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レーザー冷却 れーざーれいきゃくlaser cooling

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

レーザー冷却
れーざーれいきゃく
laser cooling

物質にレーザーを当てて極限まで冷却すること。アメリカのコロラド大学と国立標準技術研究所が共同運営する宇宙物理学複合研究所(JILA=Joint Institute for Laboratory Astrophysics)では、レーザー光を使って1995年にルビジウム87(87Rb)を20ナノK(絶対温度。1ナノKは10億分の1K)まで冷却することに成功した。その後マサチューセッツ工科大学(MIT)でナトリウム23(23Na)、ライス大学でリチウム7(7Li)の核冷却も実現した。これには、フランスと日本も貢献している。
 光(電磁波)を物質に当てて物質の温度を上昇させる。これは電子レンジの原理などでおなじみである。レーザーは光のなかでも波長が一定で、位相がそろった、その意味で非常に質の高い光である。この光を10ミリK(1ミリKは1000分の1K)程度に冷やした一価金属(アルカリ金属)の蒸気に当てると、気体の運動量を奪われて温度が下がることがある。このレーザーによって87Rbを前記のように20ナノKまで冷却できたのである。冷却にかかわった気体原子は100万個とされ、これがボース‐アインシュタイン凝縮の実験的な根拠とされた。この結果、F・ロンドンが液体ヘリウム超流動をボース‐アインシュタイン凝縮と推定して以来、60年以上たってその客観的な存在が明らかになった。[渡辺 昂]
『渡辺昂著『超流動から超伝導へ』(1991・大月書店) ▽久我隆弘著『岩波講座 物理の世界 さまざまな物質系5 レーザー冷却とボーズ凝縮』(2002・岩波書店) ▽勝本信吾責任編集、パリティ編集委員会編『レーザー冷却がひらく原子波の世界』(2003・丸善)』

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デジタル大辞泉の解説

レーザー‐れいきゃく【レーザー冷却】

laser coolingレーザー光を用いて、気体原子またはイオンの温度を絶対零度に極めて近い温度に冷却する手法。光のドップラー効果を利用して、原子またはイオンの運動量を低く抑えることにより、ルビジウムナトリウムリチウムなどで、数ミリケルビンから数マイクロケルビンまでの冷却が実現している。レーザークーリング

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

レーザー冷却
レーザーれいきゃく
laser cooling

レーザーの光の圧力によって原子イオンなどの粒子の熱運動を減速する冷却法気体になった粒子に,その吸収スペクトルよりやや長い波長のレーザーを左から照射すると,ドップラー効果のため逆方向(左方向)に動いている粒子がそれを吸収して減速する。同時に同じ波長のレーザーを右からもあてれば,右方向に動いている粒子も減速できる。このような方法を特にドップラー冷却といい,絶対温度で数百μK(マイクロケルビン。1μK=100万分の1K)まで冷却できる。さらに低温にできるレーザー冷却として偏光勾配冷却などの技術が開発されており,粒子によっては数μKにまで冷却できる。レーザー冷却技術を開発した物理学者ハンス・G.デーメルト,ウォルフガング・パウルは 1989年のノーベル物理学賞を受賞した。またレーザー冷却によって原子を捕捉し,原子時計の精度を高めるなど精密測定技術を開発したスティーブン・チュー,クロード・コーエンタヌジ,ウィリアム・D.フィリップスは 1997年のノーベル物理学賞を受賞した。

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