日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルニョー」の意味・わかりやすい解説
ルニョー
るにょー
Henri Victor Regnault
(1810―1878)
フランスの実験科学者。1830年から理工科大学校(エコール・ポリテクニク)に学び、ついで鉱山学校に学ぶ。1836年理工科大学校のゲイ・リュサックの助手、1840年化学教授となった。助手時代に有機化学の実験的研究で高い評価を受け、1839年からは多くの固体、液体の比熱を従来以上の精度で測定し直した。1842年からは政府の資金により、蒸気機関の改良のためのより正確なデータを目的に、水蒸気や多くの種類の気体の比熱、膨張係数、ボイルの法則からのずれ、などについて丹念に実験データを積み上げた。1850年代に熱力学を建設したランキン、W・トムソン(ケルビン)、クラウジウスは、いずれもルニョーのデータを詳細に検討し、水蒸気について知られていたワットの法則が成り立たないことを知り、熱素説によらない蒸気機関や一般の熱学の理論建設の方向を選択したが、ルニョー自身はそうした理論研究の流れに加わることはなかった。
[高山 進]