口永良部島(読み)くちのえらぶじま

精選版 日本国語大辞典 「口永良部島」の意味・読み・例文・類語

くちのえらぶ‐じま【口永良部島】

鹿児島県大隅諸島にある火山島。古くからサトウキビを栽培する。

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デジタル大辞泉 「口永良部島」の意味・読み・例文・類語

くちのえらぶ‐じま【口永良部島】

鹿児島県、大隅おおすみ諸島の一島。屋久島の北西にある火山島で、標高600メートルの新岳は活火山。面積38平方キロメートル。屋久島国立公園に属する。

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日本歴史地名大系 「口永良部島」の解説

口永良部島
くちえらぶじま

[現在地名]上屋久町口永良部

大隅諸島の一島で、永田ながたの沖合に浮ぶ。島名は琉球列島沖永良部おきのえらぶに対する呼称といわれ、口之永良部などとも書き、「くちのえらぶ」ともいった。また単に恵良部・永良部などと記した史料もみえる。屋久島と最も近い距離は西北西方向に六キロ、長軸は西北西―東南東の走向をもち約一二キロ、最大幅は約五キロで、西側に近い中央部では南北から大きな湾入があり瓢箪のようにくびれている。ここでは幅は一キロほどである。面積は三八・〇四平方キロ、最高点はふる岳で六五七メートル。すぐ近くにしん岳とよばれる標高六〇〇メートルのピークもあり、これらはいずれも東部の最大幅をもつ所に位置する。活火山島であり、現在も活動を続けているが、その基盤が出来上ったのは新生代の第四紀になってからのことで、更新世の頃、島の北側を占める輝石安山岩の噴出が最初に起こり、続く完新世になってからも南側に接して輝石安山岩の噴出が起こった。この活動により島の南東部は幅を二倍近くに広げた。最高所となっている古岳の形成期や、その後新たに噴火をした新岳の形成期も同時代である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「口永良部島」の意味・わかりやすい解説

口永良部島
くちのえらぶじま

「くちえらぶじま」ともいう。鹿児島県大隅(おおすみ)諸島にある霧島(きりしま)火山帯の活火山島。熊毛(くまげ)郡屋久島(やくしま)町に属する。長径(西北西―東南東)約12キロメートル、最大幅約5キロメートルで、面積35.77平方キロメートル。西部は古い火山であり、中央部から東部にかけては安山岩質の活火山体で最高峰の古(ふる)岳(657メートル)や、その北の新岳(600メートル)を含む。島の周囲には海食崖(がい)が発達。島の西部にある中心集落の本村(ほんむら)には、屋久島から定期船が寄港する。屋久島国立公園の域内で、東部の湯向(ゆむぎ)、寝待(ねまち)に温泉がある。人口流出が激しく、1955年(昭和30)1855人が、1985年には272人となり、2005年(平成17)147人。2022年(令和4)3月末日時点の住民登録人口は104人。

[諏訪 彰・中田節也 2022年5月20日]

火山活動

新岳は、古岳の北西に開いた崩壊地形内に成長した火山である。最近1万年の噴火は古岳・新岳を中心に発生している。古岳では数百年前に火砕流噴火が発生した。噴火記録は新岳の1841年(天保12)の噴火以降存在しており、1931年(昭和6)~1935年と1966年~1980年にかけて活発に噴火した。1933年の噴火では火口から1.7キロメートル東の七釜(ななかま)集落に火山礫(れき)が降下し、13戸が全焼し8名が死亡した。また、この噴火の約1年後、大規模な土石流が発生し死者5名の被害者を出した。1945年に水蒸気噴火、1966年に開始した噴火は1970年代まで断続的に続いた。1980年には水蒸気噴火が発生した。

