ステンレス鋼(読み)ステンレスコウ(英語表記)stainless steel

翻訳|stainless steel

デジタル大辞泉 「ステンレス鋼」の意味・読み・例文・類語

ステンレス‐こう〔‐カウ〕【ステンレス鋼】

耐食性にすぐれる合金鋼総称。鉄‐クロム系と鉄‐ニッケル‐クロム系とに大別され、クロム18パーセント・ニッケル8パーセントを含む18‐8ステンレスが最も代表的。不銹鋼ふしゅうこう
[類語]くろがね鉄材鉄分鋼鉄鉄鋼こうはがねスチールステンレス鋳鉄銑鉄屑鉄砂鉄

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精選版 日本国語大辞典 「ステンレス鋼」の意味・読み・例文・類語

ステンレス‐こう‥カウ【ステンレス鋼】

  1. 〘 名詞 〙ステンレススチール

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改訂新版 世界大百科事典 「ステンレス鋼」の意味・わかりやすい解説

ステンレス鋼 (ステンレスこう)
stainless steel

鋼は加工性,溶接性,機械的性質などに優れた性質をもつが,大気中や水溶液中でさびやすいのが欠点である。これを改善するためクロムなどの合金元素を添加した鋼をステンレス鋼という。不銹(ふしゆう)鋼とも呼ばれる。一般的には普通炭素鋼などとくらべ耐食性は優れているが,まったくさびないという意味ではなく,ある環境におかれた場合には,局部的な腐食,たとえば孔食,すきま腐食,粒界腐食応力腐食割れなどを起こす。ステンレス鋼の耐食性が優れているのは,その表面に形成されている不働態皮膜と呼ばれる酸化膜のためである。不働態皮膜が表面に形成されると,素地の鉄を保護し,それ以上さびるのを防ぐ働きをする。自然環境において鋼が十分な耐食性を得るにはクロムが12%(重量)以上必要である。クロムと同時にニッケル,モリブデンなどを合金化すると,耐食性がさらに向上し,化学工業薬品などの特殊環境で使えるようになる。

 ステンレス鋼は,そのおもな金属組織,組成によりマルテンサイト系,フェライト系,オーステナイト系,オーステナイト-フェライト2相系等に分類される。

 (1)マルテンサイト系ステンレス鋼 クロム12~18%,炭素0.10~1.20%を含み,焼入れ・焼戻ししてマルテンサイトあるいはマルテンサイト+クロム炭化物の組織として使用する。この系のステンレス鋼の一種に析出硬化型ステンレス鋼があり,これはNi3Ti,Ni3Alなどの析出硬化により強度を高めた強力ステンレス鋼である。非常に硬く,強いので,耐食性と同時に硬さ,耐摩耗性の必要な部材,たとえば刃物,外科用器具,工具などに使用する。(2)フェライト系ステンレス鋼 クロム12~27%,炭素0.20%以下を含む。大きく分けると13クロム鋼,18クロム鋼,25クロム鋼になり,最近では,製鋼技術の発達により応力腐食割れ等を起こしにくい鋼種として,炭素量を減らしモリブデンを約2%添加した高純度フェライト系ステンレス鋼がつくられている。焼入硬化性がほとんどなく,耐食性も比較的よく,ニッケルをほとんど含まないため,オーステナイト系よりも安価である。食器等の家庭用品,建材,化学工業用装置等に使用される。(3)オーステナイト系ステンレス鋼 クロム13~30%,ニッケル6~20%,炭素0.10%以下を含む。代表的なものは18-8ステンレス鋼と呼ばれ,低炭素で,クロム18%,ニッケル8%を含む鋼である。耐食性をさらによくするために,モリブデンを1~3%程度添加した鋼もよく使用される。ステンレス鋼の需要の大部分はこの系のステンレス鋼であり,耐食性とともに高温での耐酸化性も優れているため,家庭用品,建材のほか化学工業・石油工業用装置,原子炉関係などの用途がある。(4)オーステナイト-フェライト2相系ステンレス鋼 クロム18~30%,ニッケル6~12%,炭素0.10%以下を含み,熱処理などによりオーステナイトとフェライトをほぼ半々にし,それぞれの結晶粒を細かく調整した,耐食性,加工性のよい,強度の大きいステンレス鋼である。石油工業,化学工業,耐海水用装置などに用いられている。
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化学辞典 第2版 「ステンレス鋼」の解説

