出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
奈良市法蓮町にある真言律宗の寺。山号は金竜山。現伽藍地は旧平城右京一条四坊の一・二坪に相当する。寺伝によれば,正式には不退転法輪寺と称し,847年(承和14)在原業平が,平城天皇の〈萱の御所〉跡に創建したという。《三代実録》貞観2年(860)10月の条に,平城旧京の水田55町余を不退・超昇両寺に施入したとあるのが初見である。超昇寺は平城天皇の皇子高丘(岳)親王(真如)が天皇の菩提を追修して建立した寺で,不退寺は高丘親王の弟阿保親王,その子業平に伝領された仮御所を寺としたもので,ともに平城上皇の菩提を祈る寺といえる。隣接地より当寺と同型の平安初期の古瓦が出土しており,また水田施入は両寺の維持経営のためと推定されるから,その創建はこれ以前とみられる。12世紀後半には十五大寺の一つに数えられたが,その後の沿革はつまびらかでない。西大寺叡尊による戒律復興とともに,1298年(永仁6)には西大寺末となり,1317年(文保1)に南門,同じころに多宝塔(いずれも重要文化財)が建立された。1464年(寛正5)に炎上し,現本堂(重要文化財)はその後の再建。本尊聖観音立像,五大明王像(いずれも藤原時代)は重要文化財に指定されている。
執筆者:堀池 春峰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
奈良市法蓮(ほうれん)町にある真言(しんごん)律宗の寺。正しくは不退転法輪寺(ふたいてんぽうりんじ)、通称業平寺(なりひらでら)という。山号は金竜(きんりゅう)山。本尊は聖観音菩薩(しょうかんのんぼさつ)。寺伝によれば、この地はもと平城(へいぜい)天皇の萱(かや)の御所(ごしょ)で、その孫にあたる在原業平(ありわらのなりひら)が仁明(にんみょう)天皇の命により自作の聖観音像を安置して、847年(承和14)に寺を開創したといわれている。860年(貞観2)に清和(せいわ)天皇が水田を施入して保護している。その後の沿革は不明だが、境内には室町初期建立の本堂、正和(しょうわ)6年(1317)建立墨書銘をもつ南門(切妻造の四脚門)、同じころ建立と推定される多宝塔など国重要文化財がある。木造聖観音立像、同五大明王像(ともに国重文)などの寺宝がある。
[水谷 類]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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