中世から近世にかけて月のうち6回開かれた定期市。六斎とは仏教上の用語で月6日の戒を持して身をつつしむべき日のことで,六斎市も当初はこの六斎日にちなんで開かれたので,このように呼ばれたものであろう。しかし南北朝時代以降になると,それとは関係なく,もっぱら各地の経済的必要にもとづいて特定の日に開かれるようになった。市開催日も1と6,2と7,3と8,4と9,5と10といった組合せで,旬日に2日,月に6日開かれた。南北朝時代の常陸国府六斎市は文献上もっとも早い例といえるが,室町時代,商品経済の発展とともに各地に六斎市が成立した。15世紀後半の応仁・文明年間の美濃国大矢田市,山城国宇治郷市などは月6度開催の市として著名である。戦国時代,戦国大名は貢納物(年貢,段銭,棟別銭など)の貨幣納,収取した年貢物の放出・換貨,諸物資の購入・調達などのため,城下町,新宿,新町の建設と市の振興につとめたが,その市の多くは六斎市であった。1547年(天文16)播磨国刀田寺市,16世紀後半,永禄・天正年間の後北条氏領内武蔵国の関戸郷,世田谷新宿,高萩宿,白子郷,井草宿,武田氏領内甲斐国の青柳新宿,駿河国の富士大宮,上杉氏領越後国の横越村新町,前田氏領内越中国の篠河村,豊臣秀吉支配下の美濃国正徳寺,池田氏支配下の美濃国円乗寺などは,文献上有名な六斎市である。これらの多くは自由営業をたてまえとする楽市(楽市・楽座)として諸大名の保護を受けていた。江戸時代,商品経済の発展の著しい畿内地方では,六斎市の多くは在町として町場化し,六斎市の名は消滅した。東北や関東では依然六斎市が地域経済の中心としての機能を保ちつづけた。尾張の綿作地帯や越後などでは,江戸時代中期になっても六斎市が存続していた。
→市
執筆者:佐々木 銀弥
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中世・近世において月のうち6回開かれた定期市。六斎市の呼称は当初仏教関係行事と関連して市が開かれたことに由来するものと考えられるが、のちには交換経済の発達、戦国大名の市振興政策などに基づいて開かれるようになった。市開催日は、1と6、2と7、3と8といった組合せで、月に6回開かれた。史料上では南北朝初期と推定される常陸(ひたち)国国府(こくふ)(茨城県石岡市)六斎市、室町時代の応仁(おうにん)・文明(ぶんめい)年間(1467~87)の美濃(みの)国大屋田(おおやだ)(岐阜県美濃市)の紙市(かみいち)、山城(やましろ)国宇治郷(うじごう)(京都府宇治市)市が早い例で、戦国時代には諸大名の城下町や新宿(しんじゅく)の建設、市町(いちまち)振興などの目的で、多くの六斎市が開かれ、保護された。江戸時代には畿内(きない)・西国地方では地方城下町や在郷(ざいごう)町に交換機能を奪われて衰退したが、東国地方では農村商業の中心として存続したものもみられる。
[佐々木銀弥]
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中世~近世に都市・農村で特定の日に月6度開かれた定期市。一般に応仁・文明の乱後各地に発生したとみられ,15世紀後半には美濃国大矢田市などが六斎市となっていた。戦国大名は新宿・新町設置の際,六斎市を開く例が多かった。開催日を異にするいくつかの六斎市が結びつき,一定の市場網を形成する場合もあり,秩父盆地では秩父大宮(1・6日)を親市とし,贄川(にえかわ)(2・7日)・吉田(3・8日)・大野原(4・9日)・上小鹿野(かみおがの)(5・10日)の順で開催するシステムがとられていた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
… しかも鎌倉期の市場は,《一遍聖絵》において,市日のにぎやかな備前国福岡市と,その他の日の荒涼とした信濃国伴野市が描きわけられているように明暗がはっきりわかれていたが,この時期には,〈常住〉といわれるような定住店舗化したものも多く,それが市と併存している。市の開催日も六斎市と言われるような5日ごとの市が多くなる。美濃大矢田市や宇治の六斎市が著名である。…
…中世の後期,市の数がふえてくると,各地域では中心的な市である親市の開催日を基準にして,他の市の開催日が決定されるようになった。また地方の中心的な市のなかには2・4・12・14・22・24といった月に6日も開かれるいわゆる六斎市(ろくさいいち)も出現した。奈良や山口のような都市でも,市は特定の日に開かれていた。…
※「六斎市」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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