ド・フリース(読み)どふりーす(英語表記)de Vries, Hugo (Marie)

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ド・フリース」の意味・わかりやすい解説

ド・フリース
どふりーす
Hugo de Vries
(1848―1935)

オランダの植物学者、遺伝学者。ライデン大学卒業後、ハイデルベルクウュルツブルクの各大学に学び、ホフマイスターザックスらに師事した。1877年ハレ大学で植物生理学の私講師となり、翌年から1918年までアムステルダム大学教授、退職後も研究に専念した。研究分野は植物生理学と遺伝学である。前者においては呼吸作用、浸透圧原形質分離などの研究を行い、後者ではマツヨイグサを用いて植物の雑種に関する研究を行い、遺伝現象についてパンゲン説を提唱した。これがメンデル法則再発見につながり、さらに突然変異説の提唱につながった。

 彼によると、生物の変異は連続的に徐々におこるのではなく、非連続的に急激におこり、遺伝的でただちに安定性を得る。そして自然選抜がこれをふるいにかけるために進化がおこる。この主張はその後の遺伝学や進化論に大きな影響を与えた。主著は『突然変異説』2巻(1901、1903)。

田島弥太郎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ド・フリース」の意味・わかりやすい解説

ド・フリース
de Vries, Hugo (Marie)

[生]1848.2.16. ハールレム
[没]1935.5.21. アムステルダム近郊ルンテレン
オランダの植物学者,遺伝学者。メンデル法則の再発見者として,また突然変異説の主唱者として著名。ライデン,ハイデルベルク,ウュルツブルク各大学に学び,その間,W.ホーフマイスター,J.ザックスに師事。アムステルダム大学植物学教授 (1878~1918) 。初め植物生理学を研究し,のち遺伝学に転じる。植物生理学上の業績としては生長の機構に関する研究が重要である。遺伝学での業績としては,まず細胞内パンゲン説の提唱があげられる (『細胞内パンゲン説』 1889) 。これは,細胞核の中にパンゲンという粒子の存在を仮定し,これが形質の遺伝を司るとした仮説で,一面で C.ダーウィンパンゲネシスを発展させたものであるが,発生学・細胞学の新知見や交雑実験の成果を盛込んだ理論であり,遺伝子概念の先駆をなすものである。 1900年には,1880年代より続けていた交雑実験の結果を発表しようとして,過去の関連文献を探索するうち,G.メンデルが 1865年に同一の実験を行なっていたことを,K.コレンス,E.チェルマックとは独立に発見した。また,オオマツヨイグサの変異体の研究 (86~99) に基づいて『突然変異説』 Die Mutationstheorie (1901~03) を著わして,進化の際の変異は,ダーウィンが考えたような連続的なものではなく,不連続であると考えて突然変異と名づけ,これに自然選択が働くことによって進化が起るとした。進化の機構に関して今日一般に行われている説明は,大筋においてド・フリースの説に一致している。

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百科事典マイペディア 「ド・フリース」の意味・わかりやすい解説

ド・フリース

オランダの植物生理学者,遺伝学者。ライデン大学その他で学び,アムステルダム大学教授。初め植物細胞の膨圧や浸透圧などを研究。のちオオマツヨイグサの実験観察の結果,突然変異説を発表した。またメンデルの法則を再発見(1900年)するなど遺伝学発展の基礎を築いた。〈原形質分離〉は彼の造語。
→関連項目コレンスチェルマク

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