,バール川などの大支流も,その上流でそれぞれレソトと自由州,自由州とムプマランガ州ハウテン州北西州の 3州との州境をなしている。中流部では,硬い基盤岩の中をポールトと呼ばれる潜行性のギャップを形成しつつ流れるが,上流部に比較して傾斜はゆるやかになる。海岸までの最後の 100kmを除いては,300~1000mにも達する深い峡谷を形成。東経 20°付近にアウフラビス瀑布がある。急流が多いため,河川交通にはほとんど利用されない。流量は 3月が最大,8月が最小となり,その差は 10倍にも達する。中流部のポールトを形成している部分に大きなダムがあり,アピントン付近の灌漑に利用される。南アフリカ政府は 1962年から,ダムや運河の建設を含む多目的開発計画を推進している。1760年ゾウ狩りの J.クートセーが初めて渡河,以後 H.ホップ,1777年には R.J.ゴルドンオランダ東インド会社の依頼により中流に達し,オレンジ(オランニェ)公にちなんで命名,その後も L.W.ペーターソンらと下流,河口部を探検した。源流は 1836年フランス人宣教師によって確認された。なお,河口付近にはダイヤモンド鉱床が広く分布する。

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改訂新版 世界大百科事典 「オレンジ川」の意味・わかりやすい解説

オレンジ[川]
Orange River

アフリカ南部の大河。レソトの北東境部を水源とし,バスト高地の水を集めて以後,西へほぼ南アフリカ共和国を横断し,下流ではナミビアとの境界をなしながら大西洋に注ぐ。アフリカーンス語ではオラニェOranje川と呼ぶ。全長約2100km(アフリカ第6位)。流域面積102万km2。支流には,最大のバール川をはじめ,右岸にカレドン川,左岸にシーカウ川,ブラク川などがある。プリースカ以下では支流は間欠河川となり,ハートビース川,モロポ川,グレート・フィッシュ川などを加える。水に恵まれない内陸高原部にあってその水資源としての価値は大きいが,流量に年による変動がきわめて大きいのが欠点である。年流量はホープタウン付近で14億~194億t,バール川を合わせた後のプリースカで19億~302億tと大きいばらつきを記録している。高水位期は11~4月で,年量の約80%が集中する。上流部に人口集中域をもつバール川の開発は早くから進められてきたが,人口の散在する農牧地を流れる本流沿いの水利用は遅れている。計画としてはレソト領内にオックスボウ・ダムを建設し,北方ヨハネスバーグを中心とするウィットウォーターズランド鉱工業地域に豊富な電力と水を送ることが考えられている。なお,中流と下流の境となるオーグラビス滝Aughrabies Fallsは,崖線約230m,落差145m(直下の急流部を加えれば185m)と世界一級のスケールで知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オレンジ川」の意味・わかりやすい解説

オレンジ川
おれんじがわ
Orange River

南アフリカ共和国を横断する同国最大の川。全長2092キロメートル、アフリカ大陸で第5位の長さをもち、流域面積は102万平方キロメートルに及び、日本の面積の2.7倍もある。南アフリカ共和国の言語アフリカーンス語ではOranjerivierと綴(つづ)る。ドラケンスベルク山脈(ドラケンスバーグ山脈)の一部、レソトの北東端の標高3000メートルを超えるバスト高地に発し、南西流する。その後レソトの北部国境を流下してきたカレドンCaledon川と合流し、北西流に転ずる。ダグラスの西方15キロメートルで一大支流バールVaal川と合流してオーグラビースAughrabies滝に達する。この滝は河口から560キロメートルにあり、先住民コイ人のことばで「大音響の場所」を意味する。落差が146メートルあり、その下の急流部を入れると比高186メートルに達する。この滝から35キロメートル下流以後はナミビアとの国境をなしながら西流し、大西洋岸のアレクサンダー・ベイ付近で河口となる。流域内の土壌侵食が活発で、半年以上にわたって河口が土砂で閉ざされるという。流量は本流の上流部のホープ・タウン付近で年平均76億トンあり、季節変化が大きく、その79%が11月~4月に集中する。さらに下流のバール川が合流した後のプリースカでは年平均流量が109億トンで、やはり季節変化が大きく、その83%が11月~4月に集中する。なおバール川流域を中心に、ダム建設などの水資源開発が早くから実施されている。

[堀 信行]

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