江戸古浄瑠璃の曲節。京都の薩摩外記藤原直政が,明暦(1655-58)のころ江戸に下り,硬派の浄瑠璃を語って〈下り薩摩〉と呼ばれた。2世外記は藤原直勝といったというが,両者の関係は未詳。2世は操り芝居を興行していたが歌舞伎芝居にも出演,市川流の荒事に用いられた。しかし享保初年(1710年代後半)ころ門弟の大薩摩主膳太夫(おおざつましゆぜんだゆう)が代わって歌舞伎芝居へ出演するようになって,外記節はしだいに衰えた。大薩摩節が後年長唄に吸収されたこともあって,外記節の楽風は大薩摩とともに長唄に残ったといわれる。《外記猿》《石橋(しやつきよう)》(《外記節石橋》)《傀儡師(かいらいし)》を長唄における外記節の代表曲とするが,これらは大薩摩節で,わずかに三味線音楽の中に〈外記ガカリ〉(カカリ)としてその片鱗を伝えるにすぎない。なお河東節でも《傀儡師》《泰平住吉踊》を外記節からの預り浄瑠璃としているが,これは完全な河東節になっている。
執筆者:竹内 道敬
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江戸古浄瑠璃(こじょうるり)の一派。薩摩浄雲(さつまじょううん)の門流、薩摩外記直政によって始められ、貞享(じょうきょう)年間(1684~88)に広く愛された。歌舞伎(かぶき)に進出して荒事(あらごと)に多く用いられ、豪放な性格を有するが、50年ほどのうちに廃れてしまった。今日では長唄(ながうた)のなかに外記節三部曲として『石橋(しゃっきょう)』『猿(外記猿(げきざる))』『傀儡師(かいらいし)』があり、演奏会や舞踊の会などでよく演奏されているし、河東(かとう)節にも『泰平住吉(たいへいすみよし)踊』『傀儡師』がある。また、三味線の奏法および旋律の名称として「外記がかり」と楽譜に記されているものもある。
[渡辺尚子]
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…浄雲には《はなや》などあり,その勇壮な硬派の流派(薩摩節)は2世薩摩その他に受け継がれ,明暦(1655‐58)から寛文(1661‐73)ころ以後,それぞれが流派を立てて活躍した。その中で注目されるものに金平(きんぴら)節(金平浄瑠璃),外記節,土佐節がある。金平節は大坂の伊藤出羽掾,井上播磨掾にも影響した。…
※「外記節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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