伊藤清(読み)イトウキヨシ

デジタル大辞泉 「伊藤清」の意味・読み・例文・類語

いとう‐きよし【伊藤清】

[1915~2008]数学者三重の生まれ。京大・学習院大教授京大数理解析研究所所長を務めた。確率過程研究予測が難しい微粒子の動きを表す「伊藤の公式」とよばれる確率微分方程式は、金融工学にも応用された。平成18年(2006)の第1回ガウス賞受賞。平成20年(2008)文化勲章受章

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「伊藤清」の意味・わかりやすい解説

伊藤清
いとうきよし

[生]1915.9.7. 三重,北勢
[没]2008.11.10. 京都
数学者。確率微分方程式を創始し,確率解析の基礎を築いた。1938年東京帝国大学理学部数学科を卒業,大蔵省内閣統計局を経て 1943年名古屋帝国大学助教授となる。1953~79年京都大学教授,1979年同大学名誉教授。この間,アメリカ合衆国のプリンストン高等研究所研究員,スタンフォード大学コーネル大学デンマークオーフス大学の教授を併任,1976~79年京都大学数理解析研究所長を務めた。その後,学習院大学教授。内閣統計局勤務時代の 1942年,数学誌に論文マルコフ過程を定める微分方程式」を発表し,「確率積分」の概念を定式化した。第2次世界大戦後,この論文を整備し英訳した論文を発表,その基本となる確率微分方程式は世界的に「伊藤の公式」と呼ばれるようになった。この理論は,数学界だけでなく経済学工学,物理学,生物学などに大きな影響を与えた。特に経済学では,1970年代にフィッシャーブラック,マイロン・S.ショールズ,ロバート・C.マートンらが開発したデリバティブ理論で,伊藤の確率解析の方法を積極的に取り込み,数理ファイナンスという分野が確立された。1978年日本学士院賞・恩賜賞,1987年勲二等瑞宝章,1998年京都賞,2006年ガウス賞,2008年文化勲章を受けた。著書に『確率論の基礎』(1949),『確率論』(1991)など。(→確率論数学の応用

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百科事典マイペディア 「伊藤清」の意味・わかりやすい解説

伊藤清【いとうきよし】

数学者。三重県出身。東京帝国大学(現,東京大学)理学部数学科卒業。京都大学教授,数理解析研究所所長,学習院大学教授などを務め,京都大学名誉教授。主著に《確率論の基礎》《確率論》などがある。1942年に偶然性を伴う現象を数学的に表す確率微分方程式,いわゆる〈伊藤の補題(Ito's Lemma)〉を発表,この公式は生物学・金融工学など多分野で使用されている。1978年に《確率微分方程式の研究》で恩賜(おんし)賞・日本学士院賞を受賞。2003年に文化功労者となる。2006年に第1回ガウス賞を受賞し,2008年には文化勲章を受章。→日本学士院賞ガウス

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「伊藤清」の解説

伊藤清 いとう-きよし

1915-2008 昭和時代の数学者。
大正4年9月7日生まれ。昭和27年京大教授となり,51年同大数理解析研究所長。のち学習院大教授。確率過程を研究し,伊藤公式とよばれる確率微分方程式の基本公式を創始した。確率微分方程式の研究で,53年学士院恩賜賞。平成15年文化功労者。18年第1回ガウス賞。20年文化勲章。平成20年11月10日死去。93歳。三重県出身。東京帝大卒。

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367日誕生日大事典 「伊藤清」の解説

伊藤 清 (いとう きよし)

生年月日:1915年9月7日
昭和時代;平成時代の数学者

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の伊藤清の言及

【確率微分方程式】より

…ランダムな外力を伴う運動方程式。ブラウン運動を変換して,マルコフ過程を構成する問題から研究が始まり,伊藤清により確率論の一分野として確立された。雑音に汚染された自然現象の記述などに広く用いられる。…

※「伊藤清」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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