明治から昭和前期の政党政治家。元治(げんじ)元年10月23日、肥後国(熊本県)に生まれる。済々黌(せいせいこう)に学び、上京して勉学を続けた。1893年(明治26)佐々友房(さっさともふさ)に従って初めて渡韓、1895年から『漢城新報』を発行するとともに、日清(にっしん)戦争には記者として従軍。1895年閔妃(びんひ)殺害事件に関与して拘引され、翌1896年には佐々らと熊本国権党を結成した。1902年(明治35)熊本県から代議士に選出され、官僚派に属して大同倶楽部(くらぶ)、中央倶楽部の結成に努めた。1913年(大正2)桂太郎(かつらたろう)の立憲同志会創立に参画し、以後憲政会の幹部として活躍。1924年には政友会の岡崎邦輔(おかざきくにすけ)とともに護憲三派の成立に尽力、さらに1925年の普通選挙法の成立に努めた。同年第二次加藤高明内閣に逓相として入閣、1929年(昭和4)浜口雄幸(はまぐちおさち)内閣の内相、1931年若槻礼次郎(わかつきれいじろう)内閣にも留任、副総理格の位置を占めた。しかし政友会の一部と結んで協力内閣運動を推進して軍部に接近、閣内不統一の因をつくり内閣総辞職を招いた。総辞職後脱党して1932年にファッショ的政綱を掲げる国民同盟を結成、平沼騏一郎(ひらぬまきいちろう)擁立を画策して失敗した。選挙の神様といわれ、選挙戦では緻密(ちみつ)な計数と戦略を駆使して辣腕(らつわん)を振るった。
[宇野俊一]
『『安達謙蔵自叙伝』(1960・新樹社)』
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明治〜昭和期の政治家 内相;逓信相;衆院議員。
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政治家。熊本藩士の子。佐々友房の済々黌に学び,日清戦争の最中に渡韓し《朝鮮時報》および《漢城新報》を発刊。1895年閔妃(びんぴ)殺害事件に荷担して下獄し,免訴後,佐々の熊本国権党幹部となり,1902年の第7回総選挙に帝国党から当選,以後連続14回当選。13年桂太郎の立憲同志会創立に参加し,以後憲政会,立憲民政党に属す。この間,国権党時代の選挙指導の経験を生かし大隈重信内閣下の15年総選挙で同志会の大勝に重要な役割を果たすなど,“選挙の神様”と称された。いわゆる官僚派に対する党人派の中心人物として,25年加藤高明内閣の逓相,29年浜口雄幸内閣,31年第2次若槻礼次郎内閣の内相となる。31年満州事変がおこると,挙国一致を唱え協力内閣運動を起こし民政党を脱党し,政党政治崩壊の一因をなした。32年国民同盟を組織するが党勢は振るわず,40年解党して大政翼賛会に参加した。
執筆者:伊藤 之雄
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1864.10.23~1948.8.2
明治~昭和期の政治家。肥後国生れ。済々黌(せいせいこう)卒。ソウルで「漢城新報」を発刊。1895年(明治28)閔妃(びんひ)殺害事件に加わるが不起訴釈放。1902年衆議院議員初当選。憲政会・民政党の党人派の中心となり,巧妙な選挙采配から「選挙の神様」とよばれた。31年(昭和6)満州事変勃発後,挙国一致の協力内閣を提唱して第2次若槻内閣を退陣に追い込み脱党。翌年国民同盟を結成したが,40年解党し,大政翼賛会顧問に就任。
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…安達謙蔵ら立憲民政党の脱党者を中心として1932年結成された政党。安達は1931年の十月事件に刺激され,立憲政友会幹事長久原房之助らと結んで強力な政府を作るべく協力内閣運動をすすめたが失敗し,中野正剛らとともに脱党した。…
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[閔妃虐殺事件]
1895年,日本公使三浦梧楼の指揮により日本軍人・大陸浪人らの手で閔妃が殺害された事件。三国干渉を契機として復活した閔氏政権の排日政策に対抗して勢力挽回を図った三浦は,10月8日早朝,ソウル駐在の日本守備隊および岡本柳之助,安達謙蔵ら日本人壮士のグループに命じて景福宮を襲撃させた。宮殿内に乱入した彼らは閔妃を斬殺して奥庭にひきずり出し,死体を凌辱したうえ石油をかけて焼き払い,これと同時に,大院君をかつぎ出して金弘集を首班とする親日開化派政権を成立させた。…
※「安達謙蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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