ニューカレドニアとともにフランスの南太平洋における海外領土。ソシエテ,トゥアモトゥ,マルキーズ,トゥブアイ,ガンビエの各諸島,約130の島々からなる。陸地総面積4000km2,人口26万(2007)。観光地で有名なタヒチ島のパペエテを主都とする。住民はポリネシア人が75%を占め,ヨーロッパ人,中国人,ヨーロッパ人とポリネシア人との混血は少数派であるが,政治,経済の実権を握っていた。公用語はフランス語であるが,住民の多くはタヒチ語を使っている。
五つの諸島群は,イギリスの帆船バウンティ号の反乱(1789),フランスの画家ゴーギャンの隠遁生活などの舞台としても有名であるが,この諸島群のヨーロッパ人としての第一発見者は1521年のマゼランであった。1769年と73年にJ.クックがタヒチ島を訪れ,18世紀末からイギリスの宣教師が布教活動を始めたが,フランスはタヒチを中心に栄えていたポマレ王朝を抑え,1847年に保護領とし,80年にはポマレ王朝を廃した。1958年のフランス第五共和政成立とともにこの諸島群はフランスの海外領土となった。
60年に主都パペエテにファア国際空港が完成して観光客が増えるとともに,63年には太平洋核実験センター(CEP)が設置され,伝統的な自給自足経済からフランス本国に依存する消費地型経済に変わった。フランスは95年秋から96年初めにかけてトゥアモトゥ諸島のムルロア環礁などで第6次核実験を強行した。96年1月の実験を最後に核実験場は閉鎖された。
フランスは高等弁務官を通して統治する。一院制の領域議会(定員57,任期5年)があり,議員は直接選挙で選出される。議会は親仏派が多数を占め,核実験中止の見返りを求める〈補償問題〉が浮上している。また,2004年まで期限10年の〈進歩のための協定〉に基づく資金援助の強化をフランスに求めている。日本からはニューカレドニア経由の航空路がある。
執筆者:青木 公
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南太平洋、ポリネシア中部にあるフランス海外自治体の島々。ソシエテ諸島、ツアモツ諸島、ツブアイ諸島、マルケサス諸島、ガンビエル諸島など約130の島々からなる。陸地総面積4167平方キロメートル、総人口21万9521(1996)。首都はタヒチ島のパペーテ。肥沃(ひよく)な火山島と礁湖を取り囲むサンゴ礁島からなり、コプラ、やし油、バニラ、コーヒーなどの農産物、真珠母貝、黒真珠などの水産物に富む。タヒチ島をはじめとする史跡・景勝地に恵まれ、観光も大きな収入源となっている。タヒチ島のパペーテ空港はパリ、ホノルル、ロサンゼルス、シドニー、東京、オークランド(ニュージーランド)、サンティアゴ(チリ)などと結んでおり、1998年の利用者は52万8675人であった。17、18世紀からポルトガル人航海家キロスPedro Fernandes de Queiròs(1560ころ―1614)、イギリスのJ・クックらの来航が相次いだが、フランスは1842年マルケサス諸島、44年ソシエテ、ツアモツ両諸島、50年ツブアイ諸島、81年ガンビエル諸島を領有、1903年以後フランスの主権が確立した。
[大島襄二]
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