カルボキシル基を2個もつ酸性アミノ酸の一つ。1866年リットハウゼンK.H.L.Ritthausenがコムギのグルテンから発見した。命名はグルテンにちなむ。L-,D-2種の異性体がある。L-グルタミン酸はほとんどのタンパク質中に存在し,このナトリウム塩(グルタミン酸ナトリウム)はコンブの旨味の本体で調味料として賞用される。カルボキシル基の一つがナトリウム塩となっているもので,MSG(monosodium glutamate)とも呼ばれる。この旨味の本体は,1908年池田菊苗によって発見され,同年早くも鈴木三郎助・忠治兄弟によって調味料として商品化(商品名〈味の素〉)され発売された。製法ははじめはコムギグルテンを加水分解して得ていたが,現在は微生物による発酵法で生産されている。用いる菌はコリネバクテリウム・グルタミカムCorynebacterium glutamicumで,デンプンの糖化液,糖蜜などを主原料とし,これにアンモニア,尿素などの窒素源を加える。100gの糖から30~50g得られる。この発酵による生産は,後に他の多くのアミノ酸における発酵生産の原型となった。またグルタミン酸ナトリウムは,アミノカプロラクタムからの合成によっても製造できる。
→アミノ酸 →化学調味料
執筆者:田島 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
2-aminoglutaric acid.C5H9NO4(147.13).HOOCCH2-CH2CH(NH2)COOH.略号Glu.酸性α-アミノ酸の一つ.タンパク質中に構成アミノ酸として広く分布している.また,遊離の状態でも動物,植物に広く分布している.グルテン,カゼイン,大豆などの加水分解物や甜(てん)菜糖廃液より塩酸塩として分離する.発酵法によってもつくられる.L-グルタミン酸は斜方晶系.融点247~249 ℃(分解).+31.4°(塩酸).pK1 2.19,pK2 4.25,pK3 9.67.pI3.22.加熱により環化してピロリドンカルボン酸になる.うま味があり,ナトリウム塩は調味料として用いられる.D-グルタミン酸は細菌(Bacillus anthracisなど)の莢(きょう)膜物質に含まれている.うま味はない.DL-グルタミン酸はβ-ホルミルプロビオン酸のストレッカー反応,2-ケトグルタル酸の還元的アミノ化,マロン酸エステル法などによって合成される.[CAS 56-86-0]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…クエン酸回路(細胞の好気的呼吸)の一員であり,ミトコンドリアに局在するイソクエン酸デヒドロゲナーゼによってイソクエン酸が酸化的脱炭酸されることにより生成する。またグルタミン酸とも関係深い代表的α‐ケト酸で,グルタミン酸の酸化的脱アミノ反応によっても生成する。種々のアミノ基転移反応におけるアミノ基受容体(レセプター)として重要な役割を果たす。…
…ところで,化学の発達により,だしやスープに含まれているうま味の本体がわかるようになった。コンブのうま味はグルタミン酸,鰹節のうま味はイノシン酸,貝のうま味はコハク酸である。また鶏がらのうま味はグルタミン酸やイノシン酸などの複合したものである。…
※「グルタミン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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