タール(その他表記)tahr

デジタル大辞泉 「タール」の意味・読み・例文・類語

タール(tar)

石炭・木炭などの固体有機物乾留によって生じる黒色または褐色の粘性の油状物質。主成分は炭化水素コールタール木タール・石油タールなど。
[類語]瀝青アスファルトコールタールピッチ

タール(Thar)

インドとパキスタンとの国境一帯に広がる砂漠。塩湖が多く、石灰などの地下資源がある。大インド砂漠

タール(tahr)

ウシ科の哺乳類。ヤギに近縁で、体高0.6~1メートル。三日月形の短い角をもち、首から肩にかけてたてがみ状の長毛がある。ヒマラヤ地方から中央アジアの山岳に分布。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「タール」の意味・読み・例文・類語

タール

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] tar ) 有機物の熱分解によって生じる黒色または黒褐色の粘稠(ねんちゅう)な油状物の総称。石炭からのコールタール(石炭タール)、木材からの木タールなどがあるが、特にコールタールをいうことが多い。〔医語類聚(1872)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「タール」の意味・わかりやすい解説

タール
tahr

ヤギに似るがカモシカに近縁な偶蹄目ウシ科タール属Hemitragusの哺乳類の総称。アラビア半島東端にアラビアタールH.jayakari,インド半島南部にニルギリタールH.hylocriusカシミールからシッキムヒマラヤタールH.jemlahicusニュージーランドでは移入されたものが野生化)の3種が分布。体長90~140cm,尾長9~12cm,体高61~106cm,体重50~100kg。体型はヤギ的だが,体の前半はたてがみ状の長毛でおおわれ,あごひげはない。雌雄に角があるが短い。体色は種によって異なり,赤褐色,灰褐色,暗黄褐色などがある。ふつう山地の森林を好み,ヒマラヤタールは標高3000~3600m以下の森林内の岩場に,アラビアタールは岩場のやぶ地に,ニルギリタールは岩の多い丘陵の草地に多い。雄は1年の大半を単独で過ごし,雌と子は集まって群れをつくる。秋から冬にかけてが交尾期で,この時期には雄は激しく闘う。妊娠期間は180~242日で,春にふつう1子,ときに2子を生む。飼育下の寿命はヒマラヤタールで21年9ヵ月の記録がある。
執筆者:


タール
tar

有機化合物を熱分解したときに得られる黒褐色の粘稠な液体をいう。石炭を乾留したときのコールタール,木材を乾留したときの木タールなどはその例である。主成分は芳香族性の炭化水素であるが,そのほかに酸素,窒素,硫黄などを含む有機化合物(酸性または塩基性を示す)も含まれている。これらの化合物は分離して,種々の用途に用いることができる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タール」の意味・わかりやすい解説

タール(動物)
たーる
tahr

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科タール属に含まれる動物の総称。その属名Hemitragusが「半ヤギ」を意味するように、ヤギとヒツジの中間の野生種3種が属する。カシミールからブータンまでのヒマラヤを中心に分布するヒマラヤタールH. jemlahicusは単にタールともいい、標高3000~3600メートルの急峻(きゅうしゅん)な森林に生息する。肩高90~100センチメートルで雌雄ともに角(つの)がある。角は曲がりに沿って30~38センチメートルで黒色。頭頂から後方に弓形に曲がり、その前面の縁は鋭く、雌の角はやや短い。体毛は密で、頭部では短いが頸(くび)、胸、肩のたてがみ状の毛は粗で長く、かかとに達する。体色は暗褐色または赤褐色で背に黒い筋(すじ)があり、顔と前後肢の前面は黒い。森や茂みの急峻な斜面を好み、群れをなすが、夏の間は雄が群れから離れる。6、7月ごろ1子を産む。乳頭は4個である。インドに分布し、タールでは最大のニルギリタールH. hylocriusは、毛が短く乳頭は2個しかない。アラビアには小形種アラビアタールH. jayakariがある。あとの2種は国際保護動物である。

[北原正宣]


タール(油状物質)
たーる
tar

有機物の熱分解によって生成する褐色から黒色の粘稠(ねんちゅう)性油状物質の総称。木(もく)タール、石油ピッチなどがあるが、狭義には石炭の乾留で得られるコールタールをさす。タールの組成・性状は原料により異なるが、多環縮合芳香族化合物を基本とし、これに少量の硫黄(いおう)、窒素、酸素、灰分などを含む。防腐剤、塗料などに用いられるが、もっとも重要なのは芳香族系化学原料としての用途で、石炭化学工業はコールタールから、有用な化学物質を得ることを出発点として発展した。

[田上 茂]


タール(楽器)
たーる
tār ペルシア語

イランからカフカスにかけて用いられるリュート属撥弦(はつげん)楽器。おもに古典音楽の歌唱伴奏に使われ、語義は「弦」。木製共鳴胴は2個の心臓を連結したような独特の形をしており、表面には羊の皮膜が張られている。60センチメートルほどの長い棹(さお)には25本の羊腸製可動フレットが巻かれ、1オクターブが15の微小音程に分割される。6本の金属弦の標準的調弦はC3―C4―G3―G3―C4―C4だが、用いる旋法によってしばしば変えられる。真鍮(しんちゅう)製のプレクトラム(義甲)を用いたトレモロ奏法や、左手の指で棹上の弦をたたいたりはじいたりする技法によって、歌唱旋律をなぞったり微細な装飾を加えたりする。

