栃木県宇都宮市大谷に産する流紋岩質軽石凝灰岩の石材で、日本の代表的な建築用軟石。新第三紀中新世(約2303万~533万年前)の火山噴出物で、いわゆる緑色凝灰岩(グリーンタフ)の一種。もとの造岩鉱物の長石はカオリンや絹雲母(きぬうんも)に、有色鉱物は緑簾石(りょくれんせき)、緑泥石、蛇紋石、チタン石などに変質している。そのため外観は淡い灰緑色ないし淡黄緑色を呈し、中に暗褐色または緑褐色の部分が斑(まだら)状に散在している。この褐色部分は軟らかく、「みそ」とよばれている。大きなみそが多数含まれているものは、石材に不適とされる。より深い地下でとれる青緑色の「青目」、地表近くでとれ、青目より硬く良質で白っぽい「白目」、より細粒の「虎目(とらめ)」などの種類がある。一般に多孔質で、水分を吸収しやすく凍結に弱いが、火熱に強く、1000℃以上でも安定である。ほかの石材に比べて軟らかく、採掘や加工が容易である。露天掘り、坑道掘りで切り石として採石され、土木・建築用に広く利用されている。耐火用として倉庫や石蔵に用いられるほか、土台や石塀にも用いられる。アメリカの建築家F・L・ライトは、旧帝国ホテルの建築に用いた。
[斎藤靖二]
栃木県宇都宮市大谷町付近に産する流紋岩質凝灰岩の石材名。新生代第三紀の火山活動で噴出した火山灰が,海水中に堆積して形成されたもので,緑色から淡緑色,あるいは淡褐色を呈する文字どおりのグリーンタフである。かつては露天掘りでつるはしによって採石され,地表に近い層の〈白目〉と下層の〈青目〉とに分けられていたが,今日では石切場は地下に移り,地下数十mに達する大洞窟を作りながらチェーンソーによって大規模に切り出されている。それに伴い在来の上層を一括して〈荒目〉と呼び,地下深くで採石される粒子の細かい〈細目(さいめ)〉と大別するようになった。
外観は粗く多孔質で,〈荒目〉には,俗に〈ミソ〉と呼ばれる褐色の斑点,あるいはそれが脱落した空隙がある。吸水性は高いが風化に強く,また耐火性に富む。採石,加工も容易であり価格も安いので,古くからかまどや土蔵の材料に使用された。また石垣,門塀,擁壁その他土木建築用として全国に広い販路をもっている。F.L.ライトの設計した旧帝国ホテル本館は,この石材を用いた代表的建築で,これが関東大震災にも健在であったことが,大谷石の声価を高めた。
執筆者:矢橋 謙一郎
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…グリーンタフには,安山岩・石英安山岩・流紋岩の溶岩,凝灰角レキ岩,軽石凝灰岩などが多く,このうち石英安山岩・流紋岩質の軽石凝灰岩が緑色を呈することが多い。栃木県下で石材として採掘されている大谷石はその例である。緑色となるのは,変質によってできた鉱物のなかに,緑泥石,モンモリロナイト,セラドナイトなどに属する緑色の粘土鉱物があるためである。…
※「大谷石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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