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フルリ人 フルリじんHurrians

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フルリ人
フルリじん
Hurrians

前2千年紀のオリエントの歴史と文化に重要な役割を果たした民族。メソポタミアウル第3王朝の史料にすでにフルリ人の人名や地名が現れる。チグリス川左岸やザグロス山脈に居住していたと推定される。しかし前2千年紀初頭からしだいに西方に移動し,とりわけインド=ヨーロッパ語族の南下に影響されたとみられるその移動は大規模で,ザグロス山脈とバン湖の間の地方から出て,前 18世紀にはシャムシ=アダド1世のアッシリアを滅ぼし,チグリス川の東にヌジ (ヌズ) という都市 (→ヌジ遺跡 ) を建てて通商の一大中心地とした。またシリア各地やアナトリア東辺部にも入植し,ヒッタイト人と隣接するにいたった。当時北メソポタミアがフルリ人の最も多く住んだところであった。前 15世紀アーリア系の貴族のもとイランの山岳地帯からシリアを支配するミタンニ王国を形成,ワシュカンニを首都とした。エジプトとは,トゥトモス3世のときシリアの支配権をめぐって争ったが,アメンホテプ3世時代には友好関係を保ち,両王家の婚姻も行なわれた。しかし前 14世紀中頃シュッピルリウマシュ1世のもとに勢力増大したヒッタイト帝国と戦って敗れ,ミタンニ王マッティワザはヒッタイトに臣従。またアッシリアも再び独立したため,政治的には支配力を失ったが,キリキアのキズワトナ王国やシリアの諸都市のフルリ人は経済的・文化的勢力を持続し,ヒッタイト帝国の宗教,文学ばかりでなく,王家の血統にもフルリ的色彩を色濃く残した。シリアの海港ウガリトでも同様であった。アルメニア山中のハヤシャ王国を除いて,前2千年紀末までに民族的集団としてのフルリ人は消滅した。フルリ人の言語 (→フルリ語 ) は現在では死語となっているが,カフカス (コーカサス) 地方のグルジア系諸語はその系統をひくという説もある。

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世界大百科事典 第2版の解説

フルリじん【フルリ人 Hurrians】

古代オリエントの膠着語を話す非セム系民族。前3千年紀半ばころから約1000年またはそれ以上の長きにわたってメソポタミアに居住した。ただし言語については人名のほかにはフルリ語資料が乏しく不明な点が多い。旧約聖書中のヒビ人Hivitesはフルリ人をさすものと思われる(《創世記》34:2以下,《ヨシュア記》9:7,11:19)。ただし旧約聖書中のヒビ人ないしホリ人Horitesの用法には混乱がみられる。サルゴン時代の文書から検出されるフルリ語人名や普通名詞はわずかであるが,それらと関連して出てくる地名などから,北または北東からティグリス川を越えてメソポタミアに侵入してきたものと思われる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フルリ人
ふるりじん
Hurrians

西南アジアのカフカス山脈の南麓(なんろく)地方を原住地とする山岳民族。紀元前3000年ごろから原住地を離れ、北メソポタミアに移動を始めた。前18世紀ごろになると、インド・ヨーロッパ語族をその支配者とする王国を各地に建設した。アナトリア地方に侵入した一派はヒッタイト帝国、ユーフラテス川中流域ではミタンニ王国、バビロニアにはカッシート王朝が建てられ、各国の王名や神名からもインド・ヨーロッパ語族の影響がわかる。前17世紀ごろ下エジプトのデルタ地帯を支配したヒクソスとよばれる異民族の侵入も、フルリ人の大移動と深い関係があると考えられている。しかし、フルリ人だけの王国は建設されなかった。[吉村作治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内のフルリ人の言及

【メソポタミア】より

… イシン・ラルサ時代からバビロン第1王朝時代にかけては各種の粘土板文書が多く残っているから,統治体制,司法制度,商業,土地制度,尼僧制などに関して,みるべき多くの研究成果がある。バビロン第1王朝
[カッシート人,フルリ人,ミタンニ王国]
 西イランにいたカッシート人はサムスイルナ時代に南メソポタミアに現れたが,その言語はまだわかっていない。バビロン第1王朝の崩壊後カッシート人は前12世紀中葉までバビロニアを支配した。…

※「フルリ人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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