複素環式化合物の一つ。プリン自体は天然に存在しないが、その誘導体は広く動植物界に分布し、生化学上重要な物質である。1899年にドイツのEmil・H・フィッシャーが2,6,8-トリクロルプリンを還元する方法で初めて合成したが、現在では4,5-ジアミノピリミジンを一酸化炭素の存在のもとにギ酸とともに加熱して得ている。分子量120、融点216~217℃で、無色の結晶。水および熱エチルアルコールには溶けるが、エーテルやクロロホルムには溶けにくい。弱い塩基で、一当量の酸と塩をつくるほか、弱い酸としての作用もあり、ナトリウム塩など金属塩を生成する。しかし、熱アルカリおよび希酸に対しては安定である。核酸の塩基部分など、生体に関係の深いものはプリン塩基purine baseとよばれる。そのほか、コーヒーやカカオの種子、チャの葉などにも含まれている。
[笠井献一]
プリン環(核)をもった塩基性化合物で、プリン環は六員環のピリミジンに五員環のイミダゾールが結合した形を呈する。天然にはDNAやRNAをはじめ、ヌクレオチドやヌクレオシドの構成成分としてアデニン、グアニン、ヒポキサンチンなどがあり、これらのメチル誘導体も知られている。アデノシン三リン酸やグアノシン三リン酸のほか、NADやFADなど代謝の重要因子ないし補酵素の構成成分として存在する。キサンチンや尿酸、あるいはアルカロイドの一種であるカフェインなどもプリン塩基に属する。生体内では遊離の塩基として単独に合成されず、プリン環前駆体の状態でペントースと結合している。結合位置は9位の窒素である。生体内での分解は、キサンチンを経て尿酸、尿素ないしアンモニアに至る。
なお、天然にないプリンは代謝拮抗(きっこう)薬として用いられ、6-メルカプトプリンや6-メルカプトプリンリボシド(チオイノシン)などは抗悪性腫瘍(しゅよう)薬として繁用されている。
[笠井献一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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