改訂新版 世界大百科事典 「コガモ」の意味・わかりやすい解説
コガモ (小鴨)
teal
common teal
Anas crecca
カモ目カモ科の鳥。全長約38cm。ユーラシア大陸,北アメリカの北部で繁殖し,冬期は南方へ渡る。日本では少数が繁殖しているが,大部分は冬鳥である。全国に渡来し,数が多い。雄は頭が赤褐色と緑色の模様で,体は灰色に細かい縞模様をもつ。体に平行に白線がある。雌は褐色と黒褐色の模様のじみな色彩である。雌雄とも翼鏡は金属緑色。雄の非繁殖羽は雌に似ている。北アメリカ産のものは別の亜種に属し,アメリカコガモA.c.carolinensisと呼ばれる。雄では水平の白線を欠き,胸脇(きようきよう)に白色の線をもっている。日本には迷鳥として渡来する。
コガモは海上へ出ることは少なく,湖沼,池,河川,湿地など淡水域で見られる。湿地や水辺で種子,穀物や水草の根,芽などを食べている。頭を水中に入れて逆立ちする程度のことはするが,身が危険な場合以外は潜らない。水辺の草むらの中に巣をつくり,1腹8~10個の卵を産む。雄はピリッピリッ,雌はクェークェクェと鳴く。標識調査の結果によれば,日本で越冬するコガモの繁殖地は,サハリン,千島列島,シベリア北東部である。
執筆者:柳沢 紀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報