フランス東部の地方,旧州名。ソーヌ川上流域の丘陵を主とし,南はジュラ山脈の北西斜面,北はボージュ山地の南西斜面を含む。歴史的に形成された地域であり,現在のドゥー,ジュラ,オート・ソーヌの3県とベルフォール地区にあたる。中心都市はブザンソン(ドゥー県の県都)。経済活動の盛んなフランス東半部の中では開発のやや遅れた農村地域で,近年は人口流出が続き,1km2あたり人口密度は68人(1993)となって同国の平均(106人)をかなり下回る。ほぼ西へ傾く丘陵を刻んでソーヌ川の本流および支流のドゥー川などが南西へ流れており,東縁部に連なるボージュ山地とジュラ山脈が西風をさえぎって比較的雨が多い。二つの山地の接合部は,ベルフォール(またはアルザス,ブルゴーニュ)狭隘(きようあい)部とよばれる所で,標高が340mにとどまるため交通が便利であり,古代以来諸勢力の侵入路,中世には遠距離通商路となり,1784-1833年にはドゥー川とライン川とを結んで長さ320kmのローヌ・ライン運河がそこに開削された。居住の歴史は古く,紀元前にはケルト系の部族が住んでいたが,カエサルの率いるローマ軍によって占領された。5世紀以降,東からゲルマン諸族の侵略・支配を受けたのち,11世紀前半にブルゴーニュ伯領が形成された。これはほぼソーヌ川以東の地域を含み,同以西のブルゴーニュ公国に対するものであった。地名は〈フランク族の伯領〉を意味しており,14世紀ごろから地域全体を指すようになる。なお伯領は1384年にブルゴーニュ公国に統一され,さらにハプスブルク家の支配を受けたりしたのち,1678年にフランス王国に統一された。
ジュラ山脈やボージュ山地の斜面は広く森林に覆われるが,これを除いた丘陵地では小麦や飼料作物が栽培されている。酪農が盛んであるが,ブドウ園はブルゴーニュに近い南西部に若干みられるにすぎない。小作経営がやや目だつ。もともと土地の生産性が高くないうえに,17世紀前半の三十年戦争による荒廃の傷あとが長く残り,19世紀中葉に人口増加は一つの低い頂点を迎えたが,その後は再び減少傾向をたどった。第2次大戦後,工業化の波がこの地域にも押し寄せ,南のブザンソン,北のベルフォールおよびモンベリアールを中心として,機械,電気,自動車,化学,食品の諸工業が発達した。そのうえジュラの時計,ボージュの繊維というような伝統工業も依然として行われている。その結果ドゥー県やベルフォール地区は人口増加がやや目だち,工業都市は都市圏を広げはじめている。かつてJ.J.ルソーは中心都市のブザンソンをしばしば訪れたが,落ち着いた雰囲気をもつ農村や避暑向きの山地は,近年しだいに多くの保養客を集めつつある。
執筆者:谷岡 武雄
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フランス東部の歴史的地域名、旧州名。中心都市ブザンソン。現在も行政地域名として用いられ、オート・ソーヌ、ドゥー、ジュラの3県の範囲に相当する。面積1万6202平方キロメートル、人口111万7059(1999)。セーヌ川、ソーヌ川、ドゥー川上流の高地地方で、ジュラ山脈を境としてスイスと接する。ケルト時代にスクァニイ人が居住していたが、ローマの支配下に入り、ついでゲルマン民族移動の影響を受け、ブルグント王国、さらにフランク王国に吸収された。9世紀にブルゴーニュ公の管理するブルゴーニュ伯領となり、915年、ブルゴーニュ公の二男ユーグ・ル・ノアールHugues le Noir以来、ブルゴーニュ伯家が当地方を領有した。名称は、公家に対する上納金を「免除された伯領」の意味で、14世紀に文書に現れる。1477年ハプスブルク家領となり、1548年スペイン王領に継承された。フランスは三十年戦争期の10年間(1635~44)、フランドル戦争(1668)、オランダ戦争(1674)の3回にわたって占領し、1678年のナイメーヘンの和約によって、最終的にその領土に吸収された。この地方は山林地方で、中世以来、製材、家具製造と酪農を主産業とし、岩塩を特産とするが、近代に入って精密機械工業、19世紀末からはプジョーの自動車工業がおこった。
[千葉治男]
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フランス東部の州。中世末ハプスブルク家の所領となりスペイン・ハプスブルク家がこれを相続したが,16世紀以後,フランスの侵攻を受け,1678年オランダ戦争の結果フランス領に併合された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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