 1999年(平成11)夏ごろから新岳の地震活動が活発化、2001年からは地殻変動が観測され、2005年ごろからは火口付近の温度が上昇、2008年からは火口から放出される二酸化硫黄量の増加がみられ、新岳火口の直下にマグマが貫入したと考えられた。その後、2014年8月3日には、山頂部の隆起が傾斜計で認められ、その1時間半後に水蒸気噴火が発生した。この噴火によって低温の火砕サージが火口から約2キロメートル西に流れ下り、同日、噴火警戒レベルは3(入山規制)に引き上げられた。この後も活発な噴煙活動が続き、2014年末から二酸化硫黄量がそれまで以上に増加し、2015年1月24日と5月23日に有感地震がおこった。同年5月29日には、2014年より規模の大きいマグマ水蒸気噴火が発生。この噴火の数日前から山頂部の地震回数の増加と二酸化硫黄の放出量の低下が認められていた。この噴火に伴って発生した火砕流は火口から全方向に流れ出し、北西方向では居住区である向江浜(むかえはま)海岸まで達した。この噴火直後に噴火警戒レベルが5(避難)に引き上げられ全島避難となった。その後は同年6月19日にごく小規模な噴火があったものの、以降噴火は発生しておらず、二酸化硫黄の放出量が大幅に減少し火山性微動も観測されていないことから、2016年6月14日、火山噴火予知連絡会は「爆発的な噴火の可能性は低下している」との見解を出し、噴火警戒レベルは3(入山規制)に引き下げられた。2018年4月には噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き下げられたが、同年8月15日火山性地震や二酸化硫黄の放出量が増加し、今後、火砕流を伴う噴火が発生する可能性があるため、噴火警戒レベルが4(避難準備)に引き上げられた。

[中田節也 2018年8月21日]

その後の動き

2018年8月29日、居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生する可能性が低くなったため、噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き下げられた。さらに2019年2月以降、新岳火口では噴火は観測されておらず、新岳火口付近のごく浅い場所を震源とする火山性地震が減少し、新岳の西側山麓のやや深い場所を震源とする火山性地震が2018年8月16日以降観測されていないことから、2019年6月、噴火警戒レベルは2(火口周辺規制)に引き下げられた。その後、火山活動の高まり、火山性地震の発生、断続的な噴火の発生により噴火警戒レベルが3となることもあったが、現在は火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性はあるものの火山活動は低下しており、2022年4月時点での噴火警戒レベルは2(火口周辺規制)となっている。

[編集部 2020年5月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「口永良部島」の意味・わかりやすい解説

口永良部島
くちのえらぶじま

鹿児島県南部,大隅諸島屋久島の北西約 12kmにある火山島。活火山で,常時観測火山屋久島町に属する。霧島火山帯に属し,西に番屋ヶ峰(291m),東に最高点の古岳(657m)と新岳(626m)があり,中部でくびれた形をしている。新岳は天保12(1841)年および 1933~34年の噴火で死者を出しており,1966年の大噴火以後もたびたび噴火を繰り返した。近年では 2014年に 34年ぶりとなる噴火を記録,2015年5月には気象庁が噴火警戒レベルを 5に引き上げる爆発的噴火が発生し(→噴火警報),全島民に島外への避難指示が発令された(同年 12月,一部地域を除き避難指示解除)。東部の湯向(ゆむぎ),寝待(ねまち)には温泉も湧出。原野は広いが傾斜地が多く,火山灰に覆われていて,サトウキビ,サツマイモと薬草ガジュツが栽培される。国指定天然記念物のエラブオオコウモリが生息。人口の島外流出が多く,1960年の約 1500から 40年間に 10分の1近くにまで減少。中心地区は西部の本村(ほんむら)で,種子島,屋久島との間に船の便がある。面積 35.77km2。人口 152(2010)。

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改訂新版 世界大百科事典 「口永良部島」の意味・わかりやすい解説

口永良部島 (くちのえらぶじま)

