木霊(読み)コダマ

デジタル大辞泉 「木霊」の意味・読み・例文・類語

こだま[列車・中継衛星]

東海道山陽新幹線で運行されている特別急行列車の愛称。昭和39年(1964)の東海道新幹線の開業とともに運行を開始。「ひかり」などの乗り継ぎに用いられる緩行列車で、山陽新幹線開業後も途中区間を結ぶのみで東京博多間直通などはない。
宇宙開発事業団(現JAXAジャクサ)が開発したデータ中継衛星の愛称。平成14年(2002)に打ち上げられ、インド洋上空の静止軌道に配置。低軌道中軌道人工衛星、および国際宇宙ステーションISS)の日本の実験棟きぼうとの通信の中継に利用された。最大通信速度は240Mbps以上。平成29年(2017)に運用終了。データ中継技術衛星(DRTS)。

こ‐だま【木霊/×谺/木魂】

[名](スル)《近世初めまでは「こたま」》
樹木に宿る精霊。木の精。
「―がさらうぜ、昼間だって容赦はねえよ」〈鏡花高野聖
1がこたえるものと考えたところから》声や音が山や谷などに反響すること。また、その声や音。山びこ。「銃声が谷間に―する」
歌舞伎下座音楽で、小鼓2丁を下座と上手舞台裏とに分かれ、響き合うように打つもの。深山幽谷などの趣を出す。
[類語](1精霊魑魅魍魎山霊/(2山彦

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精選版 日本国語大辞典 「木霊」の意味・読み・例文・類語

こ‐だま【木霊・木魂・谺】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「こたま」。木の霊の意 )
  2. 樹木にやどる精霊。木精。山の神。
    1. [初出の実例]「造遣唐使船木霊并山神祭」(出典:延喜式(927)三)
    2. 「一旦樹神(コタマ)などいふおそろしき鬼の栖所となりたりしを」(出典:読本・雨月物語(1776)浅茅が宿)
  3. ( ━する ) ( 音声が山に当たって反響するのを山の霊が答えるものと考えたところから ) 声や音が山などに反響してかえってくること。また、そのかえってくる声や音。山びこ。
    1. [初出の実例]「ふすとおくとおもへはこふるなげきにはこたまいでくるものにぞ有ける」(出典:賀茂女集(993‐998頃))
    2. 「Cotama(コタマ)。すなわち、ヤマビコ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  4. 歌舞伎の囃子(はやし)の一つ。小鼓二丁を、一人は下座、一人は上手舞台裏にわかれ、響き合うように打ち合うもの。下手を「シン」、上手を「ウケ」といい、深山幽谷などの雰囲気を出す効果に用いる。
    1. [初出の実例]「浄瑠璃切れると、直ぐに谺(コダマ)、浪の音にて、仙人、立って」(出典:歌舞伎・法懸松成田利剣(1823)四立)

木霊の語誌

( 1 )同類の葉守りの神が善神であるのに対し、は、古く「魅」「魍」の字が当てられ、人間にたたりをなす妖怪変化の類、狐や天狗と同列ないしはそのものと思われていた。
( 2 )も、山に住む妖怪が返事するものと考えたところにその起源をもつ。

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改訂新版 世界大百科事典 「木霊」の意味・わかりやすい解説

木霊 (こだま)

樹木に宿る精霊をいう。《和名抄》では樹神を〈和名古多万〉としている。また《源氏物語》の〈手習〉に〈たとひ,まことに人なりとも,狐・木魂やうのものゝ,欺きて,とりもて来たるにこそ侍らめ〉とあり,木霊は古くから怪異をなす霊とされていた。《徒然草》235段にも〈あるじなき所には……こたまなど云ふ,けしからぬかたちもあらはるるものなり〉とある。また《嬉遊笑覧》などでは天狗のこととされている。今日では,木霊は山などで人の声を反響する山彦のこととされているが,もとは山彦も山の樹木に宿る精霊のなせるわざと考えられていた。今日でも,伊豆の八丈島青ヶ島では枝の茂った大木にはキダマサマとかコダマサマという神が宿るといい,この木を切るとたたりがあるという。山で伐採するときもキダマサマの宿る木を必ず一本残すといい,青ヶ島では棟上式に家の材木からキダマを落とす儀礼が見られ,神社には〈大木玉様〉や〈木玉天狗〉という神がまつられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木霊」の意味・わかりやすい解説

木霊
こだま

樹木に宿る精霊。また転じて山の反響をいう。樹木に精霊の宿ることは、広く諸民族に信じられていた。日本でも同様で、『延喜式(えんぎしき)』には、遣唐使船をつくるための樹木を伐採するとき、木霊ならびに山の神を祭ったという記事がある。『源氏物語』や『徒然草(つれづれぐさ)』では妖怪(ようかい)ふうのもののように記されている。沖縄でキジモノといわれる妖怪も木の精の意で、古木をすみかにした童形の魔物で、これと親しくなると漁運に恵まれ、富み栄えたという話が多い。山の樹木の霊であっても、船材にするため海の漁と関連するのであり、また霊的なものが妖怪化する過程をみることができる。山の反響の谺(こだま)は、音声が山に当たって返ってくるのを、山の霊がこたえるのだと考えたものである。山彦(やまびこ)、山響き、山鳴りなどといい、山の神、山男、天狗(てんぐ)、天邪鬼(あまのじゃく)などが人まねをするともいう。物理現象を怪異現象のように受け止めていたのである。

[井之口章次]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木霊」の意味・わかりやすい解説

木霊
こだま

木の精霊のこと。木々に精霊が宿っていると考える樹木崇拝の一つ。木に傷をつければ痛む,切倒せば死ぬとされ,供物を捧げれば人々に恩恵を与え,また無視すれば災害をもたらすと考えられたことから生じた。古くはギリシア・ローマ時代の神話にもみられ,たとえばホメロスの詩にあるアフロディテへの讃頌は,木霊へのそれであった。日本にも古くからこの信仰があり,人声の反響のことをコダマあるいは「山彦」と呼ぶのも,木の精,あるいは山の精が返事をしていると考えたためである。沖縄のキジムンも木の精の一つ (→きじもの ) 。その他,古いつばきの木が化けてなる火の玉とか,大木の梢からだしぬけに現れる妖怪とか,古いかきの木が化けた大入道などは,いずれも木霊の変形したものにほかならない。

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普及版 字通 「木霊」の読み・字形・画数・意味

【木霊】もくれい

木魅。

字通「木」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の木霊の言及

【魑魅魍魎】より

…また螭蜽とも書く。中国の《左伝》の注に〈魑魅は山川の異気の生む所にして人に害をなすもの〉,また,《国語》の〈木石の怪を夔蜽(きもうりよう)と曰(い)う〉の注に〈蜽は山精,好んで人の声を斅(まな)びて人を迷惑(まどわ)す〉とあるように,こだま,すだまの類をさす。これらは地方的な精霊であるため,中央集権的な神々の体制には服さず,それゆえ,人々が何の準備もなくこうした精霊と遭遇するのは危険であるとされた。…

【山彦】より

…大気中を伝わる音波が固体面によって反射され,音源の方向に戻って来る現象。こだま,エコーともいう。一般には野外で音波が山体,崖,木立,家屋など大規模な地物で反射して来る場合にいい,室内で起こる同種の現象は反響(場合によっては残響)と呼ぶ。…

※「木霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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