西アフリカのニジェール川大湾曲部西部(現,マリ共和国)に,おそらく13世紀末ころから発達した交易都市。人口約7000。サハラ砂漠をこえて北アフリカと,ニジェール川上流地方および南方のサバンナや森林地帯との交易の中継地として繁栄した。ほぼ同時代にやはり交易都市として約350km北北東に発達したトンブクトゥと対をなして相補う性格をもっていた。すなわち,トンブクトゥはサハラ砂漠の南縁とニジェール川の北縁との接点に位置し,ラクダと舟という,当時のこの地方での商品を大量輸送する二つの主要手段の中継地だったのに対し,ニジェール川の中州に形成された都市ジェンネは,ニジェール川上流地方(金の主産地)やニジェール川南方のサバンナや森林地帯の黒人の国とトンブクトゥとを結ぶ舟の輸送の中継地,およびトンブクトゥへの食料をはじめとする生活資材の供給地としての役割を果たした。トンブクトゥがラクダの遊牧民トゥアレグ族の宿営地から発達した都市であるのに対し,ジェンネはもと漁労民ボゾ族の集落だった。ジェンネは最盛期には1万を超す人口を擁していたと思われる。北アフリカのイスラム教徒の商人も多数来住した。14~16世紀のマリ帝国,ソンガイ帝国の時代に栄えたが,イスラムの支配する商業都市として,これら両帝国の上位権力に対してはかなりの自立性を保ち続けた。煉り土造りの壮大なモスクが有名である。
執筆者:川田 順造
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西アフリカ,マリ共和国内ニジェール川の中州に位置する都市。13世紀末頃から繁栄したマリ帝国,続く15世紀後半以降のソンガイ帝国期における重要な交易都市。北からの岩塩,南からの金,奴隷などが取引された。土煉瓦づくりのモスクは有名。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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