スマートグリッド(読み)スマート グリッド

  • smart grid

ASCII.jpデジタル用語辞典の解説

ネットワークに接続されたコンピューター資源を有効利用するグリッド・コンピューティングのように、家庭や企業などを結んだ電力網で電力を効率よく供給する次世代エネルギー供給網。現在の電力供給は、発電所から家庭や企業への一方向の電力供給だが、スマートグリッドでは、双方向電気を流せるようにして、家庭や企業が太陽光パネルなどでクリーンなエネルギーを発電し、余った電力は不足している地域に供給できる。また、ITの技術と組み合わせることで、電力供給のバランスを調整し、真夏の消費電力を抑制したり、利用の少ない時期は、発電所での無駄な電力生産を抑えられるなど、CO2の削減にも効果が期待されている。

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知恵蔵の解説

ネットワークを活用した未来的な電力供給システム全般を指し示す語。次世代送電網、または次世代電力網などといわれ、概念としてもまだ生まれたばかりの言葉であり、世界的に通用する厳密な定義はまだなされていない。このため、国や地域別に微妙に違ったスマートグリッドシステムが提案され、実用化に向けた試験が行われている。2010年には東京電力が実証実験を開始した。また、統一規格制定の動きも、日米などの主要国2国間で始まっている。
多くの国においては、スマートグリッドのシステムは各家庭にIT技術を駆使した「スマートメーター」と呼ばれる電力メーターを配置することを基本とする。電力会社は、ここから得られたデータを分析し、より無駄のない形で電力を供給できるようにする。また、メーターだけではなく家庭用エアコンなどをコントロールし、電力を無駄に使わないようにすることも構想されている。
スマートメーターからの情報収集とデータ分析には、強力なネットワークと情報解析技術が不可欠となる。このため単に電力会社のインフラ整備問題にとどまらず、各国のIT企業をも巻き込んだ大規模な市場が成立するものと期待されている。
なお、アメリカなどでは既存の発電方式により得られた電力の供給だけではなく、風力発電太陽光発電のような、不安定な供給源もリアルタイムで監視し、有効に活用されるシステムを構築することもスマートグリッドの範囲に入るとされている。
ただし、スマートメーターとそれらを管理するネットワークインフラを構築するには膨大な費用がかかり、果たして電力供給システムをスマート化しても劇的なコストダウンが図れるかどうかは未知数である。論者の中には、成長にかげりが見えてきたIT業界が事態の打開を図るために出した構想であり、一種のバブルであると指摘するものもいる。

(高安正明  ITライター / 2010年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

「賢い送電網」の意味で、情報通信技術を使って電力を需要と供給の両面から制御する仕組み。天候によって発電量が変わる太陽光や風力発電の不安定さを補う狙いがある。

(2012-02-24 朝日新聞 夕刊 2社会)

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デジタル大辞泉の解説

情報通信技術を活用することによって、電力の需要と供給を常時最適化する、次世代の電力網。水力火力など既存の発電施設と風力・太陽光発電など新エネルギーによる分散型電源を制御し、効率・品質・信頼性の高い電力供給システムの構築を目指す。地球温暖化対策の一つとして各国で取り組みが進められている。
[補説]2009年に米国大統領オバマグリーンニューディール政策の一つとして掲げ、注目を集めた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ネットワーク自体に電力の通過と供給を監視する手段が備わった,安定的な統合型電子制御システム。従来の送電網と並行して電力供給に使用される。送電網とは,電線変圧器変電所,および需要家と発電所を結ぶ配電機器からなるネットワークである。発電所から需要家へ一方向に電力が供給される従来の「賢くない送電網」に対して,「賢い(スマートな)送電網」は,システム全体の効率性,安全性,信頼性を高めるセンサ,通信ネットワーク,制御システム,コンピュータなどを備えている。停電など不測の事態が起こると,回路を再構成することで影響を最小限に抑えることができる。また,電力会社が需給の変動に応じて電力料金を変更したり,消費者が料金の変動に合わせて使用量を調整したりできるようになる。将来的には,風力発電太陽光発電を電力供給網に統合したり,プラグイン型電気自動車 PEVsの充電システムを接続したりすることも期待される。相互運用性はスマートグリッドの大きな強みの一つだが,攻撃を受けやすくなるという弱みもある。送電網に加わる構成要素が増えれば,攻撃の標的も増え,悪質なコードやシステム侵入,DoS攻撃などサイバーテロの脅威も急激に増大する。2015年12月には,サイバー攻撃を原因とする大規模な停電がウクライナで発生し,22万5000人に影響が及んだ。これをきっかけに送電網の脆弱性が世界的な問題となり,スマートグリッドの本格的な展開と導入を開始する前に,サイバー攻撃や物理的攻撃に対するセキュリティを確保する必要性が問われた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

従来からの集中型電源と送電系統との一体運用に加え、情報通信技術の活用により、太陽光発電などの分散型電源や需要家の情報を統合・活用した、高効率、高品質、高信頼度の電力供給システムの送配電網の呼称。次世代電力網ともよばれる。

 スマートグリッドという名称は、2005年にEU委員会が発表した技術開発計画に初めて用いられ、その後、アメリカのオバマ政権がグリーン・ニューディール政策の柱の一つとして位置づけたことで注目を集め、広く用いられるようになった。ただし、電力系統(グリッド)のあり方が各国の電気事業政策に応じて個別の発展を遂げてきたように、スマートグリッドの具体的な定義づけも各国や地域で異なっている。実際にスマートグリッドとよばれている電力網には、(1)再生可能エネルギー発電の電力供給網接続拡大への貢献、(2)電気自動車導入促進への貢献、(3)需要家側のIT技術を用いた電力量計(スマートメーター)の設置および活用、(4)送配電系統の近代化投資、のいずれかの要素が含まれている。しかし本質的には、スマートグリッドは、電力供給網(電力系統)システムを広くまたぐ概念であり、システム間の接続や連携が必須となる。このため、体系的な概念整理と取組みが重要とされる。

 日本では、太陽光発電の大規模な導入目標が策定されたことや、世界的にもスマートグリッドの普及拡大への動きが進展したことなどを受け、2009年(平成21)8月に資源エネルギー庁の研究会として「次世代送配電ネットワーク研究会」が設置された。次世代エネルギー・社会システム実証地域として、横浜市、愛知県豊田市、関西文化学術研究都市および北九州市の4地域で、スマートグリッドの実証研究が実施される。

[伊藤葉子]

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