日本大百科全書(ニッポニカ) 「天城湯ヶ島」の意味・わかりやすい解説
天城湯ヶ島
あまぎゆがしま
静岡県東部、田方郡(たがたぐん)にあった旧町名(天城湯ヶ島町(ちょう))。現在は伊豆(いず)市の南部を占める一地区。1960年(昭和35)上狩野(かみかの)、中狩野の2村が合併して町制施行。2004年(平成16)修善寺(しゅぜんじ)、土肥(とい)、中伊豆(なかいず)の3町と合併、市制施行して伊豆市となる。旧天城湯ヶ島町は、伊豆半島の中央部、天城山北西麓(ろく)にあり、国道136号、414号、西伊豆スカイライン、西伊豆バイパスが通じる。全面積の90%が山林、うち国有林46%、公有林10%、私有林44%。狩野川、船原川、猫越(ねっこ)川などの本・支流の渓谷に囲まれた山峡で、平坦(へいたん)地は少ない。ワサビ、シイタケは特産物で有名。果樹栽培、酪農も盛んである。伊豆金山の伝統をもつ持越鉱山(もちこしこうざん)はかつては年産330キログラム、全国第2位の採掘があったが、伊豆大島近海地震(1978)で生産を中止している。温泉が各所にわき、湯ヶ島、吉奈(よしな)、嵯峨沢(さがさわ)、船原、月ヶ瀬など天城温泉郷を形成している。浄蓮(じょうれん)ノ滝、八丁(はっちょう)池、船原峠、仁科(にしな)峠、天城峠など景勝地に恵まれ、文学作品の舞台となった。川端康成(やすなり)の『伊豆の踊子』、井上靖(やすし)の『猟銃』で有名であるが、梶井基次郎(かじいもとじろう)、若山牧水(ぼくすい)、尾崎士郎らも湯ヶ島を文学作品に登場させている。
[川崎文昭]