ステンレス鋼
ステンレスコウ
stainless steel

鉄に12質量% 以上のCrを添加し,酸化性の環境下で不動態化しやすくして,耐食性を飛躍的に改善した一群の合金鋼.12質量% 以上のCrだけをおもな合金元素とする高Crステンレス鋼と,17質量% 以上のCrとともに7質量% 以上のNiを組み合わせた高Cr-Niステンレス鋼とに大別される.その組織から,前者は焼入れでマルテンサイトにすることのできる(1)マルテンサイト系ステンレス鋼(C 0.1質量% 以上,Cr 12~14質量%)と,つねにフェライト組織である(2)フェライト系ステンレス鋼(C 0.1質量% 以下,Cr 17質量% 以上)に分けられる.高Cr-Ni鋼は(3)オーステナイト系ステンレス鋼とよばれる.耐食性は(3)がもっともすぐれ,(1)がもっとも劣る.(1)はいわゆる13 Crステンレス鋼で,C量の多いものはマルテンサイト組織のまま刃物類に多用され,C量が0.1~0.2質量% の鋼は700 ℃ 付近に焼戻して強靭性を必要とする構造材や蒸気タービンの羽根などの耐熱鋼として用いられる.(2)の代表的なものは18 Crステンレスで,Cr量が増すほど耐食性は向上する.焼入れ硬化性はないかわりに加工性がよく,薄い板や細い管にすることができる.(3)はステンレス鋼全体の2/3以上を占め,18-8ステンレス(18質量% Cr-8質量% Ni)がその代表であるが,粒界腐食を防ぐためNbやTiを添加したもの,耐酸化性改善のためCrとNiを増やしたもの,耐酸性のためにMoやCuを添加したものなど,要求される性質に応じて多くの改良鋼種が開発され,使用されている.以上のほかに,析出硬化を利用して耐食性をあまり損なわずに強度を2~3倍に増加させ,200 kg mm-2 に達する引張強さを与えたPHステンレスもある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「ステンレス鋼」の意味・わかりやすい解説

ステンレス鋼【ステンレスこう】

水中や大気中で容易にはさびず,酸その他の化学薬品に対してすぐれた耐食性をもつ合金鋼。不銹(ふしゅう)鋼ともいう。1913年イギリスで開発された。その耐食性は表面に形成されるごく薄い酸化膜がそれ以上のさびの進行を止めることによる。組織と組成から1.マルテンサイト系,2.フェライト系,3.オーステナイト系,4.オーステナイト‐フェライト2相系に分かれる。1.はクロムを12〜18%のほか炭素を0.10〜1.20%含み,焼入硬化が可能で耐食性と強靭(きようじん)性を合わせもつ。2.は炭素含有量の低い(0.20%以下)高クロム鋼で焼入硬化性はなく,柔軟性をもつ。1.2.の代表的な鋼種はクロムを13%前後含む13クロム鋼である。3.はオーステナイト組織になりやすいクロム13〜30%,ニッケル6〜20%,炭素0.10%以下の鋼で,耐食性に特にすぐれる。クロム18%,ニッケル8%の18-8ステンレス鋼が代表的。4.はクロム18〜30%,ニッケル6〜12%,炭素0.10%以下の鋼で,熱処理などで2相をほぼ半分にした耐食・加工性・高強度のもの。これらは建築,家庭用品,刃物,工具,化学装置,機械部品などに広く使用される。また特殊なステンレス鋼として,クロム‐ニッケル系のものにアルミニウム,銅,モリブデン,ニオブ,ホウ素などの1〜数種を少量添加した析出硬化形のものがある。
→関連項目生体適合材料耐食合金

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知恵蔵 「ステンレス鋼」の解説

ステンレス鋼

さびない鋼を意味する。クロムを主体にニッケルなどを添加した耐食性合金鋼の一種。クロムは表面に不動態化被膜(厚さ1〜5μm〈マイクロメートル〉の水和酸化物の膜)を作り、これが保護膜となって腐食を抑える。13%クロム鋼が代表例。オーステナイト系ステンレス鋼は、ニッケルや微量のモリブデン、銅を添加したもので、非酸化性環境や塩素イオンの存在下でも、極端な腐食環境を除き耐食性を持つ。特にクロム18%、ニッケル8%を含む18‐8ステンレス鋼は耐食性、展延性、強度とも優れ、家庭用品から化学プラントまで用途が広い。

(徳田昌則 東北大学名誉教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

栄養・生化学辞典 「ステンレス鋼」の解説

ステンレス鋼

 鉄にクロム,ニッケルなどを加えて腐食しにくくした鋼.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のステンレス鋼の言及

【工具鋼】より

… 手工具に用いられる鋼(刃物鋼)は炭素量1%前後の過共析鋼と呼ばれる炭素鋼が主である。包丁,はさみ,かみそりなどには,しばしば,13クロムステンレス鋼や,これにモリブデンを添加した高級刃物用ステンレス鋼が使用される。包丁やはさみは切れ味が重要であり,そのために研ぐことが必要である。…

【耐食合金】より

…高温の腐食環境に対する耐食合金は一般に耐熱合金に含めるので,ここでは湿食に対する耐食合金について述べる。
[鉄系合金]
 鉄系耐食合金としては低合金鋼,ステンレス鋼,耐食鋳鉄,アモルファス材料などがある。低合金鋼は腐食を止めることはできないが,少量の添加元素によってさび生成の機構が変化することによって耐食性を獲得する。…

※「ステンレス鋼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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