外記節(読み)ゲキブシ

デジタル大辞泉 「外記節」の意味・読み・例文・類語

げき‐ぶし【外記節】

江戸古浄瑠璃の一。薩摩外記さつまげき貞享(1684~1688)のころ創始。豪放な語り口で、人形浄瑠璃歌舞伎荒事あらごとなどに使われたが、まもなく滅び、今は長唄の数曲にその影響を残す。外記

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精選版 日本国語大辞典 「外記節」の意味・読み・例文・類語

げき‐ぶし【外記節】

  1. 〘 名詞 〙 江戸浄瑠璃一つ薩摩外記藤原直政が貞享(一六八四‐八八)の頃語り出した豪放な浄瑠璃。人形浄瑠璃や歌舞伎の荒事などで行なわれたが、間もなく滅び、現在、河東節と長唄の数曲にその影響が残る。外記。
    1. [初出の実例]「外記ぶしにても土佐ぶしにてもかたる事をきらふ事也」(出典:随筆・独寝(1724頃)上六〇)
    2. 「まんざら茶屋の二階でも、団十郎とばかりでは、外記節(ゲキブシ)でも出憎いから」(出典:歌舞伎・四天王産湯玉川(1818)二番目)

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改訂新版 世界大百科事典 「外記節」の意味・わかりやすい解説

外記節 (げきぶし)

江戸古浄瑠璃の曲節。京都の薩摩外記藤原直政が,明暦(1655-58)のころ江戸に下り,硬派の浄瑠璃を語って〈下り薩摩〉と呼ばれた。2世外記は藤原直勝といったというが,両者の関係は未詳。2世は操り芝居を興行していたが歌舞伎芝居にも出演,市川流の荒事に用いられた。しかし享保初年(1710年代後半)ころ門弟の大薩摩主膳太夫(おおざつましゆぜんだゆう)が代わって歌舞伎芝居へ出演するようになって,外記節はしだいに衰えた。大薩摩節が後年長唄に吸収されたこともあって,外記節の楽風は大薩摩とともに長唄に残ったといわれる。《外記猿》《石橋(しやつきよう)》(《外記節石橋》)《傀儡師(かいらいし)》を長唄における外記節の代表曲とするが,これらは大薩摩節で,わずかに三味線音楽の中に〈外記ガカリ〉(カカリ)としてその片鱗を伝えるにすぎない。なお河東節でも《傀儡師》《泰平住吉踊》を外記節からの預り浄瑠璃としているが,これは完全な河東節になっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「外記節」の意味・わかりやすい解説

外記節
げきぶし

江戸浄瑠璃の一流派名。薩摩浄雲の流れをくむ薩摩外記藤原直政が正保~慶安年間 (1644~51) の頃,京都から江戸に下って硬派の浄瑠璃を語った。これを外記節または下 (くだ) り薩摩という。外記と名のったのは,貞享年間 (84~88) の頃からともいう。この曲節は大薩摩外記藤原直勝に受継がれたが,のち大薩摩主膳太夫と改名し,大薩摩節を創設したため,外記節は大薩摩節に受継がれ,さらに長唄に吸収されてしまった。したがって現在では長唄の曲節に,その名残りをうかがい知ることができる。 10世杵屋六左衛門が外記節の復活を企てて作曲したといわれる『外記節石橋 (しゃっきょう) 』『外記猿』『傀儡師 (かいらいし) 』『翁三番叟』がそれである。また,河東節にも外記節の預り浄瑠璃として,『傀儡師』『泰平住吉踊』がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「外記節」の意味・わかりやすい解説

外記節
げきぶし

江戸古浄瑠璃(こじょうるり)の一派。薩摩浄雲(さつまじょううん)の門流、薩摩外記直政によって始められ、貞享(じょうきょう)年間(1684~88)に広く愛された。歌舞伎(かぶき)に進出して荒事(あらごと)に多く用いられ、豪放な性格を有するが、50年ほどのうちに廃れてしまった。今日では長唄(ながうた)のなかに外記節三部曲として『石橋(しゃっきょう)』『猿(外記猿(げきざる))』『傀儡師(かいらいし)』があり、演奏会や舞踊の会などでよく演奏されているし、河東(かとう)節にも『泰平住吉(たいへいすみよし)踊』『傀儡師』がある。また、三味線の奏法および旋律の名称として「外記がかり」と楽譜に記されているものもある。

[渡辺尚子]

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百科事典マイペディア 「外記節」の意味・わかりやすい解説

外記節【げきぶし】

浄瑠璃の流派名。京都の薩摩外記藤原直政が慶安〜明暦のころ江戸に下って語り始めたもので,歌舞伎へ進出し,出端(では)や荒事(あらごと)などの場面を語った。この流派から生まれた大薩摩(おおざつま)節が後に長唄に吸収されたので,その芸風は《外記猿》などの長唄の曲にうかがわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の外記節の言及

【浄瑠璃】より

…浄雲には《はなや》などあり,その勇壮な硬派の流派(薩摩節)は2世薩摩その他に受け継がれ,明暦(1655‐58)から寛文(1661‐73)ころ以後,それぞれが流派を立てて活躍した。その中で注目されるものに金平(きんぴら)節(金平浄瑠璃),外記節土佐節がある。金平節は大坂の伊藤出羽掾,井上播磨掾にも影響した。…

※「外記節」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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