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リグニン lignin

翻訳|lignin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

リグニン
lignin

セルロースとともに木材の構成成分として重要な高分子化合物ベンゼン環水酸基メトキシル基が結合したプロピルベンゼン誘導体を構成単位とする。木材中に 20~30%含まれ,針葉樹広葉樹,イネ科植物など植物の種類により,その構成単位である芳香族誘導体の種類と組成が異なる。植物体の細胞間の接着や細胞壁の強化などに役立っているといわれている。パルプの製造廃液中に大量に存在し,バニリンの製造に用いられる。

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百科事典マイペディアの解説

リグニン

木質素とも。木化した植物体の主成分の一つ。木材中の20〜30%を占める。3種のプロピルベンゼン化合物を主体とする網状高分子化合物。主として中間層や細胞壁にセルロース,ヘミセルロースと結合して存在,植物体の強化に役立つ。
→関連項目細胞壁食物繊維木材腐朽菌

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栄養・生化学辞典の解説

リグニン

 芳香族化合物であるヒドロキシフェニルプロパンが重合した形の化合物で,木材の乾燥重量の25〜30%を占める.化学的に安定で,微生物によっても分解されにくい物質.

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世界大百科事典 第2版の解説

リグニン【lignin】

木質素とも呼ばれる高分子物質。高等植物中でセルロースなどとともに植物の木化に関与する。木材中の20~30%を占め,セルロースと結合した状態で存在する。高等植物では生育に伴い道管仮道管,繊維などの組織でリグニンの合成が始まり,いわゆる木化(木質化)が進行する。木化は生長のかなり初期から始まり,リグニンは合成されつづけて,やがて細胞間に強固な構造をつくりあげる。完全に木化した部分の細胞は死細胞であるが,組織全体は物理的にも化学的にも強固な構造となる。

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大辞林 第三版の解説

リグニン【lignin】

木材・竹・藁わらなど木化した植物体中に20~30パーセント存在する芳香族高分子化合物。セルロースなどと結合して存在し、細胞間を接着・固化する。パルプ製造の廃液に多量に含まれる。バニリンの製造原料。 → 木化

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

リグニン
りぐにん
lignin

木質素ともいう。維管束植物の道管、仮道管などの木部に多量にみいだされる高分子物質。とくに木材中には乾物量の20~30%に達する量が含まれる。化学構造はベンゼン環に炭素3個がついたフェニルプロパン型の炭素骨格からなり、これが多数互いに側鎖と側鎖、ベンゼン環と側鎖の間で結合した樹枝状構造をもち、分子量5万以上の重合体である。多くの溶媒に不溶のため、パルプ製造の際には亜硫酸処理によってリグニンを可溶化して除去する。
 高等植物の分化した組織を薄片にしてフロログルシン(トリオシキベンゼン)塩酸溶液で染色すると、顕微鏡下で細胞壁に沿って赤い呈色が見られる。これはリグニンのコニフェリルアルデヒド基に基づく反応である。細胞分裂を終えたばかりの若い植物細胞は細胞壁もまだ薄く柔らかであるが、しだいにセルロースの一次壁がつくられ固さを増してくる。木化はこのような成長のごく初期からおこり、成長点にある若い細胞でも分裂の数日後にはリグニンの反応が認められるようになる。木化が進むと細胞は分裂の能力を失い、老化して細胞の働きも停止する。しかし、こうして木化が進むことによって細胞どうしが互いに結合し、木部の組織が強固になって、自然の風雨にさらされる植物体をしっかりと保つようになる。細胞壁中ではリグニンはセルロース、ヘミセルロース、ペクチンのような多糖類と強く結合して細胞壁の物理的な強化に役だっている。またセルロースなどの多糖類はリグニンに覆われることで化学的な抵抗力も増す。植物細胞の外側には、初めセルロースを主体とした一次細胞壁が形成されるが、細胞が成熟するにしたがって、セルロースのミセル構造の間にリグニンが沈着し、細胞壁が強固になる。これとともに物質の交換が妨げられ、リグニンが細胞壁全体に広がって一定量に達すると、細胞壁の肥厚が止まる。この過程を木化とよび、あらゆる高等植物細胞でみられる。木化は成長のごく初期からおこるが、木化の進行とともに細胞の老化が進み、最終的には生活力を失う。
 植物の進化の程度にしたがい、リグニンの構成成分にいくらかの違いがみられる。裸子植物の針葉樹のリグニンはグワヤシルプロパンがおもな構成単位である。シダ植物のリグニンも針葉樹に似るといわれる。これに対して広葉樹で代表される双子葉植物のリグニンは、グワヤシルプロパンに加えてシリンギルプロパンが主体となり、それゆえメトキシル基CH3O-の割合が針葉樹リグニンよりも高くなる。単子葉植物のリグニンはグワヤシルプロパンとシリンギルプロパンのほかにp-ヒドロキシフェニルプロパンを含んでいる。これらのフェニルプロパン単位が互いに側鎖と側鎖、ベンゼン環と側鎖の間でエーテル結合し、またベンゼン環どうしがジフェニル(ビフェニル)結合して、たいへん入り組んだ重合体となり、リグニンを形成している。
 リグニンの生合成は、フェニルアラニンより桂皮(けいひ)酸を経て生成するフェニルプロパノイドが前駆物質となって、これが細胞壁でペルオキシダーゼによって酸化重合して進行する。工業的には、パルプ製造過程における亜硫酸パルプ、ソーダパルプの廃液から大量に回収され、そのアルカリ分解によって得られるバニリンは香料などの工業原料として用いられる。[吉田精一・南川隆雄]
『八浜義和・上代昌著『リグニンの化学』(1946・日本評論社) ▽日本林業技術協会編・刊『林業技術史第5巻 林産化学編ほか』(1975) ▽吉田精一・南川隆雄著『高等植物の二次代謝』(1978・東京大学出版会) ▽榊原彰著『木材の秘密――リグニンの不思議な世界』(1983・ダイヤモンド社) ▽石倉成行著『植物代謝生理学』(1987・森北出版) ▽中野準三編『リグニンの化学――基礎と応用』増補改訂版(1990・ユニ出版) ▽Y・リン・スティーヴン、W・デンス・カールトン編、中野準三監修、飯塚尭介訳『リグニン化学研究法』(1994・ユニ出版) ▽樋口隆昌編著『木質生命科学シリーズ2 木質分子生物学』(1994・文永堂出版) ▽瓜谷郁三編著『ストレスの植物生化学・分子生物学――熱帯性イモ類とその周辺』(2001・学会出版センター)』

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