ドイツの作曲家、音楽理論家。ケルン近郊メードラートの生まれ。ケルン高等音楽学校およびケルン大学で学んだのち、パリでメシアンに師事。1953年からケルン放送局の電子音楽スタジオで働き、63年から73年まで同スタジオの所長を務める。1957~74年ダルムシュタット夏期音楽講座の講師。1963年ライブ・エレクトロニック・ミュージックのためのアンサンブルを創設、68年まで活動した。1971~77年ケルン高等音楽学校の作曲科教授を務める。彼はミュージック・セリエルと電子音楽を出発点として、次々とその創作領域を拡大させ、電子音楽とミュージック・コンクレートとの結合、音楽への空間性の導入、偶然性の導入による開かれた形式、ライブ・エレクトロニック・ミュージック、演奏者の精神状態のみを指示する「直観音楽」などを発展させて、1950~60年代の前衛音楽の指導的存在となった。
おもな作品として、次のものがあげられる。10の楽器のための完全セリエリスムによる『コントラプンクテ』(1953)、声と電子音による『若者たちの歌』(1956)、偶然性を取り入れた『ピアノ曲第11番』(1956)、テンポの新しい概念を導入した室内楽曲『ツァイトマーセ』(1956)、三つの管弦楽による「空間音楽」の試みである『グルッペン』(1957)、音楽に空間概念を導入した、四つの管弦楽と四つの合唱団のための『カレ』(1960)、電子音とピアノ、打楽器のための『コンタクテ』(1960)、ソプラノ、4群の合唱、13の楽器による開かれた形式の『モメンテ』(1964)、ライブ・エレクトロニック・ミュージックの『ミクストゥール』(1964)、「直観音楽」の『七つの日より』(1968)、『来るべき時のために』(1970)、『シュテルンクラング』(1971)など。彼の仕事の集大成といえる連作歌劇『光』(1977~2003)の冒頭部分は、日本の国立劇場の委嘱による『歴年――「光」からの場面』(1977)として東京で初演された。作曲理論に関する論文も多い。
[寺田由美子]
『清水穣訳『シュトックハウゼン音楽論集』(1999・現代思潮社)』▽『Karlheinz Stockhausen, Robin Maconie:Stockhausen on Music;Lectures and Interviews(1990, Marion Boyars)』
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ドイツの作曲家。1947-51年ケルン高等音楽学校で作曲をF.マルタンに学び,ケルン大学で音楽学,哲学を学ぶ。51年ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に参加,ミュジック・セリエルから大きな影響を受け,52-53年にパリでメシアンに師事した。帰国後ケルン電子音楽スタジオで最初の電子音楽《習作Ⅰ》(1953)を制作,電子音楽《若者たちの歌》(1956)は後の電子音楽に大きな影響を与えた。またケージの影響から《ピアノ曲ⅩⅠ》(1956)でヨーロッパ最初の不確定性の音楽を発表,以後ブーレーズと共に,50~60年代の前衛音楽(アバンギャルド)の指導的立場に立った。彼は音の方向性に着目した〈空間音楽〉(《グルッペン》1957),瞬間の音響を重視した〈瞬間形式〉(《モメンテ》1964),テキストから奏者が即興演奏をする〈直観音楽〉(《七つの日より》1968)など前衛音楽の新しい理論を次々に発表し,今日の音楽に多大な影響を与え続けた。71-77年ケルン高等音楽学校教授。
執筆者:佐野 光司
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…C.ウォルフ,M.フェルドマン,E.ブラウンらのケージ一派の作曲家は,サティの音楽,ダダ,シュルレアリスム,禅,易学などから多くの影響を受けながら,〈インデターミナンシー(不確定性)〉〈ハプニング〉〈イベント〉などと称される生きた音楽行為を重視する音楽活動を展開した。ケージ一派の音楽とその思想は,54年10月にドナウエッシンゲン音楽祭でヨーロッパに紹介され,ブーレーズやシュトックハウゼンに衝撃を与えた。ブーレーズは57年のダルムシュタット国際夏期講習会で,〈アレア(ラテン語で賭け,さいころの意)〉と題した論文を発表し,作曲や演奏の次元で部分的に偶然性を利用する〈管理された偶然性〉が重要であることを主張した。…
… 1948年にシェフェールによって創始された現実音を録音テープの上に構成し,モンタージュしていくミュジック・コンクレートの手法による音楽も,一種のコラージュ音楽といえよう。またシュトックハウゼンのテープ音楽《ヒムネン》(1967)では40にちかい国歌をコラージュし,電子音響で変調されていく。この場合,断片の集積ということでは,むしろコンバインド音楽,あるいはアッサンブラージュ音楽と称したほうが,より適切だろう。…
…というのも,当時の前衛音楽の主流は音の4要素を独立したものとして扱い,数理的操作により緻密な構造を構成する方向を目指しており,電子音楽の方法によれば,作曲者の意図する作品を,演奏者の手を経ず直接,完全な形で具体化することができるからである。53年にはこのケルンのスタジオのスタッフとしてシュトックハウゼンが加わり,初期の電子音楽の代表作として高く評価されている《習作I》(1953),《習作II》(1954),《若者たちの歌》(1956)などを制作したが,最後の作品では彼は少年の〈声〉をも素材に持ち込み,電子音楽に新しい可能性を開拓した。しかし一方では,このことはパリでシェフェールが48年以来行ってきた具体音を素材とするミュジック・コンクレートとの境界をあいまいにする結果ともなった。…
※「シュトックハウゼン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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