三楽(読み)サンラク

デジタル大辞泉 「三楽」の意味・読み・例文・類語

さん‐らく【三楽】

《「孟子」尽心上から》君子三つの楽しみ。一家の者が無事であること、天にも人にも恥じるところのないこと、天下英才を教育すること。
《「列子天瑞から》人生の三つの楽しみ。人間として生まれたこと、男子として生まれたこと、長生きしていること。

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精選版 日本国語大辞典 「三楽」の意味・読み・例文・類語

さん‐らく【三楽】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 人生での代表的な三つの楽しみ。
    1. (イ) ( 「孟子‐尽心上」の「君子有三楽、而王天下与存焉、父母倶存、兄弟故、一楽也。仰不於天、俯不於人、二楽也。得天下英才而教育之、三楽也」から ) 君子のもつ三つの楽しみ。一家の無事息災と、心にやましい所のないことと、英才の教育をすることの三つ。
    2. (ロ) ( 「列子‐天瑞」の「天生万物、唯人為貴、而吾得人、是一楽也、男女之別、男尊女卑、故以男為貴、吾既得男矣、是二楽也、人生有日月、不襁褓、吾既已行年九十矣、是三楽也」から ) 此の世に生まれて得た三つの楽しみ。人間として生まれ、しかも男子として生まれ、長生きしていることの三つ。
      1. [初出の実例]「三楽之叟。比此有愧。四皓之老。対此非儔」(出典:三教指帰(797頃)下)
      2. 「三楽(ラク)をうたひしは長命の人」(出典:俳諧・類船集(1676)以)
    3. (ハ) 曾子の説く三つの楽しみ。親を畏(かしこ)み、主に仕え、子に伝えることができること、親を諫め、君主のもとを去り、子を叱ることができること、君主をさとし友を助けることができることの三つ。〔韓詩外伝‐九〕
  3. 仏語
    1. (イ) 天楽・禅楽・涅槃(ねはんらく)の三つ。十善を守り、天上に生まれて受ける楽しみと、修行をつみ禅定(ぜんじょう)に入って受ける楽しみと、煩悩を離れて涅槃のさとりを得る楽しみ。
    2. (ロ) 外楽・内楽・法楽楽(ほうがくらく)の三つ。五官により生ずる前五識の楽しみと、初禅ないし第三禅における意識による楽しみと、無漏智慧から生ずるさとりの楽しみを愛すること。
  4. さんごう(三楽)

さん‐ごう‥ガウ【三楽】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ガウ」は「楽」の去声効韻の音で、好む、願うの意。「論語‐季氏」に「孔子曰益者三楽、損者三楽、楽礼楽、楽人之善、楽賢友、益矣、楽驕楽、楽佚遊、楽宴楽、損矣」と見える語のよみくせによることば ) 三つの願い望むもの。人はその好むところによって、三つの益と損とがあるということ。
    1. [初出の実例]「予遇賢主、遇賢師、遇賢友、一日有三遇、一生為三楽」(出典:本朝文粋(1060頃)一二・池亭記〈慶滋保胤〉)

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普及版 字通 「三楽」の読み・字形・画数・意味

【三楽】さんらく

三つの楽しみ。〔孟子、尽心上〕君子に三樂り。而して天下に王たるは與(あづ)かり存せず。(とも)に存し、兄弟に故(こと)無きは、一の樂しみなり。仰ぎて天に愧(は)ぢず、俯して地に(は)ぢざるは、二の樂しみなり。天下の才を得て之れをするは、三の樂しみなり。

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