日本大百科全書(ニッポニカ) 「佐治」の意味・わかりやすい解説
佐治
さじ
鳥取県南東部、八頭郡(やずぐん)にあった旧村名(佐治村(そん))。現在は鳥取市の南西部を占める地域。2004年(平成16)国府(こくふ)町、河原(かわはら)町、用瀬(もちがせ)町、気高(けたか)町、鹿野(しかの)町、青谷(あおや)町、福部(ふくべ)村とともに鳥取市に編入。旧村域は、南西部を岡山県と接し、古生層山地と東西17キロメートルに及ぶ狭長な谷からなる。ほぼ中央を東流する佐治川は水石・庭石用で有名な佐治川石の産地。佐治川沿いに国道482号が通じる。県下有数のナシ生産地として知られ、二十世紀ナシや豊水をはじめいろいろな品種の栽培が盛ん。岡山県境に近い佐治川の原流、谷奥の辰巳峠(たつみとうげ)付近には堆積(たいせき)型ウラン鉱床、景勝地山王(さんのう)滝や猿渡(さるわたり)渓谷がある。県指定の天然記念物や文化財に田岡神社のツバキ樹林、細尾(ほそお)の獅子(しし)舞、余戸(よど)の雨乞(あまごい)踊、因州(いんしゅう)佐治みつまた紙などがある。盛時には550戸を数えた和紙製造は、近年では約30の事業所で画仙紙を中心とした因州和紙(因州紙)の生産が行われている。製紙用具などが特色の佐治民俗資料館がある。
[岩永 實]