和三盆糖を用いた打菓子の一種。名古屋市の老舗(しにせ)両口屋是清(りょうぐちやこれきよ)の銘菓で、菓名は能の「二人静(ふたりしずか)」からつけられた。菜摘川(なつみがわ)(吉野川の別名)のほとりに若菜摘みに出た勝手(かって)神社の女人が「春立つといふばかりにやみ吉野の、山も霞(かす)みて白雪の、消えし跡こそ道となれ」と歌うところへ、里の女に身を変えた静御前(ごぜん)が現れ、やがて影の形に添うごとく「しづやしづ、しづのをだまきくり返し」と優雅な舞をみせる。その2人の静御前に見立てた菓子は、和三盆を紅白に丸く打ち分け、その二つをあわせて球型につくる。薄い和紙にくるみ、指頭大にひねってあるが、紙を開いたとき、手のひらに転がる姿が愛くるしい。
[沢 史生]
能の曲目。三番目物。古い作品とされるが、作者不明。観世(かんぜ)、金春(こんぱる)、金剛、喜多の四流現行曲。吉野山の神職(ワキ)は、女(ツレ)に正月の神事に供える若菜を摘みにやらせる。そこへ1人の女(前シテ)が呼びかけ、写経の供養を依頼して消える。驚いて報告する菜摘み女に静の霊がのりうつり、蔵から昔の舞の装束を出させて着る。そのとき「菜摘みの女と思ふなよ」と呼びかけつつ、同装の静自身の亡霊(後シテ)が現れて2人で舞う。義経(よしつね)の吉野落ちの苦難、頼朝(よりとも)の前で舞をまったつらさを語り、義経への尽きぬ慕情を訴え、回向(えこう)を願って霊は離れていく。能面で視野のほとんどを失っている役者が、影に形の添うごとく一糸乱れずそろって舞うところにねらいがあり、技術的にむずかしい能である。
[増田正造]
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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