トイレ・パイプ洗浄剤中毒(読み)トイレ・パイプせんじょうざいちゅうどく(その他表記)Toilet cleaner poisoning, Clog-remover poisoning

六訂版 家庭医学大全科 の解説

トイレ・パイプ洗浄剤中毒
トイレ・パイプせんじょうざいちゅうどく
Toilet cleaner poisoning, Clog-remover poisoning
(中毒と環境因子による病気)

どんな病気か

 トイレ・パイプ洗浄剤は、強い酸またはアルカリです。これを事故で、または自殺目的で飲むと、強酸、強アルカリの腐食作用によって、口やのど食道、また酸ならば胃の粘膜・筋層が損なわれ、潰瘍を形成したり、しばしば穿孔(せんこう)(あな)があくこと)がみられます。

原因は何か

 酸、アルカリによって、口腔や咽頭、消化管熱傷を負ったような状態になります。

 アルカリの場合は、ある程度胃酸で中和されるので、主に食道が損なわれますが、酸の場合は、胃を中心に障害が現れます。

 そのほか、物質によっては下部消化管も損なわれることがあります。

症状の現れ方

 摂取後ただちに、強酸、強アルカリの刺激によって、悪心(おしん)吐き気)・嘔吐、口腔内灼熱感(しゃくねつかん)、前胸部痛、上腹部痛が起こります。その後、口腔から食道または胃、十二指腸までの広範囲の粘膜のはれ浮腫(むくみ)、びらんなどが生じ、そこから出血することにより、吐血が起こります。この部位は潰瘍になります。

 また消化管穿孔を起こすこともあり、その場合、腹膜炎(ふくまくえん)縦隔炎(じゅうかくえん)になって、死亡する危険があります。

 浮腫が大きい場合は、全身の体液がそこに集まるため、ショック、DIC播種性(はしゅせい)血管内凝固症候群)などが起こることもあり、やはり死亡する危険を伴います。運よく回復しても、潰瘍の修復の結果、しばしば食道や幽門(ゆうもん)狭窄(きょうさく)などが起こります。

検査と診断

 同様の症状を起こすものに、クレゾール中毒洗剤・界面活性剤中毒、パーマ液中毒、パラコートなど一部の農薬中毒などがありますが、それぞれ治療法が違っており、とくにトイレ・パイプ洗浄剤中毒では治療のうえで行ってはならないことが多いので、摂取した薬剤の特定が重要になります。

治療の方法

 冷えた牛乳卵白を飲ませます。無理に吐かせないのが基本です。また、水を与えることも、酸だからアルカリを与えるとか、アルカリだから酸を与えて中和するということもしてはなりません。下剤も与えません。

 胃の洗浄は、胃管チューブにより食道や胃に孔があくことがあるので、通常は行いません。ただし、あまりにも多くの洗浄剤を飲んだ場合、直後であれば行うこともあります。その場合は、チューブを慎重に挿入して洗浄剤を十分に吸い出したうえで、牛乳で洗浄します。輸液は十分に行いますが、それに加えて、抗生物質投与などの対症療法も行うことがあります。

 穿孔がある場合は手術が必要です。咽喉頭の浮腫により呼吸困難になった場合、気管内挿管などによる気道確保が必要です。また、消化管の保護のため、数週間食事を中止し、高カロリー輸液を行うこともあります。

病気に気づいたらどうする

 たとえ少量に思えても、牛乳または卵白を飲ませ、すぐに救急病院に搬送してください。

関連項目

 クレゾール中毒洗剤・界面活性剤中毒パラコート中毒、ジクワット中毒DIC

栗原 伸公

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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