化学辞典 第2版 「ナフサ分解」の解説
ナフサ分解
ナフサブンカイ
naphtha cracking
エテンを主とする石油化学原料の製造を目的としたナフサのクラッキング法.原料にはおもに軽質ナフサを用い,温度約800~900 ℃,滞留時間0.03~0.5 s において,多量のスチームとともに加熱した管状炉を通して熱分解する.あるいは耐火れんが張りの分解炉で加熱した砂,ペッブル,コークスなどの熱媒体と接触させる方法もある.生成分解ガスから硫化水素,二酸化炭素などの酸性成分や水分を除き,冷却圧縮して液化し,これを低温精留して,エテン,プロペン,ブテンなどを分離する.また,B-B留分の抽出蒸留によりブタジエンが分離され,液状生成物のガソリン留分は水素化精製したのち,溶剤抽出によりBTX(ベンゼン,トルエン,キシレン)が分離される.この一系列の操作で主要な石油化学工業原料のほとんど大部分が得られる.原料や操作条件によって異なるが,主要な生成物の収率は,原料ナフサに対してエテン28~33%,プロペン13~16%,ブテン5~8%,ブタジエン3~5%,BTX 8~12% 程度で,このほかイソプレン,シクロペンタジエンなども副生する.工業的操作としては管状炉分解法が主体で,わが国ではすべてこの方法によっている.ナフサ分解では多量のスチームを加えてクラッキングを行うため,スチームクラッキングともよばれている.最近,反応温度を低下させるとともに,プロペンの生成比率を増加する目的で,固体酸触媒を用いるナフサ分解が研究開発されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報