伊豆(市)(読み)いず

日本大百科全書(ニッポニカ) 「伊豆(市)」の意味・わかりやすい解説

伊豆(市)
いず

静岡県南東部、伊豆半島の中央部にある市。2004年(平成16)田方(たがた)郡の修善寺(しゅぜんじ)、土肥(とい)、天城湯ヶ島(あまぎゆがしま)、中伊豆(なかいず)の4町が合併、市制施行して成立。西は駿河(するが)湾に臨み、東は伊東市、北西は沼津市、北は伊豆の国市と接する。南東部に天城山や遠笠(とおがさ)山、南に天城峠があり、全面積の80%以上は山林である。中央部を狩野(かの)川が流れ、その支流が発達している。伊豆箱根鉄道、国道136号、414号、西伊豆スカイライン、修善寺道路、伊豆スカイライン、中伊豆バイパスが通じる。また、土肥港からは静岡(清水)港にカーフェリーが就航している。

 おもな産業は、農業、観光であるが、豊かな山林を活かした林業や、海に面する地域ではアジ、サバ、アワビ、サザエやテングサなどの沿岸漁業を行う。農業では、稲作のほか野菜・果樹・花卉(かき)栽培や酪農も盛んで、ワサビシイタケが特産物として有名。江戸時代初期、大久保長安(おおくぼながやす)が金山奉行(きんざんぶぎょう)になってから興隆した土肥金山をはじめ、かつては各地に金山があり伊豆金山として栄えた。閉山後の金山跡地を利用した観光施設「土肥金山」がつくられている。

 豊富な観光資源に恵まれ、避暑湯治(とうじ)、海水浴、磯釣りなどに多くの人が訪れ、観光開発も進んでいる。温泉が各所にわき、桂川渓谷に沿う大温泉地で空海(くうかい)が発見したとされる独鈷(とっこ)の湯を含む修善寺温泉、駿河湾に面する土肥温泉、天城温泉郷を形成する湯ヶ島、吉奈(よしな)、嵯峨沢(さがさわ)、船原(ふなばら)、月ヶ瀬(つきがせ)など有名な温泉が点在する。古代以来の古刹(こさつ)修禅寺などの史跡、浄蓮(じょうれん)ノ滝、八丁(はっちょう)池、天城峠、船原峠、仁科(にしな)峠などの景勝地が多く、歴史や文学作品の舞台になってきた。夏目漱石(なつめそうせき)の『修善寺日記』、岡本綺堂(おかもときどう)の『修禅寺物語』、川端康成(かわばたやすなり)の『伊豆の踊子』、井上靖(いのうえやすし)の『猟銃』などの作品が有名。市域の一部は富士箱根伊豆国立公園に含まれる。国指定の史跡として、縄文中・後期の祭祀遺構を中心とする上白岩遺跡(かみしらいわいせき)がある。環状列石遺構や配石遺構が検出された。2001年天城山隧道(ずいどう)が道路トンネルとしては初の国指定重要文化財となった。修善寺虹の郷、早霧(さぎり)湖、日本サイクルスポーツセンター、土肥海水浴場、天城高原、1600ヘクタールに及ぶ自然休養林「昭和の森」などがある。修善寺紙、修善寺彫りが名産品。面積363.97平方キロメートル、人口2万8190(2020)。

[編集部]


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