[山田陽一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タール」の意味・わかりやすい解説

タール
tār

楽器の一種。イランとアゼルバイジャンアルメニアウズベキスタンタジキスタントルクメニスタン,ジョージア(グルジア)などコーカサスの諸国で用いられる撥弦楽器。長い棹には羊腸弦を巻いた可動フレットがあり,先端には糸蔵がついている。くびれのある独特な形の刳 (く) り木の胴の腹面には薄い小羊の皮膜が張られる。金属製の小さな撥 (ばち) でトレモロを重用して弾く。弦数は地域によって異なるが,今日イランの古典音楽で用いられるタールは3コースの複弦 (金属弦) になっている。本来,弦楽器を意味するペルシア語から来ており,今日,中央アジアの音楽では最も重要な撥弦楽器としてドタール (2弦) とともに普及している。

タール
Tearle, Sir Godfrey Seymour

[生]1884.10.12. ニューヨーク
[没]1953.6.8. ロンドン
イギリスの俳優。俳優オズモンド・タール (1852~1901) の子。 1893年子役としてデビューして以来,父の死の年までその劇団に出演。 1904~06年自身の劇団を結成して地方を巡業,シェークスピアの作品や O.ゴールドスミスの『負けるが勝ち』などを上演。 08年 H.B.トリーのハー・マジェスティーズ劇場へ出演し,その後ロンドンの劇界で活躍。オセロ,ハムレット,アントニーなどを得意とした。

タール
tar

石炭,石油,木材のような炭素化合物を熱分解するとき残留する黒ないし褐色の油状瀝青物質の総称。石炭の乾留で得られるコールタールはその代表的なものである。再蒸留して各成分に分けて合成化学工業の原料に使われるほか,そのままで塗料,燃料にも使われる。コールタールのほかに,頁 (けつ) 岩タール,木タール,オイルガスタール (石油のガス化副産物) ,石油タールなどがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「タール」の意味・わかりやすい解説

タール

石炭や木材など固体の有機化合物を熱分解したとき,ガスとともに揮発し,冷却すると凝縮するどろどろの黒い油。原料,熱分解方法などにより性質は異なるが,一般に炭化水素が主成分。→コールタール木タール
→関連項目染料工業

タール

イラン,カフカスの長い棹をもつリュート属撥弦楽器。8の字形の共鳴胴。長い棹にガットを巻きつけて可動フレットとする。今日イランの古典音楽では複弦3コース(金属弦6本)のものを用い,小さな金属製ピックでトレモロを多用しながら弾く。独奏,歌の伴奏,合奏に用いられる。

タール[山]【タール】

フィリピン,ルソン島南部にある活火山。標高400m。マニラの南方約70km。大きなカルデラ湖であるタール湖(243km2)の中央にそびえる。1572年以来約30回噴火(最近は1977年)。1911年死者約1400人,1965年死者約200人の噴火は特に著名。1967年,タール火山島国立公園に指定。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「タール」の解説

タール
タール
tar

有機物の熱分解により生成する茶褐色あるいは黒色の粘りのある液状物質.芳香族炭化水素が主成分で,硫黄,窒素,酸素を含む複素環式化合物が共存する.狭義には,コールタールを意味する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタールの言及

【タール[山]】より

…標高311m。フィリピン最大のカルデラ湖,タール湖(東西約19km,南北約24km)に浮かぶ中央火口丘で,その中に小さな火口湖をもつ。1572年以来25回以上の噴火が記録されており,最近では1911年,65年,70年に噴火し,付近の住民に大きな被害があった。…

【フィリピン】より

…なお,構造線としては北北西~南南東と北北東~南南西の2方向が認められる。ミンダナオ島中央高地南部には群島最高峰の活火山アポ山(2954m)がそびえ,ルソン島南部からビコル半島にかけての火山地帯には二重カルデラで有名なタール湖,世界的なコニーデで知られるマヨン山(2417m)がある。またルソン島のカガヤン谷,中部ルソン平野,ミンダナオ島のコタバト平野,ブキドノン台地,パナイ島のイロイロ平野,ネグロス島西海岸平野などが重要な農業地帯を形成する。…

【ダーイラ】より

…この一面太鼓は奏者が左手で枠の下部を支えて,あたかも盾のごとく前に構え,両手の指先で膜面をたたきさまざまな音色とリズムを作り出す。 この太鼓はやはりアラビア語でドゥッフ(ダッフdaff)またはタールṭār,トルコ語でデフdef,マズハルmazharと呼ばれるものと同種であるが,ダーイラの名称はイラン,パキスタン,アラブ諸国で一般的である。またグルジアではダイラdaira,ウズベキスタンやタジキスタン,アフガニスタンではドイラdoira,また東ヨーロッパのアルバニアやマケドニアではダイレdaireの呼称で知られる。…

【ドゥッフ】より

…この名称はヘブライ語のトーフtōpに相当し,歴史的にこの太鼓は古く,古代イスラエルにさかのぼることができる。今日,地域によっては別のアラビア語タールṭār(北アフリカ),リックriqq(イラク),ベンディールbendīr(モロッコ)の名でも呼ばれるが,いずれも同種の楽器である。ベンディールはスペイン語でタンバリンを意味するパンデレータpandereta,四角形のタンバリンを意味するパンデーロpanderoの語源である。…

【ターラ】より

…インド音楽の拍節法。北インドではタールtāl。原義は〈掌〉〈拍手〉で,〈手拍子〉ということであろう。…

【タバコ(煙草)】より

…また長さによって,ミニサイズ(70mm未満),レギュラーサイズ(70mm),ロングサイズ(80mm),キングサイズ(85mm),スーパーキングサイズ(100mm以上)に区分され,日本ではキングサイズが主流である。しかし,1960年代になって喫煙と健康に関する社会的関心が高まり,タバコの喫味のマイルド化(低ニコチン・低タール化)に拍車がかかり,フィルター付きタバコの割合は主要国では圧倒的な比率を占めている(ほとんどの国が八十数%~九十数%。1996)。…

※「タール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android