日本大百科全書(ニッポニカ) 「大沢野」の意味・わかりやすい解説
大沢野
おおさわの
富山県中部上新川郡(かみにいかわぐん)にあった旧町名(大沢野町(まち))。現在は富山市のほぼ中央部を占める地域。旧大沢野町は1939年(昭和14)町制施行。1954年(昭和29)下タ(した)村、船峅(ふなくら)村と合併、大久保町を編入。2005年(平成17)富山市に合併。神通川(じんづうがわ)右岸の河谷と段丘地域を占め、JR高山本線と国道41号が通じる。飛騨街道(ひだかいどう)に沿う谷口集落として発達した。大沢野扇状地周辺(富山藩領)は、一段高い船峅(舟倉)台地(加賀藩領)よりも用水事情で開田が遅れ明治時代を通じて多くは原野と畑地であったが、大沢野用水の開通によって水田化された。笹津(ささづ)から下大久保まで約7キロメートルは一続きの街村形態を示す。富山市街通勤者のベッドタウンとして住宅団地の造成が進み人口が急増している。飛騨往還の舟渡し場であった笹津は神通峡県定公園の入口。町にはシキボウ、日本カーボン、北陸電気工業などの工場がある。町の中央にある猿倉(さるくら)山森林公園は展望がよく、冬はスキー場となっている。麓(ふもと)にある直坂遺跡(すぐさかいせき)は国指定史跡。このほか、京都の嵐山(あらしやま)を模してつくった広大な寺家(じけ)公園や、春日(かすが)温泉がある。なお、中大久保にある大久保発電所(500キロワット)は1899年(明治32)完成した北陸最初の発電所である。
[深井三郎]
『『大沢野町誌』上下(1958・大沢野町)』▽『『大沢野ものがたり』(1968・大沢野町)』▽『『大沢野町誌』現代編(1986・大沢野町)』