〈くちえらぶじま〉とも呼ぶ。鹿児島県熊毛郡屋久島町に属し,屋久島の北西方12kmにある火山島。面積37km2。北西から南東に長く,西に番屋ヶ峰(291m),東に古岳(649m),新岳(626m)の2群の山地がある。新岳は1933年爆発し,硫黄採掘部落を全滅させた。その後も,1966年,68年,73年などに爆発を繰り返し,土石流災害や農作物災害を起こしている。このため1960年ころ2200人もいた人口が95年にはわずか167人に減少している。かつてはサツマイモ,サトウキビなどがつくられていたが,現在はほとんどみられず,わずかに製薬会社との契約によるガジュツ(ショウガ科ウコン属。漢方薬原料)が栽培され,他に若干の牛の飼育が行われているにすぎない。しかし最近釣客,観光客が増加し,この方面での発展が期待される。屋久島北東岸の宮之浦との間に町営船が運航されているが,冬季には欠航が多い。中心集落は本村(ほんむら)で,古くから避難港として用いられ,役場の出張所,診療所,小・中学校などがある。
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百科事典マイペディア 「口永良部島」の意味・わかりやすい解説

口永良部島【くちのえらぶじま】

鹿児島県の大隅諸島中の活火山島。〈くちえらぶじま〉とも。屋久島北西方にあり,熊毛郡屋久島町に属する。面積35.81km2。最高点は古岳(657m)。江戸時代は屋久島の内で,琉球諸島からの船の停泊地であり,また馬の放牧も行われた。新岳(600m)は1841年(天保12年)以降,十数回の噴火が記録されており,2015年にも全島避難を生じさせる爆発的噴火を観測。サツマイモ,サトウキビを産する。中心は南岸の本村で,屋久島から船便がある。寝待,湯向の2温泉がある。
→関連項目大隅諸島上屋久[町]屋久島

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知恵蔵mini 「口永良部島」の解説

口永良部島

鹿児島県・大隅諸島西部の火山島。鹿児島県の南方約70キロメートル、屋久島の西方約12キロメートルに位置する。面積3804ヘクタール、標高657メートル(古岳)、人口137人(2014年10月現在)。長径12キロメートル・最大幅5キロメートルで、ひょうたんのような形をしている。島の中央部から東部には新岳・古岳・野池山などの活火山が連なり、気象庁により常時観測火山に指定されている。4カ所の温泉や漁場、豊富な自然により観光名所として知られる。14年8月3日、新岳が34年ぶりに噴火し、約70名が屋久島に自主避難した。15年5月29日午前9時59分には、新岳が爆発的に噴火して噴煙が9000メートル以上にまで上り火砕流が発生。警戒レベルが最高の5に指定され、全島民と観光客など約140名が屋久島に避難した。火山噴火予知連絡会は、今回の噴火が「マグマ水蒸気噴火」だったとする見解をまとめた。

(2015-6-2)

口永良部島

鹿児島県屋久島町にある屋久島の西方約12キロメートルに位置する島。長径12キロメートル、最大幅5キロメートルのひょうたん形の島で、屋久島や種子島などと共に大隅諸島の一部を成している。同島は古い火山体である西部の番屋ヶ峰と現在まで活動を続けている島の中央部から東部を構成する新岳・古岳・野池山などの火山体からなる。2014年8月3日12時24分、34年ぶりに新岳が爆発し、噴煙が火口から800メートル以上の高さまで上がったほか、7合目から8合目付近に大きな噴石が飛び、周囲では火山灰が降った。これを受け、気象台は噴火警戒レベルをレベル3の「入山規制」に引き上げた。屋久島町は火口から半径2キロ圏内を立ち入り禁止とし、同島の住人の半数が屋久島に自主的に避難した。新岳の警戒レベルが3となったのは08年10月から09年3月の間以来。

(2014-8-6)

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世界大百科事典(旧版)内の口永良部島の言及

【口永良部島】より

…〈くちえらぶじま〉とも呼ぶ。鹿児島県熊毛郡上屋久町に属し,屋久島の北西方12kmにある火山島。面積37km2。北西から南東に長く,西に番屋ヶ峰(291m),東に古岳(649m),新岳(600m)の2群の山地がある。新岳は1933年爆発し,硫黄採掘部落を全滅させた。その後も,1966年,68年,73年などに爆発を繰り返し,土石流災害や農作物災害を起こしている。このため1960年ころ2200人もいた人口が95年にはわずか167人に減少している。…

※「口永良部島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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