動物の骨,軟骨,皮膚,腱などにはコラーゲンという不溶性タンパク質が多量に含まれているが,これらの組織を長時間煮沸するとコラーゲンは変性して水溶性になり抽出されてくる。この誘導タンパク質をゼラチンと呼ぶ。可溶化の原因はペプチド鎖間の塩結合や水素結合が切断されてコラーゲン分子の立体構造が変化するためである。分子量は平均数万。グリシン,プロリン,ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸を多く含むが,コラーゲンと同様にシスチン,システインを含まないことを特徴とする。冷水中では膨潤するだけであるが温水には溶け,再び室温にもどすと2~3%以上の濃度では弾性に富む寒天状ゲルになる。ゼリーや菓子など食品に使われる。抗原性がなくアナフィラキシーを起こさないので止血剤に用いられ,ほかに写真用乳剤,薬用カプセルなど用途は広い。濃色で多少不純物を含むものはにかわと呼ばれ,接着剤や墨汁の保護コロイドとして用いられる。
執筆者:宝谷 紘一
板状のものと粉末状のものとが市販されている。無色ないし淡黄色であるが,板状のものは淡色か透明なものがよい。200㏄の水にゼラチン10gの割合で煮溶かしてゼリー液とし,これを用いてゼリー,ババロア,ブラマンジェ,アスピックその他,冷たい菓子や料理をつくる。ゼラチンは弱火で煮ることがたいせつで,いきなり熱湯に入れると溶けにくくなる。成分は大部分がタンパク質であるが,必須アミノ酸のトリプトファンを含まないため,栄養的な価値は低い。
執筆者:平野 雄一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
コラーゲンを長時間熱水処理した際に得られる水溶性タンパク質の総称.不均質物質で分子量は1.5~25×104,または2~7×104 と推定されている.幼若動物のコラーゲンから調製した場合は,コラーゲン型らせんを形成している3本のポリペプチド鎖が別々にほどけたものが得られるが,多くの場合は2本または3本のペプチドが結合したものが一部に生じる.ペプチド鎖は,もはやコラーゲン型らせん構造のような規則性のある構造をとってはいない.写真用,接着用,食品用など応用範囲は広い.[CAS 9000-70-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…動物の皮,骨,腱,内臓膜を主要原料とし,これらを水とともに熱して,得られた抽出液を濃縮して乾燥したもの。原料の主成分タンパク質であるコラーゲン(骨の場合はオセインosseinと呼ばれる)が,加熱によって変性したものをゼラチンと呼ぶ。加熱抽出前に原料中のコラーゲン以外の成分をアルカリ処理や酸処理によって取り除く精製作業が行われる。…
※「ゼラチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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